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初恋の予感編
episode268
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「私からも疑問が一つ。何故召喚しなかったんですか? それに私やベルトルド卿にあずけていた小鳥も、忽然と消えちゃいましたし」
カーティスは手を挙げ、不思議そうに言う。皆も気になっていた一つだ。
「召喚しなかったんじゃなくて、できなかったの。フェンリルもいきなり消えちゃったし、アルケラが視えなくなっちゃって」
ガエルは肩に乗るフェンリルを見ると、フェンリルは悔しそうに喉を鳴らした。
「フェンリルが言うには、アルケラへ強制送還されちゃったんだって」
「フツーにそんなことできるん?」
ルーファスの質問を否定して、キュッリッキは考えるように俯く。
「召喚士はアルケラを、アルケラという世界をこの目で視るの。そしてアルケラにいる住人をこちら側に招いて、用事が済んだらアルケラへ還してあげるのね。召喚士に招かれたアルケラの住人たちは、それがたとえ神様でも、自由意思で暴れたり力を使ったり、還ったりしちゃいけないルールがあるの。唯一の例外は、召喚士を守るために、生命の危険とか危機に自発的に動くことが許される。でも人や環境に害を与えることは、自分たちの意思でおこなっちゃいけないの。そして呼び出した召喚士しか、還すことは出来ないはずなんだけど……」
フェンリルをあの場から排除するように働いた、なにかの強大な力。
「フェンリルはね、神様なの。今はこっちの世界で違和感ないように、仔犬の姿になってくれているからそうは見えないと思うけど。そのフェンリルを強制的に排除して、かつアタシのスキル〈才能〉を封じ込めた力が、あの神殿にはあったの」
「なるほど…」
カーティスは腕を組むと考え込んだ。
召喚士のスキル〈才能〉を封じ、神を排除する力。
(お聞きの通りです、ベルトルド卿)
(すまんな)
途中からカーティスは、ルーファスとマリオンの繋いだ念話から、ベルトルドの念話に切り替わっていた。
(聞いたか? アルカネット、シ・アティウス)
(はい。随分と危険な代物のようですね、あの神殿は)
(これで確証を得ましたな)
(こっからは秘密の会談だ。戻してやる。ご苦労だったなカーティス)
(いえ。ではでは…)
何やら気になる発言を聞いたところで追い出され、ルーファスとマリオンの念話に戻された。
キュッリッキを慮って聞けずにいた、どうしても知りたかった今の事実。この機会に聞かせてもらおうと、ベルトルドからいきなり念話がきて、いっときカーティスとベルトルドの意思が繋げられたのだった。どうやら盗み聞きをしていたらしい。
「まあ、もうあの神殿に近寄ることはないでしょうし、原因究明は我々には関係なさそうですね」
ブルニタルがそう締めくくろうとすると、
(それが、そうもいかねーみたいなんだよな)
ザカリーが意味ありげに続く。
「どういうことでしょうか?」
(アタシらがこっちに残された理由はさあ、ザカリーの子守もあるんだけどぉ~、ソレル王国とか近隣諸国の偵察とか、諸々あったんだよねえ)
ザカリーの言葉を継いで、マリオンが説明に入る。
(もんのすごぉ~~~~っく、キナ臭いんだよねぇ、ソレル王国とその周辺)
「それってつまり……」
(ああ、戦争が近いってことだぜ)
不敵な笑みを含んだザカリーの声に、皆の顔に緊張が走った。
カーティスは手を挙げ、不思議そうに言う。皆も気になっていた一つだ。
「召喚しなかったんじゃなくて、できなかったの。フェンリルもいきなり消えちゃったし、アルケラが視えなくなっちゃって」
ガエルは肩に乗るフェンリルを見ると、フェンリルは悔しそうに喉を鳴らした。
「フェンリルが言うには、アルケラへ強制送還されちゃったんだって」
「フツーにそんなことできるん?」
ルーファスの質問を否定して、キュッリッキは考えるように俯く。
「召喚士はアルケラを、アルケラという世界をこの目で視るの。そしてアルケラにいる住人をこちら側に招いて、用事が済んだらアルケラへ還してあげるのね。召喚士に招かれたアルケラの住人たちは、それがたとえ神様でも、自由意思で暴れたり力を使ったり、還ったりしちゃいけないルールがあるの。唯一の例外は、召喚士を守るために、生命の危険とか危機に自発的に動くことが許される。でも人や環境に害を与えることは、自分たちの意思でおこなっちゃいけないの。そして呼び出した召喚士しか、還すことは出来ないはずなんだけど……」
フェンリルをあの場から排除するように働いた、なにかの強大な力。
「フェンリルはね、神様なの。今はこっちの世界で違和感ないように、仔犬の姿になってくれているからそうは見えないと思うけど。そのフェンリルを強制的に排除して、かつアタシのスキル〈才能〉を封じ込めた力が、あの神殿にはあったの」
「なるほど…」
カーティスは腕を組むと考え込んだ。
召喚士のスキル〈才能〉を封じ、神を排除する力。
(お聞きの通りです、ベルトルド卿)
(すまんな)
途中からカーティスは、ルーファスとマリオンの繋いだ念話から、ベルトルドの念話に切り替わっていた。
(聞いたか? アルカネット、シ・アティウス)
(はい。随分と危険な代物のようですね、あの神殿は)
(これで確証を得ましたな)
(こっからは秘密の会談だ。戻してやる。ご苦労だったなカーティス)
(いえ。ではでは…)
何やら気になる発言を聞いたところで追い出され、ルーファスとマリオンの念話に戻された。
キュッリッキを慮って聞けずにいた、どうしても知りたかった今の事実。この機会に聞かせてもらおうと、ベルトルドからいきなり念話がきて、いっときカーティスとベルトルドの意思が繋げられたのだった。どうやら盗み聞きをしていたらしい。
「まあ、もうあの神殿に近寄ることはないでしょうし、原因究明は我々には関係なさそうですね」
ブルニタルがそう締めくくろうとすると、
(それが、そうもいかねーみたいなんだよな)
ザカリーが意味ありげに続く。
「どういうことでしょうか?」
(アタシらがこっちに残された理由はさあ、ザカリーの子守もあるんだけどぉ~、ソレル王国とか近隣諸国の偵察とか、諸々あったんだよねえ)
ザカリーの言葉を継いで、マリオンが説明に入る。
(もんのすごぉ~~~~っく、キナ臭いんだよねぇ、ソレル王国とその周辺)
「それってつまり……」
(ああ、戦争が近いってことだぜ)
不敵な笑みを含んだザカリーの声に、皆の顔に緊張が走った。
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