片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
268 / 882
初恋の予感編

episode265

しおりを挟む
「ご無沙汰してますね、キューリさん」

 先頭をきって入ってきたカーティスが、にこやかに片手をあげた。

「みんな!!」

 キュッリッキは嬉しそうに声を張り上げると、身を乗り出しベッドから飛び出そうとして、均衡を崩して大きくよろめいて落ちそうになる。

「ちょ、キューリちゃん落ち着いて」

 慌ててルーファスが抱き止め、ゆっくりと座らせる。

「なーんだよ、ケッコー元気そうじゃねーか」

 ニシシッと笑いながらギャリーは身をかがめると、掌でキュッリッキの頭をぽんぽんと叩く。

「しっかしおめぇ、一回り小さくなってねーか? ただでさえちっぱいなのに、ついにまな板になっちまってよ」

「ちゃんとあるもん!!」

 キュッリッキは顔を真っ赤にして抗議する。

「キューリさんよかったご無事で~」

「心配したんだよー!」

 シビルとハーマンが、ベッドに飛び乗ってキュッリッキに抱きついた。お互いこれでもかと、フサフサの尻尾を振り回す。

「ありがとシビル、ハーマン。もう大丈夫だよ」

「キューリてめー、なんつー広いベッドに寝てるんだ! 俺様が大の字になっても余裕ありまくりじゃないか!!」

 いつの間にかベッドに飛び乗っていたヴァルトが、長い両腕と両脚を大きく開いて大の字になって寝そべっている。たしかにヴァルトのような長身が寝ても、余裕はたっぷりあった。

「これなら寝相が悪くても落ちませんね。広々といいベッドです」

 眼鏡をかけ直しながら、ブルニタルが羨ましそうに言う。

「でもね、ベルトルドさんとアルカネットさんに挟まれて寝てるから、アジトのベッドよりも狭いの…」

 キュッリッキがげっそりと言うと、

「あのドSどもと一緒に寝てんのかよ」

「おまえもうヴァージンじゃねーな!」

「スリープレイとか凄いやつだなおまえ」

「ちゃんと眠れてますか?」

「完全におもちゃにされてるな…」

「寝てる間にパンツ見られてるんじゃね」

「悪夢だけ毎日見そうですねぇ」

 皆口々に言いたい放題である。

「まあ、元気そうでよかった」

 フェンリルを肩に乗せたガエルが、キュッリッキの頭に大きな掌をのせた。掌から伝わってくるぬくもりに、キュッリッキは満面の笑顔を浮かべる。

 キュッリッキや仲間たちの賑やかすぎる様子を見て、最後に部屋に入ったメルヴィンの表情も、明るい笑みに包まれた。

 ナルバ山の遺跡での一件以来、離れ離れになっていたライオン傭兵団のメンバーも、ずっとキュッリッキを心配して悶々としていた。

 ルーファスやメルヴィンから日々彼女の様子の報告はもらっていたが、あの酷い惨状を目の当たりにしていただけに、直接会って確認し、安心したかったのだ。

 そしてキュッリッキも、みんなに会いたい会いたいと言い続けていた。

 今回メルヴィンとルーファスの計らいで、皆をベルトルド邸に招いて見舞いが実現した。その許可を得るために、メルヴィンがベルトルドに会い行き、留守にしていたのだった。

「俺が許可せずとも、どうせ呼ぶんだろう。ずっと会いたがっていたからな、リッキーも」

 そう言ってベルトルドは了承してくれた。ほかならぬキュッリッキのためならば反対する理由はない。

 こうして3名を除いたライオン傭兵団員が一堂に会して、だだっ広い部屋の中が、アジトの談話室のように賑わっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...