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初恋の予感編
episode275
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「でも副宰相とアルカネット氏は、本気なんだな」
「そうなのかなあ…」
たぶん本気なんだろうとハドリーは思う。説明された範囲でしか想像は出来ないが、歳の離れた少女にそこまでご執心なのだ。
イソラの町までキュッリッキを迎えにきた、ベルトルドとアルカネットの姿を思い出し、間違いないと確信した。
召喚スキル〈才能〉を持っているからキュッリッキを迎えに来たんじゃない、愛する者だから迎えに来たのだと。アルカネットの見せた苛烈な行動を思い起こすと、ゾッとするほどに。
(それにしても、まさかリッキーが恋してるなんてなあ)
人見知りで、なかなか他人に心を開かないキュッリッキが、ちょっと見ない間に恋をしている。話を聞いている感じだと、恋、というものがよく判っていないかんじが少々不安だが。
ライオン傭兵団に入ったことで、精神的にとても大きく成長したんだと感じさせた。キュッリッキにとって、抜群に相性がいい場所なんだろう。
(もう、心配いらないな)
ハーツイーズのアパートに、泣きながら帰ってくることは、もうないだろう。くることがあるとすれば、笑顔で遊びに来るくらいだ。
ハドリーにとって、キュッリッキは妹のような存在なのだ。初恋が上手く実ればいい、そう率直に思った。そしてファニーも、キュッリッキを妹のように思っている。だから何かと口うるさい。
「いい? 不可抗力のキスの大盤振る舞いはしょうがないとしても、本気のだけは、本当に好きな相手のために、大事に取っておきなさいよ。つまり、メルヴィンさんのためにとっておけってことね」
「うん…」
キュッリッキは再び顔を赤くして頷いた。メルヴィンの優しく微笑む顔を思い出して、身体の芯から恥ずかしくなる。
「それといい機会だから、髪型も変えちゃいなさいよ~」
「髪型を?」
「うん。だってー、あんた前髪いっつも短くしすぎるし、お子様丸出しなんだもん。相手は年上なんだから、もうちょっと大人っぽくしなさい」
キュッリッキはだいぶ伸びた前髪をつまんで引っ張る。多少くせっ毛なので、短くすると必要以上に短く縮んでしまうのだ。
「それに、ストレートが取れてきちゃったわね」
「うん。かけ直したほうがいいかなあ?」
「ああ、ダメダメ。せっかくゆるふわに波打っててイイ感じなんだから、ストレートなんかかけちゃ勿体無いわよ」
「そっかあ」
「あんたの場合は、ストレートより波打ってるほうが、似合ってるわよ」
「じゃあ、ストレートかけるのやめる~」
そんな2人の様子に、ハドリーは肩をすくめて苦笑した。
ファニーがキュッリッキを相手に、オシャレの話を熱心にしている。キュッリッキは素が申し分ない美少女なので、何を着せても可愛いのだ。それであまりオシャレの話をすることはなかったが、ついにキュッリッキが恋をしたものだから、何故かファニーは張り切っている。アドバイス出来ることが楽しいのだろう。
キュッリッキの初恋話がひと段落すると、ソレル王国の一件では、ファニーとハドリーは正規の報酬プラス、ベルトルドから特別報酬がたっぷり支払われて、懐具合がぐんと温かいこと。傭兵ギルド間では、キナ臭い仕事がモナルダ大陸方面から大量に舞い込んできて、傭兵たちを喜ばせていることなどを報告し合った。
3人とも話したいことはもっともっとあるが、空が陰り出した頃、メルヴィンとルーファスが迎えにやってきた。
「そうなのかなあ…」
たぶん本気なんだろうとハドリーは思う。説明された範囲でしか想像は出来ないが、歳の離れた少女にそこまでご執心なのだ。
イソラの町までキュッリッキを迎えにきた、ベルトルドとアルカネットの姿を思い出し、間違いないと確信した。
召喚スキル〈才能〉を持っているからキュッリッキを迎えに来たんじゃない、愛する者だから迎えに来たのだと。アルカネットの見せた苛烈な行動を思い起こすと、ゾッとするほどに。
(それにしても、まさかリッキーが恋してるなんてなあ)
人見知りで、なかなか他人に心を開かないキュッリッキが、ちょっと見ない間に恋をしている。話を聞いている感じだと、恋、というものがよく判っていないかんじが少々不安だが。
ライオン傭兵団に入ったことで、精神的にとても大きく成長したんだと感じさせた。キュッリッキにとって、抜群に相性がいい場所なんだろう。
(もう、心配いらないな)
ハーツイーズのアパートに、泣きながら帰ってくることは、もうないだろう。くることがあるとすれば、笑顔で遊びに来るくらいだ。
ハドリーにとって、キュッリッキは妹のような存在なのだ。初恋が上手く実ればいい、そう率直に思った。そしてファニーも、キュッリッキを妹のように思っている。だから何かと口うるさい。
「いい? 不可抗力のキスの大盤振る舞いはしょうがないとしても、本気のだけは、本当に好きな相手のために、大事に取っておきなさいよ。つまり、メルヴィンさんのためにとっておけってことね」
「うん…」
キュッリッキは再び顔を赤くして頷いた。メルヴィンの優しく微笑む顔を思い出して、身体の芯から恥ずかしくなる。
「それといい機会だから、髪型も変えちゃいなさいよ~」
「髪型を?」
「うん。だってー、あんた前髪いっつも短くしすぎるし、お子様丸出しなんだもん。相手は年上なんだから、もうちょっと大人っぽくしなさい」
キュッリッキはだいぶ伸びた前髪をつまんで引っ張る。多少くせっ毛なので、短くすると必要以上に短く縮んでしまうのだ。
「それに、ストレートが取れてきちゃったわね」
「うん。かけ直したほうがいいかなあ?」
「ああ、ダメダメ。せっかくゆるふわに波打っててイイ感じなんだから、ストレートなんかかけちゃ勿体無いわよ」
「そっかあ」
「あんたの場合は、ストレートより波打ってるほうが、似合ってるわよ」
「じゃあ、ストレートかけるのやめる~」
そんな2人の様子に、ハドリーは肩をすくめて苦笑した。
ファニーがキュッリッキを相手に、オシャレの話を熱心にしている。キュッリッキは素が申し分ない美少女なので、何を着せても可愛いのだ。それであまりオシャレの話をすることはなかったが、ついにキュッリッキが恋をしたものだから、何故かファニーは張り切っている。アドバイス出来ることが楽しいのだろう。
キュッリッキの初恋話がひと段落すると、ソレル王国の一件では、ファニーとハドリーは正規の報酬プラス、ベルトルドから特別報酬がたっぷり支払われて、懐具合がぐんと温かいこと。傭兵ギルド間では、キナ臭い仕事がモナルダ大陸方面から大量に舞い込んできて、傭兵たちを喜ばせていることなどを報告し合った。
3人とも話したいことはもっともっとあるが、空が陰り出した頃、メルヴィンとルーファスが迎えにやってきた。
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