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初恋の予感編
episode286
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「リッキーが恋をしている相手を、当ててみようか」
寝転がったまま、ベルトルドはにやりと口の端を歪めた。
「えっ?」
「サイ《超能力》は使わないぞ」
挑むように言われて、キュッリッキは顔に緊張を浮かべて、自然と背筋を伸ばした。
「俺の知ってる奴だな」
目を閉じ、わざとらしく考え込むように顎を引く。そして頭の下から片手を出すと、人差し指を立てた。
「メルヴィンだろう?」
人差し指をキュッリッキに向け、不敵に笑う。
キュッリッキは瞬時に顔を真っ赤にして、口を戦慄かせた。
「ち……ちが……ちが」
「おや? ハズレか?」
笑い含みに言うと、キュッリッキの顔がますます赤くなる。そのうち火でも吹きそうだ。その様子があまりにもおかしくて、ベルトルドは大笑いしたいところを、必死に我慢した。
「んもおおおベルトルドさんのバカぁ!」
激しい動揺を隠そうとしたキュッリッキは、膝の上で寝ていたフェンリルの尻尾を掴むと、思い切りベルトルドの顔に叩きつけた。
「ふがっ」
フェンリルの頭部がモロ鼻にぶつかって、一瞬目の前が真っ白になりかけた。目に涙をにじませながら、ベルトルドはフェンリルの後脚を掴んで顔から引き剥がす。
「一応顔はだいじなんでな……。生きてるか、犬は」
当然フェンリルは脳天直撃で、意識がふっ飛んでいた。まるで蛙の干物のような体勢で伸びてしまっている。
「あ……」
キュッリッキは自分が掴んで叩きつけたのが相棒だと気づいて、サーッと血の気がひいていった。
ベルトルドから呼び出され、メルヴィンとルーファスは、キュッリッキの部屋のドアをノックした。
入れ、と声がかかり室内に入ると、大きなベッドの上に寝転がったベルトルドと、明後日の方向を向いて、念仏のようにブツブツ何かを言ってるキュッリッキが座っていた。
「ごめんねフェンリル、ごめんね、ごめんねっ」
人間で言えば「ぶすーーーーっ」とむくれたような顔をして、フェンリルが面前のキュッリッキを睨みつけている真っ最中だった。
ルーファスが「どうしたんです?」とジェスチャーでキュッリッキを指すと、ベルトルドはニヤニヤとした笑いをキュッリッキに向ける。
「もうぉ、笑わないでよーー!」
キュッリッキは泣きそうな顔で叫んだ。
そしてメルヴィンとルーファスが、「ぶっ」と突然吹き出して笑いだした。ベルトルドがサイ《超能力》で、フェンリルの悲劇のシーンを見せたらしい。
3人は笑うだけ笑うと、息苦しそうになんとか笑いを引っ込めた。キュッリッキは憮然とした顔で、そんな3人を睨みつけている。
「鼻がとっても痛かったが、面白かったぞ。さすがは神だな、意識は飛んだようだが生きていたか」
噛み付きそうなフェンリルに睨まれて、ベルトルドは面白そうに片方の眉だけ上げた。
叩きつけられたことよりも、咄嗟のこととはいえ、意識を手放してしまったことに、フェンリルはプライドを傷つけられ腹を立てていた。
「さて、あいつらもここに飛ばすぞ」
ベルトルドは身体を起こすと、あぐらをかいて座り直し、パチリと指を鳴らした。
それは、あまりにも一瞬のことだった。
「ほんとに空間転移したぞ!」
ギャリーが喚く。
「一瞬でしたねえ、凄い、凄い」
驚いたようにカーティスが呟いた。
「あれっ? みんなどうしちゃったのよ?」
ルーファスがギョッとして、自分の周りを見回す。
突如ルーファスとメルヴィンの周りに、大きな荷物を背負った、ライオン傭兵団が勢揃いしていた。
寝転がったまま、ベルトルドはにやりと口の端を歪めた。
「えっ?」
「サイ《超能力》は使わないぞ」
挑むように言われて、キュッリッキは顔に緊張を浮かべて、自然と背筋を伸ばした。
「俺の知ってる奴だな」
目を閉じ、わざとらしく考え込むように顎を引く。そして頭の下から片手を出すと、人差し指を立てた。
「メルヴィンだろう?」
人差し指をキュッリッキに向け、不敵に笑う。
キュッリッキは瞬時に顔を真っ赤にして、口を戦慄かせた。
「ち……ちが……ちが」
「おや? ハズレか?」
笑い含みに言うと、キュッリッキの顔がますます赤くなる。そのうち火でも吹きそうだ。その様子があまりにもおかしくて、ベルトルドは大笑いしたいところを、必死に我慢した。
「んもおおおベルトルドさんのバカぁ!」
激しい動揺を隠そうとしたキュッリッキは、膝の上で寝ていたフェンリルの尻尾を掴むと、思い切りベルトルドの顔に叩きつけた。
「ふがっ」
フェンリルの頭部がモロ鼻にぶつかって、一瞬目の前が真っ白になりかけた。目に涙をにじませながら、ベルトルドはフェンリルの後脚を掴んで顔から引き剥がす。
「一応顔はだいじなんでな……。生きてるか、犬は」
当然フェンリルは脳天直撃で、意識がふっ飛んでいた。まるで蛙の干物のような体勢で伸びてしまっている。
「あ……」
キュッリッキは自分が掴んで叩きつけたのが相棒だと気づいて、サーッと血の気がひいていった。
ベルトルドから呼び出され、メルヴィンとルーファスは、キュッリッキの部屋のドアをノックした。
入れ、と声がかかり室内に入ると、大きなベッドの上に寝転がったベルトルドと、明後日の方向を向いて、念仏のようにブツブツ何かを言ってるキュッリッキが座っていた。
「ごめんねフェンリル、ごめんね、ごめんねっ」
人間で言えば「ぶすーーーーっ」とむくれたような顔をして、フェンリルが面前のキュッリッキを睨みつけている真っ最中だった。
ルーファスが「どうしたんです?」とジェスチャーでキュッリッキを指すと、ベルトルドはニヤニヤとした笑いをキュッリッキに向ける。
「もうぉ、笑わないでよーー!」
キュッリッキは泣きそうな顔で叫んだ。
そしてメルヴィンとルーファスが、「ぶっ」と突然吹き出して笑いだした。ベルトルドがサイ《超能力》で、フェンリルの悲劇のシーンを見せたらしい。
3人は笑うだけ笑うと、息苦しそうになんとか笑いを引っ込めた。キュッリッキは憮然とした顔で、そんな3人を睨みつけている。
「鼻がとっても痛かったが、面白かったぞ。さすがは神だな、意識は飛んだようだが生きていたか」
噛み付きそうなフェンリルに睨まれて、ベルトルドは面白そうに片方の眉だけ上げた。
叩きつけられたことよりも、咄嗟のこととはいえ、意識を手放してしまったことに、フェンリルはプライドを傷つけられ腹を立てていた。
「さて、あいつらもここに飛ばすぞ」
ベルトルドは身体を起こすと、あぐらをかいて座り直し、パチリと指を鳴らした。
それは、あまりにも一瞬のことだった。
「ほんとに空間転移したぞ!」
ギャリーが喚く。
「一瞬でしたねえ、凄い、凄い」
驚いたようにカーティスが呟いた。
「あれっ? みんなどうしちゃったのよ?」
ルーファスがギョッとして、自分の周りを見回す。
突如ルーファスとメルヴィンの周りに、大きな荷物を背負った、ライオン傭兵団が勢揃いしていた。
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