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初恋の予感編
episode274
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「あんた、ちょっと変わった?」
「え?」
「?」
「なんていうかさあ……色気、みたいなもんが、やーっと滲み出てきた感じ。ほんのちょっとだけど」
カップに伸ばした手が止まり、ハドリーはファニーをまじまじと見る。
「お子様丸出しで、年の割に色気もなかったし、これでも心配してたんだよ~」
「色気……ねえ」
ファニーとハドリーに見つめられ、キュッリッキは困惑を浮かべてそわそわした。
「ずばり、あんた本気で気になるヒトができたんでしょ!!」
ファニーがビシッと指をつきつけると、キュッリッキは途端に頬を真っ赤にした。
「図星なのかリッキー!?」
ギョッとした顔のハドリーに畳み掛けられ、ますます顔を赤くする。そのうち蒸気でも吹き出すんじゃないかと思うくらい、思いっきり真っ赤になっていた。
「白状しちゃいなさいよ! 誰なのよ?」
「えー……」
キュッリッキは真っ赤になった顔を俯かせると、唇を尖らせブツブツと独り言ちた。
「はっきり言いなさい!」
焦れたファニーがテーブルをバシッと叩くと、キュッリッキはシャキッと背筋を伸ばして、小さな声で白状した。
「メルヴィン……きゃっ」
言うやいなや、ひざ掛けを掴んで顔を覆い隠す。
たっぷり間を置いたあと、ファニーとハドリーは何度も大きく頷いた。
「絵に描いたように、リッキーの好みにぴったりだな」
「誠実そうで優しくて、けど堅物ってのに惹かれやすいのよね、あんた」
キュッリッキの男の好みを熟知している2人は、そうかそうかやっとかと、しみじみ頷きあっていた。
これまでの付き合いで、色気ある話題が一切なかった子である。
「あんまり口きいたことないけど、いいやつだな、とオレは思う」
「そうね、副宰相閣下やアルカネットってヒトにご執心よりはイイかな」
「ベルトルドさんとアルカネットさんに?」
ひざ掛けから顔を出すと、意外なことを言われたという表情でファニーを見た。
「あんたは知らないだろうけど、市井じゃ凄い噂になってるのよ。泣く子も黙らせる副宰相が、私邸にかこった女にオネツだーって」
「その女ってのは、リッキーのことだな。さすがに素性はわからんから、みんな好き好きに適当な想像をしているが」
庶民の情報網侮りがたし。一体どこからそんな情報が漏れるのかと、キュッリッキは目が点になった。呆れ半分ため息をつくと、2人にこれまでの経緯を説明した。
ファニーとハドリーには、ある程度自分の過去のことは話してある。ベルトルドやアルカネットにさらけ出したように全てではなかったが、孤児でアイオン族であること、片翼のことは話している。
「ベルトルドさんとアルカネットさんは、アタシにとっては父親みたいなかんじ、なのかな…。父親がどんなものか知らないけど、優しく守ってくれる大きな存在」
ベルトルドとアルカネットといると、心が落ち着いて安心できる。2人が向けてくる愛情表現がちょっと過激な気はするが、メルヴィンに感じるようなドキドキ感は湧いてこなかった。
「え?」
「?」
「なんていうかさあ……色気、みたいなもんが、やーっと滲み出てきた感じ。ほんのちょっとだけど」
カップに伸ばした手が止まり、ハドリーはファニーをまじまじと見る。
「お子様丸出しで、年の割に色気もなかったし、これでも心配してたんだよ~」
「色気……ねえ」
ファニーとハドリーに見つめられ、キュッリッキは困惑を浮かべてそわそわした。
「ずばり、あんた本気で気になるヒトができたんでしょ!!」
ファニーがビシッと指をつきつけると、キュッリッキは途端に頬を真っ赤にした。
「図星なのかリッキー!?」
ギョッとした顔のハドリーに畳み掛けられ、ますます顔を赤くする。そのうち蒸気でも吹き出すんじゃないかと思うくらい、思いっきり真っ赤になっていた。
「白状しちゃいなさいよ! 誰なのよ?」
「えー……」
キュッリッキは真っ赤になった顔を俯かせると、唇を尖らせブツブツと独り言ちた。
「はっきり言いなさい!」
焦れたファニーがテーブルをバシッと叩くと、キュッリッキはシャキッと背筋を伸ばして、小さな声で白状した。
「メルヴィン……きゃっ」
言うやいなや、ひざ掛けを掴んで顔を覆い隠す。
たっぷり間を置いたあと、ファニーとハドリーは何度も大きく頷いた。
「絵に描いたように、リッキーの好みにぴったりだな」
「誠実そうで優しくて、けど堅物ってのに惹かれやすいのよね、あんた」
キュッリッキの男の好みを熟知している2人は、そうかそうかやっとかと、しみじみ頷きあっていた。
これまでの付き合いで、色気ある話題が一切なかった子である。
「あんまり口きいたことないけど、いいやつだな、とオレは思う」
「そうね、副宰相閣下やアルカネットってヒトにご執心よりはイイかな」
「ベルトルドさんとアルカネットさんに?」
ひざ掛けから顔を出すと、意外なことを言われたという表情でファニーを見た。
「あんたは知らないだろうけど、市井じゃ凄い噂になってるのよ。泣く子も黙らせる副宰相が、私邸にかこった女にオネツだーって」
「その女ってのは、リッキーのことだな。さすがに素性はわからんから、みんな好き好きに適当な想像をしているが」
庶民の情報網侮りがたし。一体どこからそんな情報が漏れるのかと、キュッリッキは目が点になった。呆れ半分ため息をつくと、2人にこれまでの経緯を説明した。
ファニーとハドリーには、ある程度自分の過去のことは話してある。ベルトルドやアルカネットにさらけ出したように全てではなかったが、孤児でアイオン族であること、片翼のことは話している。
「ベルトルドさんとアルカネットさんは、アタシにとっては父親みたいなかんじ、なのかな…。父親がどんなものか知らないけど、優しく守ってくれる大きな存在」
ベルトルドとアルカネットといると、心が落ち着いて安心できる。2人が向けてくる愛情表現がちょっと過激な気はするが、メルヴィンに感じるようなドキドキ感は湧いてこなかった。
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