片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
292 / 882
番外編1

写真・1

しおりを挟む
いつも読んでくださる皆様、はじめましての皆様、閲覧やお気に入りなど、本当にありがとうございます。

前作【ALCHERA-片翼の召喚士- 】では、番外編をいくつか執筆していました。

番外編の内容は、本編のパラレル的なものと、過去のお話などがあります。本編の進行に合わせて、リメイクして今後いくつか挟んでいきたいと思います。

話が進んでいくにつれ、皆様のキャラに対する印象が変わるかも…? しれないので、あまり違和感がひどくない時点で公開していくようにしていきますね。

本編ともども、番外編もよろしくお願いします。

* * * *

「マリオン、いる~?」

 コンコン、とドアをノックして、キュッリッキは声をかけた。

「あーい、あいてるから入っておいで~」

 外開きのドアを開けると、相変わらずのゴミ山に、キュッリッキは口の端が引きつる。今日も厚化粧バッチリのマリオンが、笑顔でビール瓶を掲げた。昼日中から酒を飲料水がわりにしている。

「ちゃんと片付けないと、キリおばちゃんに怒られちゃうよ」

「あはは~。まーそのうちネぇ」

 ゴミの大半は酒瓶である。

「ねえ、またアレ見せて」

「あいあい」

 酒瓶の乱立する中に置かれた椅子に座って、ビールを煽っていたマリオンは、文机の上に立て置かれた本の中から、一冊のアルバムを取る。

「はい、どうぞぉ」

「ありがとう」

 アルバムを受け取り、酒瓶の隙間をつま先立てて歩きながら、ベッドの上に飛び乗るった。着いてきたフェンリルは、マリオンの膝の上に飛び乗る。

 キュッリッキは時々マリオンの部屋に遊びに来て、必ず広げるものがある。それが見たくて、押しかけてくるのだ。

 ベッドにうつ伏せに寝転がりながら、嬉しそうにマリオンのアルバムをめくる。

 ライオン傭兵団の仲間たちや、かつての同僚たちと写した写真をおさめたアルバムでだ。

 マリオンのかつての職場は、ハーメンリンナにある皇王の居城、グローイ宮殿の楽士隊だった。

 宮殿付きの楽士隊は、あらゆる楽器演奏のスキル〈才能〉を持った超エリートたちで編成されている。しかしマリオンの持つスキル〈才能〉は、サイ《超能力》である。楽器とは無縁のスキル〈才能〉だ。

「畑違いのところへ入れろーっていうんだからぁ、そりゃあね、いっぱ~い練習したよ~」

「でも練習したら、スキル〈才能〉持ちと同じくらい、うまくなるものなの?」

「アハッ。それはさすがに難しいねえ。でもね、アタシにはサイ《超能力》があるでしょお。実はこれがあるから、採用されたとも言えるのよねぇ」

 膝の上のフェンリルの背を撫でながら、マリオンはニヤリと笑う。キュッリッキは不思議そうに首をかしげた。

「アタシさあ、どぉしても楽士隊に入りたかったの。だってえ、制服がカッコイイんだもん」

「うひ…」

「同じ働くなら、制服カッコイイほうがいいじゃ~ん。やる気も出るしぃ」

 制服に憧れ、その職業に就くのは珍しくない。ただ、この世界にはスキル〈才能〉というものが存在し、専門職になると、該当スキル〈才能〉持ちが最優先されるのだ。

 マリオンのように楽士隊に憧れ、何かの楽器の演奏に長けるために猛練習を積んだとしても、元からスキル〈才能〉を持つ者に比べれば劣ってしまう。当然採用は論外だった。

「結構粘ったんだよねえ~。来る日もぉ、来る日もぉ、楽士隊に入りたい、入れて、お願いっ! みたいにさあ。そしたらあ、拾ってくれたのがベルトルドのおっさんだったんだあ」

「ベルトルドさんが?」

「そっ」

 その頃のことを、マリオンは思い起こす。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

処理中です...