294 / 882
番外編1
写真・3
しおりを挟む
翌朝、朝食をとるため階下に降りていくと、玄関ホールがなにやら賑わっていた。
「あ、キューリちゃんきたよお~」
「おせーぞキューリ!」
「リッキーさん、おはようございます」
食堂ではなく玄関ホールに、傭兵団全員とベルトルドとアルカネットが揃っているので、キュッリッキは何事かと目を丸くする。
「みんなこんな早く集まって、どうしたの??」
「ほら、早く早く」
ハーマンに手を引かれてアジトの外に出る。そしていきなり全員屋根の上に飛ばされた。空は雲一つない晴天。風も穏やかだ。
「前列のひとは座ってくださいね、後ろのひとが隠れちゃいますから」
「リッキー、俺と一緒に前に座ろうな」
ベルトルドがキュッリッキの肩を抱き寄せ瓦に座り込む。
「どさくさに紛れてイヤラシイ。あなた、最低ですね」
そう言いながら、アルカネットがキュッリッキを引き寄せた。
「お前こそ、なに独り占めしてるんだ、リッキーは俺のモンだぞ!」
「勝手にモノ扱いしないでください。困った人ですね」
「えーっと…」
「ペルラは俺様が抱きしめて一緒に座る!!」
「触るな鬱陶しい」
「オレ、キューリのそばが良いな、なんて」
「ガエルは大きいですから後ろに立ってください」
「ボク隅っこでいいよ」
「みなさん、こんな狭いところで騒ぐと落ちますよ」
「ガエルのそばだと、ポーズにいまいち貫禄が足りなくなるな…」
「おいザカリー、顔がニヤケすぎてんぞ」
「みんなもうちょっと静かに」
「私も座ろっかな」
「もうちょっと違う服着て来りゃよかったな」
「フェンリルは俺の肩にでもくるか?」
「ボクここでいいや」
「よーし、みんなそろそろ写すよお~」
マリオンの号令で、みなカメラに向く。
そこにはいつのまにか、ベルトルド邸で働くセヴェリが、カメラを構えて宙に浮いていた。セヴェリはサイ《超能力》使いでもある。
「リッキー、あの丸いレンズを見るんだぞ」
ベルトルドが指をさす方へ、キュッリッキは目を向ける。
「それでは皆様、さあ、笑顔で」
キュッリッキはドキドキしながら、初めて見るカメラに注目した。緊張のために、ちょっと笑顔がぎこちない。
「ではいきますよ」
一瞬静まり返った中に、シャッターの音だけが響く。
その直後、突然瓦が剥がれ、全員真っ逆さまに地面に向かって落下していった。
キュッリッキは一生懸命品定めをし、考え抜いた末、真っ白な木枠に控えめな花細工が施された写真立てを一つ購入した。
雑貨店で、その写真立てに、一枚の写真をはめ込んでもらう。
「ありがとう!」
満面の笑みで、キュッリッキは雑貨店をあとにした。
袋から取り出した写真立てを覗き込み、キュッリッキはこれ以上にない嬉しそうな笑顔を浮かべた。すれ違う人々が、その笑顔にどきりとして振り向いていく。
ライオン傭兵団の仲間たちと、ベルトルドとアルカネット。そして、キュッリッキとフェンリルが新たに加わって、一枚の写真の中で笑顔をほころばせていた。
「あ、キューリちゃんきたよお~」
「おせーぞキューリ!」
「リッキーさん、おはようございます」
食堂ではなく玄関ホールに、傭兵団全員とベルトルドとアルカネットが揃っているので、キュッリッキは何事かと目を丸くする。
「みんなこんな早く集まって、どうしたの??」
「ほら、早く早く」
ハーマンに手を引かれてアジトの外に出る。そしていきなり全員屋根の上に飛ばされた。空は雲一つない晴天。風も穏やかだ。
「前列のひとは座ってくださいね、後ろのひとが隠れちゃいますから」
「リッキー、俺と一緒に前に座ろうな」
ベルトルドがキュッリッキの肩を抱き寄せ瓦に座り込む。
「どさくさに紛れてイヤラシイ。あなた、最低ですね」
そう言いながら、アルカネットがキュッリッキを引き寄せた。
「お前こそ、なに独り占めしてるんだ、リッキーは俺のモンだぞ!」
「勝手にモノ扱いしないでください。困った人ですね」
「えーっと…」
「ペルラは俺様が抱きしめて一緒に座る!!」
「触るな鬱陶しい」
「オレ、キューリのそばが良いな、なんて」
「ガエルは大きいですから後ろに立ってください」
「ボク隅っこでいいよ」
「みなさん、こんな狭いところで騒ぐと落ちますよ」
「ガエルのそばだと、ポーズにいまいち貫禄が足りなくなるな…」
「おいザカリー、顔がニヤケすぎてんぞ」
「みんなもうちょっと静かに」
「私も座ろっかな」
「もうちょっと違う服着て来りゃよかったな」
「フェンリルは俺の肩にでもくるか?」
「ボクここでいいや」
「よーし、みんなそろそろ写すよお~」
マリオンの号令で、みなカメラに向く。
そこにはいつのまにか、ベルトルド邸で働くセヴェリが、カメラを構えて宙に浮いていた。セヴェリはサイ《超能力》使いでもある。
「リッキー、あの丸いレンズを見るんだぞ」
ベルトルドが指をさす方へ、キュッリッキは目を向ける。
「それでは皆様、さあ、笑顔で」
キュッリッキはドキドキしながら、初めて見るカメラに注目した。緊張のために、ちょっと笑顔がぎこちない。
「ではいきますよ」
一瞬静まり返った中に、シャッターの音だけが響く。
その直後、突然瓦が剥がれ、全員真っ逆さまに地面に向かって落下していった。
キュッリッキは一生懸命品定めをし、考え抜いた末、真っ白な木枠に控えめな花細工が施された写真立てを一つ購入した。
雑貨店で、その写真立てに、一枚の写真をはめ込んでもらう。
「ありがとう!」
満面の笑みで、キュッリッキは雑貨店をあとにした。
袋から取り出した写真立てを覗き込み、キュッリッキはこれ以上にない嬉しそうな笑顔を浮かべた。すれ違う人々が、その笑顔にどきりとして振り向いていく。
ライオン傭兵団の仲間たちと、ベルトルドとアルカネット。そして、キュッリッキとフェンリルが新たに加わって、一枚の写真の中で笑顔をほころばせていた。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヒロインは始まる前に退場していました
サクラ
ファンタジー
とある乙女ゲームの世界で目覚めたのは、原作を知らない一人の少女
産まれた時点で本来あるべき道筋を外れてしまっていた彼女は、知らない世界でどう生き抜くのか。
母の愛情、突然の別れ、事故からの死亡扱いで目覚めた場所はゴミ捨て場
捨てる神あれば拾う神あり?
人の温かさに触れて成長する少女に再び訪れる試練。
そして、本来のヒロインが現れない世界ではどんな未来が訪れるのか。
主人公が7歳になる頃までは平和、ホノボノが続きます。
ダークファンタジーになる予定でしたが、主人公ヴィオの天真爛漫キャラに ダーク要素は少なめとなっております。
同作品を『小説を読もう』『カクヨム』でも配信中。カクヨム先行となっております
追いつくまで しばらくの間 0時、12時の一日2話更新としております
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!
小択出新都
ファンタジー
異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。
跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。
だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。
彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。
仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる