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初恋の予感編
episode270
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優しく見つめてくるメルヴィンに気づいて、キュッリッキは思わず顔を俯かせる。
喧騒が去って静まり返った室内には、2人だけしかいない。急にメルヴィンの存在を強く意識してしまい、恥ずかしくなって目が合わせられなくなってしまった。
メルヴィンがそばにいる、声が聞こえる、息遣いを感じる。それだけのことで、何か熱いものが身体中を駆け巡っていた。
(メルヴィンと、ふ、ふ、2人っきりっ)
心臓がいきなりドキドキしだした。頬に熱を感じて、自分の顔が赤くなっていることに気づく。そのことが知られたくなくて、慌ててシーツに潜り込んだ。
「どうしました?」
いきなりシーツを目深にかぶってしまったキュッリッキに驚いて、メルヴィンはベッドに腰を下ろした。気分でも悪くなったのだろうか。
「リッキーさん?」
覗き込むように声をかけると、消え入りそうなほど小さな声で返事があった。
「なんでも……ないの、ちょっと疲れちゃっただけ、だから…」
「……そうですか。じゃあ、もう休んだほうがいいかな」
そう言って首をかしげながらも立ち上がる。せっかく2人きりになれたのだし、少し話でもしようと思っていただけに、メルヴィンは残念そうに息をついた。
今日はずっと出かけていて、あまり話もしていなかった。
「オレは自分の部屋に戻りますね。何かあったら呼んでください。では、おやすみなさい、リッキーさん」
「おやすみなさい、メルヴィン」
ほんの少しだけシーツから顔を出し、部屋を出ていくメルヴィンの後ろ姿を見送る。
扉が閉められると、キュッリッキは大きく息を吐き出した。
そんなキュッリッキの様子を、クッションの上から見ていたフェンリルは、なんだろうと首をかしげる。
「アタシ、このままじゃ心臓がパンクしちゃう」
突然降って沸いたような感情に、自分でもびっくりしてしまう。
メルヴィンと2人きりになると意識してしまい、鼓動が早くなり、顔が赤くなる。どう目を合わせていいか戸惑い、一言一句全てに身体が敏感に反応した。
そしていなくなると、急に寂しい気分に包まれると同時に、どこかホッとしてしまうのだ。
「こんなの初めてだから、きっとアタシ、病気かもしれない」
キュッリッキの呟きに、フェンリルは違う違うと首を振る。しかしキュッリッキはフェンリルのほうを見ていない。
常に身近にいるベルトルド、アルカネット、ルーファスの3人に、こんな感情は湧いてこない。何故、メルヴィンにだけ、沸いてしまうんだろう。それも、この数日のうちに、急になのだ。
とんでもない病気に罹ってしまったようだ。
「明日ヴィヒトリ先生に聞いてみよ…」
しかし翌日ヴィヒトリに質問すると、
「医者には治せない課題を堂々と突きつけてくるな、このアンポンタンめ!!」
と、盛大に怒鳴られて、絶句する羽目になるのだった。
喧騒が去って静まり返った室内には、2人だけしかいない。急にメルヴィンの存在を強く意識してしまい、恥ずかしくなって目が合わせられなくなってしまった。
メルヴィンがそばにいる、声が聞こえる、息遣いを感じる。それだけのことで、何か熱いものが身体中を駆け巡っていた。
(メルヴィンと、ふ、ふ、2人っきりっ)
心臓がいきなりドキドキしだした。頬に熱を感じて、自分の顔が赤くなっていることに気づく。そのことが知られたくなくて、慌ててシーツに潜り込んだ。
「どうしました?」
いきなりシーツを目深にかぶってしまったキュッリッキに驚いて、メルヴィンはベッドに腰を下ろした。気分でも悪くなったのだろうか。
「リッキーさん?」
覗き込むように声をかけると、消え入りそうなほど小さな声で返事があった。
「なんでも……ないの、ちょっと疲れちゃっただけ、だから…」
「……そうですか。じゃあ、もう休んだほうがいいかな」
そう言って首をかしげながらも立ち上がる。せっかく2人きりになれたのだし、少し話でもしようと思っていただけに、メルヴィンは残念そうに息をついた。
今日はずっと出かけていて、あまり話もしていなかった。
「オレは自分の部屋に戻りますね。何かあったら呼んでください。では、おやすみなさい、リッキーさん」
「おやすみなさい、メルヴィン」
ほんの少しだけシーツから顔を出し、部屋を出ていくメルヴィンの後ろ姿を見送る。
扉が閉められると、キュッリッキは大きく息を吐き出した。
そんなキュッリッキの様子を、クッションの上から見ていたフェンリルは、なんだろうと首をかしげる。
「アタシ、このままじゃ心臓がパンクしちゃう」
突然降って沸いたような感情に、自分でもびっくりしてしまう。
メルヴィンと2人きりになると意識してしまい、鼓動が早くなり、顔が赤くなる。どう目を合わせていいか戸惑い、一言一句全てに身体が敏感に反応した。
そしていなくなると、急に寂しい気分に包まれると同時に、どこかホッとしてしまうのだ。
「こんなの初めてだから、きっとアタシ、病気かもしれない」
キュッリッキの呟きに、フェンリルは違う違うと首を振る。しかしキュッリッキはフェンリルのほうを見ていない。
常に身近にいるベルトルド、アルカネット、ルーファスの3人に、こんな感情は湧いてこない。何故、メルヴィンにだけ、沸いてしまうんだろう。それも、この数日のうちに、急になのだ。
とんでもない病気に罹ってしまったようだ。
「明日ヴィヒトリ先生に聞いてみよ…」
しかし翌日ヴィヒトリに質問すると、
「医者には治せない課題を堂々と突きつけてくるな、このアンポンタンめ!!」
と、盛大に怒鳴られて、絶句する羽目になるのだった。
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