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初恋の予感編
episode255
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ふと顔をあげて、街の風景を物珍しく眺める。
夏の空は真っ青で、白く柔らかな光を反射する城壁に照らされた街は、幻想的な淡い光に包まれている。温度管理もされているらしく、あまり蒸し暑くもなく、からりと乾いた過ごしやすい気温になっていた。
ゴンドラは病院へのルートをとっていたので、屋敷街のあたりは通らなかったが、行政や軍事施設のそばの通路を走っていたので、初めて見る立派な建物の数々に、キュッリッキは目を輝かせた。
「ファニーやハドリーにも、見せてあげたいなあ」
一緒に遊びに来よう、と誘って話していたのは、つい数週間前のことだ。
あの、ナルバ山の遺跡の中で。
そういえば、2人とも無事だろうか。怪我はしなかっただろうか。2人のことをこれまですっぽり忘れていたことに、白状な自分の神経に思わず凹む。
「2人共無事だったのかな…」
「怪我もなく大丈夫ですよ。カーティスさんたちと一緒に、イララクスまで戻ってきましたから」
キュッリッキの呟きを受けて、メルヴィンが答えた。
「よかったの…」
「そうだ、お見舞いにきてもらったらどうでしょうか?」
その提案に、キュッリッキの顔がパッと明るくなる。
「うん。ベルトルドさんに聞いてみる」
ゴンドラが病院前のターミナルに着くと、待っていたヴィヒトリが出迎えてくれた。
用意されていた車椅子にキュッリッキを座らせて、ヴィヒトリの案内でベルトルドの病室へ向かう。
「ちょっと今日はタイミング悪かったかも。閣下熱を出しちゃって、今眠ってるはずだよ」
「え!」
前を歩くヴィヒトリに顔を向けると、キュッリッキは車椅子から身を乗り出した。
「大丈夫なの? 酷いの??」
「リッキーさん危ないから、ちゃんと座って」
前のめりに倒れそうになって、ルーファスが慌てて支える。
「キューリちゃん、病院で怪我したら洒落にならないから、とにかく落ち着いて」
後ろの3人の様子に気づいて、ヴィヒトリは歩みを止めた。
ルーファスの腕にしがみついて、泣きそうな顔で見上げてくる。周りにいる病院のスタッフたちが、怪訝そうに4人を見ていた。
「疲れからくるものだから、心配ないよ。ただの過労だから」
ヴィヒトリはその場にしゃがみこむと、キュッリッキと目線を同じにする。
「運び込まれて数日遅れで発熱するとか、やっぱ中年になると、身体のテンポが遅くなるんだよね~。見てくれだけは若いから。なので、そんな泣きそうになるほどの心配事じゃないよ。判った?」
嫌味を交えてにこにこと言われ、さすがにキュッリッキの顔が引きつった。ルーファスとメルヴィンが、大笑いしたいのを必死で堪えている。
陰で散々言われ放題のベルトルドに、妙に同情心が掻き立てられてしまう。
嫌味はともかく、ヴィヒトリがそう言うのなら、たぶん大丈夫なのだろう。
夏の空は真っ青で、白く柔らかな光を反射する城壁に照らされた街は、幻想的な淡い光に包まれている。温度管理もされているらしく、あまり蒸し暑くもなく、からりと乾いた過ごしやすい気温になっていた。
ゴンドラは病院へのルートをとっていたので、屋敷街のあたりは通らなかったが、行政や軍事施設のそばの通路を走っていたので、初めて見る立派な建物の数々に、キュッリッキは目を輝かせた。
「ファニーやハドリーにも、見せてあげたいなあ」
一緒に遊びに来よう、と誘って話していたのは、つい数週間前のことだ。
あの、ナルバ山の遺跡の中で。
そういえば、2人とも無事だろうか。怪我はしなかっただろうか。2人のことをこれまですっぽり忘れていたことに、白状な自分の神経に思わず凹む。
「2人共無事だったのかな…」
「怪我もなく大丈夫ですよ。カーティスさんたちと一緒に、イララクスまで戻ってきましたから」
キュッリッキの呟きを受けて、メルヴィンが答えた。
「よかったの…」
「そうだ、お見舞いにきてもらったらどうでしょうか?」
その提案に、キュッリッキの顔がパッと明るくなる。
「うん。ベルトルドさんに聞いてみる」
ゴンドラが病院前のターミナルに着くと、待っていたヴィヒトリが出迎えてくれた。
用意されていた車椅子にキュッリッキを座らせて、ヴィヒトリの案内でベルトルドの病室へ向かう。
「ちょっと今日はタイミング悪かったかも。閣下熱を出しちゃって、今眠ってるはずだよ」
「え!」
前を歩くヴィヒトリに顔を向けると、キュッリッキは車椅子から身を乗り出した。
「大丈夫なの? 酷いの??」
「リッキーさん危ないから、ちゃんと座って」
前のめりに倒れそうになって、ルーファスが慌てて支える。
「キューリちゃん、病院で怪我したら洒落にならないから、とにかく落ち着いて」
後ろの3人の様子に気づいて、ヴィヒトリは歩みを止めた。
ルーファスの腕にしがみついて、泣きそうな顔で見上げてくる。周りにいる病院のスタッフたちが、怪訝そうに4人を見ていた。
「疲れからくるものだから、心配ないよ。ただの過労だから」
ヴィヒトリはその場にしゃがみこむと、キュッリッキと目線を同じにする。
「運び込まれて数日遅れで発熱するとか、やっぱ中年になると、身体のテンポが遅くなるんだよね~。見てくれだけは若いから。なので、そんな泣きそうになるほどの心配事じゃないよ。判った?」
嫌味を交えてにこにこと言われ、さすがにキュッリッキの顔が引きつった。ルーファスとメルヴィンが、大笑いしたいのを必死で堪えている。
陰で散々言われ放題のベルトルドに、妙に同情心が掻き立てられてしまう。
嫌味はともかく、ヴィヒトリがそう言うのなら、たぶん大丈夫なのだろう。
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