244 / 882
初恋の予感編
episode241
しおりを挟む
「戻りました」
食器を片付けに行っていたメルヴィンが戻ってきて、キュッリッキの心臓が一瞬ドクンッと跳ねた。
「お、おかえりなさいっ」
なんだか慌てた物言いと、妙に赤らんだ顔で出迎えられて、メルヴィンは小さく首をかしげる。
(び、びっくりしちゃったのっ)
「もっと、メルヴィンのこと知りたい」などと言っていたら当人が戻ってきたので、聞かれたんじゃないかと内心焦っていた。
「顔が赤いですよ。熱でもあるのかなあ」
メルヴィンはそう言いながら、キュッリッキの額に大きな掌をあてる。
「んー、ちょっと熱いけど、大丈夫ですか? 身体を起こしてるとまだまだ辛いのかな。横になりますか?」
顔を覗きこまれて、キュッリッキは首を横にブンブン振った。その拍子に傷口に響いて顔が歪む。
「だいじょうぶなの!」
モロ痛そうな顔で大丈夫と言われても、そう内心で思いながらも、メルヴィンは身体を起こして、ベッドの傍らの椅子に座る。
「横になりたい時は、すぐ言ってくださいね」
「うん、ありがとう」
キュッリッキは心の中で、大仰に溜息をついた。
(アタシ、何をそんなに慌ててるの…。ヘンなの)
チラリとメルヴィンを見ると、穏やかな表情で、新聞を広げて読んでいる。
この屋敷では、新聞はアルカネットが一番最初に読んで、それから執事代理のセヴェリが必要欄だけ目を通す。ベルトルドは「出仕したら大量の書類を読まねばならんのに、出仕前に細かい文字の羅列なんか読む気になれん!」と言って、全く読まない。それで、最近ではメルヴィンが新聞を借りてきて読んでいた。
背筋を伸ばし、長い脚を組んで新聞を読む姿が、素敵で格好良い。そんな風に思って、キュッリッキは更に顔を赤くした。
(ばっ、やっぱりアタシの頭の中、ヘンになっちゃったかもっ!)
今までドキドキしながら、誰かのことをこんなに意識するなんて、一度だってなかったのに。急に自分は、どうしてしまったんだろう。意味もなくジタバタしたい衝動に襲われた。
(ヘンっ! ヘンっ! ヘンなのっ!!)
キュッリッキは左手をギュッと握ると、ベッドをポスッと叩いた。
「ん? どうしました?」
新聞から顔を上げたメルヴィンと目が合ってしまい、キュッリッキは笑顔と焦りを同居させた奇妙な表情をした。
「ううううんっ、なんでもナイの!」
「そ、そうですか…」
挙動不審、という四文字熟語がメルヴィンの頭を過ぎったが、必死に否定してくるので小さく頷いた。深く追求したら、物が飛んできそうな雰囲気なのだ。
(女の子は、難しい生き物)
新聞の続きを読むために、メルヴィンはそう自己完結してしまった。
難しい生き物にされてしまったキュッリッキは、
(穴があったら、入りたいの…)
ジワジワと恥ずかしさがこみ上げてきて、ガックリとショートしてしまっていた。
食器を片付けに行っていたメルヴィンが戻ってきて、キュッリッキの心臓が一瞬ドクンッと跳ねた。
「お、おかえりなさいっ」
なんだか慌てた物言いと、妙に赤らんだ顔で出迎えられて、メルヴィンは小さく首をかしげる。
(び、びっくりしちゃったのっ)
「もっと、メルヴィンのこと知りたい」などと言っていたら当人が戻ってきたので、聞かれたんじゃないかと内心焦っていた。
「顔が赤いですよ。熱でもあるのかなあ」
メルヴィンはそう言いながら、キュッリッキの額に大きな掌をあてる。
「んー、ちょっと熱いけど、大丈夫ですか? 身体を起こしてるとまだまだ辛いのかな。横になりますか?」
顔を覗きこまれて、キュッリッキは首を横にブンブン振った。その拍子に傷口に響いて顔が歪む。
「だいじょうぶなの!」
モロ痛そうな顔で大丈夫と言われても、そう内心で思いながらも、メルヴィンは身体を起こして、ベッドの傍らの椅子に座る。
「横になりたい時は、すぐ言ってくださいね」
「うん、ありがとう」
キュッリッキは心の中で、大仰に溜息をついた。
(アタシ、何をそんなに慌ててるの…。ヘンなの)
チラリとメルヴィンを見ると、穏やかな表情で、新聞を広げて読んでいる。
この屋敷では、新聞はアルカネットが一番最初に読んで、それから執事代理のセヴェリが必要欄だけ目を通す。ベルトルドは「出仕したら大量の書類を読まねばならんのに、出仕前に細かい文字の羅列なんか読む気になれん!」と言って、全く読まない。それで、最近ではメルヴィンが新聞を借りてきて読んでいた。
背筋を伸ばし、長い脚を組んで新聞を読む姿が、素敵で格好良い。そんな風に思って、キュッリッキは更に顔を赤くした。
(ばっ、やっぱりアタシの頭の中、ヘンになっちゃったかもっ!)
今までドキドキしながら、誰かのことをこんなに意識するなんて、一度だってなかったのに。急に自分は、どうしてしまったんだろう。意味もなくジタバタしたい衝動に襲われた。
(ヘンっ! ヘンっ! ヘンなのっ!!)
キュッリッキは左手をギュッと握ると、ベッドをポスッと叩いた。
「ん? どうしました?」
新聞から顔を上げたメルヴィンと目が合ってしまい、キュッリッキは笑顔と焦りを同居させた奇妙な表情をした。
「ううううんっ、なんでもナイの!」
「そ、そうですか…」
挙動不審、という四文字熟語がメルヴィンの頭を過ぎったが、必死に否定してくるので小さく頷いた。深く追求したら、物が飛んできそうな雰囲気なのだ。
(女の子は、難しい生き物)
新聞の続きを読むために、メルヴィンはそう自己完結してしまった。
難しい生き物にされてしまったキュッリッキは、
(穴があったら、入りたいの…)
ジワジワと恥ずかしさがこみ上げてきて、ガックリとショートしてしまっていた。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!


転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

Fランクの光魔術師ですが、チートな魔剣士に覚醒しました。~あれ? この魔剣、勇者の聖剣より強くね?~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「ユーク、遠距離魔術を使えない君なんてもういらないよ」
光魔術師のユークはある日突然勇者パーティを追放される。
光魔術は全属性の中で最高の威力を持つが、ユークには遠距離魔術の才能がなかったのだ。
絶望するユークだったが、あるきっかけで魔剣を手に入れる。
そしてユークが魔剣に魔力を流した途端――ヴゥンッ、という音を立てて光の刃が出現した。
防御不能の最強魔剣、【光の魔剣(フォトンソード)】の誕生である。
「これなら俺も戦えるかもしれない」
ユークは光属性の魔剣を使い次々と手柄を上げていく。
ダンジョンをあっさりクリア。
街を襲う邪教徒たちも殲滅。
真の仲間も手に入れ、あっという間に成り上がっていく。
一方、ユークを失った勇者パーティには徐々に暗雲が立ち込める。
今までの輝かしい実績はユークがいたからこそだと気付き、ユークを連れ戻そうとするがもう遅い。
すでにユークは勇者よりもはるかに強くなっていたから。
これは遠距離魔術の才能はなく、代わりに魔剣士としては最強の少年が栄光を手にする物語。
ーーーーーー
ーーー
※毎日十二時更新です!(初日のみ鬼更新)
【宣伝!】
現在連載中の、
『厨二魔導士の無双が止まらないようです~「貴族じゃないから」と魔導学院を追放された少年、実は規格外の実力者~』
が書籍化されます!
こちらもよろしくお願いします~!

ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される
盛平
ファンタジー
晴れて召喚士になれたフィンは、美しい白猫の霊獣と契約する事ができた。その霊獣の対価は、一日に一回必ずアタシを綺麗って言うこと、だった。承諾して白猫と契約したフィンだったが、なんとその白猫は可愛い女の子になったのだ。フィンは、心に深い傷を負った魔法戦士バレットや、元同級生のリリーとその契約精霊と旅をしながら召喚士として成長していく。この主人公は様々な人や霊獣たちと出会って、ゆっくり成長していきます。肉体的にも精神的にも。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる