片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
271 / 882
初恋の予感編

episode268

しおりを挟む
「私からも疑問が一つ。何故召喚しなかったんですか? それに私やベルトルド卿にあずけていた小鳥も、忽然と消えちゃいましたし」

 カーティスは手を挙げ、不思議そうに言う。皆も気になっていた一つだ。

「召喚しなかったんじゃなくて、できなかったの。フェンリルもいきなり消えちゃったし、アルケラが視えなくなっちゃって」

 ガエルは肩に乗るフェンリルを見ると、フェンリルは悔しそうに喉を鳴らした。

「フェンリルが言うには、アルケラへ強制送還されちゃったんだって」

「フツーにそんなことできるん?」

 ルーファスの質問を否定して、キュッリッキは考えるように俯く。

「召喚士はアルケラを、アルケラという世界をこの目で視るの。そしてアルケラにいる住人をこちら側に招いて、用事が済んだらアルケラへ還してあげるのね。召喚士に招かれたアルケラの住人たちは、それがたとえ神様でも、自由意思で暴れたり力を使ったり、還ったりしちゃいけないルールがあるの。唯一の例外は、召喚士を守るために、生命の危険とか危機に自発的に動くことが許される。でも人や環境に害を与えることは、自分たちの意思でおこなっちゃいけないの。そして呼び出した召喚士しか、還すことは出来ないはずなんだけど……」

 フェンリルをあの場から排除するように働いた、なにかの強大な力。

「フェンリルはね、神様なの。今はこっちの世界で違和感ないように、仔犬の姿になってくれているからそうは見えないと思うけど。そのフェンリルを強制的に排除して、かつアタシのスキル〈才能〉を封じ込めた力が、あの神殿にはあったの」

「なるほど…」

 カーティスは腕を組むと考え込んだ。

 召喚士のスキル〈才能〉を封じ、神を排除する力。

(お聞きの通りです、ベルトルド卿)

(すまんな)

 途中からカーティスは、ルーファスとマリオンの繋いだ念話から、ベルトルドの念話に切り替わっていた。

(聞いたか? アルカネット、シ・アティウス)

(はい。随分と危険な代物のようですね、あの神殿は)

(これで確証を得ましたな)

(こっからは秘密の会談だ。戻してやる。ご苦労だったなカーティス)

(いえ。ではでは…)

 何やら気になる発言を聞いたところで追い出され、ルーファスとマリオンの念話に戻された。

 キュッリッキを慮って聞けずにいた、どうしても知りたかった今の事実。この機会に聞かせてもらおうと、ベルトルドからいきなり念話がきて、いっときカーティスとベルトルドの意思が繋げられたのだった。どうやら盗み聞きをしていたらしい。

「まあ、もうあの神殿に近寄ることはないでしょうし、原因究明は我々には関係なさそうですね」

 ブルニタルがそう締めくくろうとすると、

(それが、そうもいかねーみたいなんだよな)

 ザカリーが意味ありげに続く。

「どういうことでしょうか?」

(アタシらがこっちに残された理由はさあ、ザカリーの子守もあるんだけどぉ~、ソレル王国とか近隣諸国の偵察とか、諸々あったんだよねえ)

 ザカリーの言葉を継いで、マリオンが説明に入る。

(もんのすごぉ~~~~っく、キナ臭いんだよねぇ、ソレル王国とその周辺)

「それってつまり……」

(ああ、戦争が近いってことだぜ)

 不敵な笑みを含んだザカリーの声に、皆の顔に緊張が走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
 婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!  ――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。 「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」  すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。  婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。  最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2022/02/14  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2022/02/13  小説家になろう ハイファンタジー日間59位 ※2022/02/12  完結 ※2021/10/18  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2021/10/19  アルファポリス、HOT 4位 ※2021/10/21  小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

処理中です...