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初恋の予感編
episode264
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ベルトルド邸に来て、1週間くらい経った頃から、なんとなくそんな雰囲気が漂いだした。
メルヴィンに向けて、どこかはにかむ様な、可愛らしい態度を覗かせているのは感じられた。とくにここ数日は、傍から見ていてもよく判るくらいに。
信頼、喜び、そういった感情が、メルヴィンが傍にいるだけで、キュッリッキの表情から溢れ出していた。
ただ残念なことに、そういうことには鈍感なメルヴィンは、全く気づいていないようだったが。
メルヴィンに女なんかいない、という期待と、いたらどうしよう、という不安の両方を顔に貼り付けて、キュッリッキはルーファスをじっと見つめた。
くすぐったそうにルーファスは笑うと、小さく肩をすくめた。
「そーだなあ、オレは聞いたこともないし、女の影は全然感じられないなあ」
その言葉に、キュッリッキの目が期待に大きく見開かれる。
「ホント!?」
「うん。あの堅物のメルヴィンにカノジョがいたりしたら、すぐにバレバレだからね~。隠れて付き合えるほど、器用じゃないから」
ルーファスがにっこり笑うと、キュッリッキは肩の力を抜いた。そして安堵したように、口元をほころばせた。
(キューリちゃんは、メルヴィンに恋しちゃったのね)
ベルトルドとアルカネットが、何やら愛の告白のようなことを言ったという。でもキュッリッキからは2人に対して、そうした恋愛の雰囲気は一切感じられなかった。
父性愛丸出しなオッサンたちの押し付け愛よりも、優しくて不器用なメルヴィンに、キュッリッキは恋をしたのだ。
それはとても微笑ましいことだった。なにせライオン傭兵団の中には、そういう純粋な要素が微塵もなかったのだ。しかし同時に、今は遠くにいる親友を思うと、残念な気持ちにもなる。
はっきりと口にしていたわけじゃないが、キュッリッキに気があるのは判っている。彼は可愛い女の子が大好きだから。
そしてメルヴィンも、どことなくキュッリッキを意識し始めている。それが恋愛感情によるものなのかは不明だが。でもメルヴィンの気持ちが恋愛の方へ傾けば、親友は完全に失恋するだろう。可哀想だが、仕方ないよね~という気持ちだ。
しかし2人の想いが成就するには、特大の障壁が邪魔をするだろうな、とも思う。
ベルトルドとアルカネットの、キュッリッキに向ける愛情が尋常ではないことは、イヤでも判る。ただのお気に入りや気まぐれで、キュッリッキをかまっているようには見えない。かなり本気なんだろうなと判るくらいだ。
きっと、キュッリッキの想いなどお構いなしに、自分たちの愛で押さえつけてしまうだろう。
誰とどんな結末を迎えるのか判らないが、この不憫な少女が幸せになれるといいな、とルーファスは本気で願った。
大事な仲間であり、妹のような存在なのだ。味方をするなら、キュッリッキの味方になってあげたい。
やがて正午を告げる厳かな鐘の音が、静かな部屋の中に鳴り響いた。ハーメンリンナ全体に轟く鐘の音だ。
物思いにふけっていたルーファスは、鐘の音で意識を戻すと「そろそろかな」と呟いた。
「何が?」
その呟きにキュッリッキが反応すると、
「もうじき判るよ」
にっこりと言うルーファスの言葉に、ノックの音が続いた。
「失礼いたします。皆様いらっしゃいましたよ」
リトヴァが笑顔で告げると、大きく開かれた扉から、ガヤガヤと賑やかな集団が姿を現した。
メルヴィンに向けて、どこかはにかむ様な、可愛らしい態度を覗かせているのは感じられた。とくにここ数日は、傍から見ていてもよく判るくらいに。
信頼、喜び、そういった感情が、メルヴィンが傍にいるだけで、キュッリッキの表情から溢れ出していた。
ただ残念なことに、そういうことには鈍感なメルヴィンは、全く気づいていないようだったが。
メルヴィンに女なんかいない、という期待と、いたらどうしよう、という不安の両方を顔に貼り付けて、キュッリッキはルーファスをじっと見つめた。
くすぐったそうにルーファスは笑うと、小さく肩をすくめた。
「そーだなあ、オレは聞いたこともないし、女の影は全然感じられないなあ」
その言葉に、キュッリッキの目が期待に大きく見開かれる。
「ホント!?」
「うん。あの堅物のメルヴィンにカノジョがいたりしたら、すぐにバレバレだからね~。隠れて付き合えるほど、器用じゃないから」
ルーファスがにっこり笑うと、キュッリッキは肩の力を抜いた。そして安堵したように、口元をほころばせた。
(キューリちゃんは、メルヴィンに恋しちゃったのね)
ベルトルドとアルカネットが、何やら愛の告白のようなことを言ったという。でもキュッリッキからは2人に対して、そうした恋愛の雰囲気は一切感じられなかった。
父性愛丸出しなオッサンたちの押し付け愛よりも、優しくて不器用なメルヴィンに、キュッリッキは恋をしたのだ。
それはとても微笑ましいことだった。なにせライオン傭兵団の中には、そういう純粋な要素が微塵もなかったのだ。しかし同時に、今は遠くにいる親友を思うと、残念な気持ちにもなる。
はっきりと口にしていたわけじゃないが、キュッリッキに気があるのは判っている。彼は可愛い女の子が大好きだから。
そしてメルヴィンも、どことなくキュッリッキを意識し始めている。それが恋愛感情によるものなのかは不明だが。でもメルヴィンの気持ちが恋愛の方へ傾けば、親友は完全に失恋するだろう。可哀想だが、仕方ないよね~という気持ちだ。
しかし2人の想いが成就するには、特大の障壁が邪魔をするだろうな、とも思う。
ベルトルドとアルカネットの、キュッリッキに向ける愛情が尋常ではないことは、イヤでも判る。ただのお気に入りや気まぐれで、キュッリッキをかまっているようには見えない。かなり本気なんだろうなと判るくらいだ。
きっと、キュッリッキの想いなどお構いなしに、自分たちの愛で押さえつけてしまうだろう。
誰とどんな結末を迎えるのか判らないが、この不憫な少女が幸せになれるといいな、とルーファスは本気で願った。
大事な仲間であり、妹のような存在なのだ。味方をするなら、キュッリッキの味方になってあげたい。
やがて正午を告げる厳かな鐘の音が、静かな部屋の中に鳴り響いた。ハーメンリンナ全体に轟く鐘の音だ。
物思いにふけっていたルーファスは、鐘の音で意識を戻すと「そろそろかな」と呟いた。
「何が?」
その呟きにキュッリッキが反応すると、
「もうじき判るよ」
にっこりと言うルーファスの言葉に、ノックの音が続いた。
「失礼いたします。皆様いらっしゃいましたよ」
リトヴァが笑顔で告げると、大きく開かれた扉から、ガヤガヤと賑やかな集団が姿を現した。
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