片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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記憶の残滓編

episode233

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「ンもー、ベルトルド様もアルカネットさんも、寝てるキューリちゃん起こさないでくださいよー、ったく」

 腕を組んで溜息混じりに言うルーファスを、ベルトルドとアルカネットは赤面で睨みつける。

「起こそうとして起こしたわけじゃないぞ!」

「ちょっと騒がしくしてしまっただけです!」

「言い訳とか、大人げないっすよ」

 ヤレヤレとルーファスは首をすくめた。

「貴様がエラソーに言うなっ、青二才め」

 ベルトルドにポカッとグーで殴られ、ルーファスは「八つ当たりだー」と抗議の声をあげた。

「ところで、どうしたんです? こんな夜更けに」

 ベッドに腰掛けて、キュッリッキの左手を優しく握っていたメルヴィンが、顔を上げて問いかける。

「リッキーに話すことがあっ…くおらあああああああっ!!」

「え?」

 ベルトルドはメルヴィンの手を、平手でバチンッと叩き、メルヴィンを押しのける。

「リッキーの手を握っていいのは俺だけだ!」

 押しのけられた拍子に床に尻餅をついて、メルヴィンは目をパチクリさせた。

(ムッ)

 ん? っとキュッリッキは不思議そうに眉間を寄せた。

(あれ、なんでムッとしたのアタシ?)

 メルヴィンの手がベルトルドに払いのけられた瞬間、心の中が『ムッ』としたのだ。何故そう思ったのだろと、キュッリッキは訳が判らず、ちょっと不機嫌そうに唇を尖らせた。なんだか心がモヤモヤして不愉快だ。

「ほらベルトルドさまー、ちゃんと理由話さないと、キューリちゃん怒ってますよ~?」

 ルーファスに指摘され、ベルトルドは慌ててキュッリッキに笑いかけた。

「すまんリッキー、嬉しいニュースがあって、早く報せたくてすっ飛んで帰ってきたんだがそのだな」

「家庭教師の先生を見つけましたよ。明日…もう今日ですか、お昼前くらいにリッキーさんと面談をするために、いらしていただくことになりましたよ」

「え、ホント!?」

「はい」

 キュッリッキの顔が、途端パッと明るく輝いた。それを笑顔で見つめるアルカネットの後ろで、ベルトルドが両拳を握り締め、ワナワナと全身を震わせながらアルカネットを睨みつけた。

「俺が言おうとしていたのに、お前なあああああああ」

 アルカネットは肩ごしに振り向き、フッと意地の悪い笑みをベルトルドに投げつけた。

「あなたこそ、私が到着する前に、勝手に話を進めていたではありませんか。お互い様です」

「ぐっ」

「家庭教師? ってなんっスかベルトルド様?」

 目を丸くするルーファスに問われ、ベルトルドはギンッとルーファスを睨んだ。

「リッキーの為に雇うことにしたんだっ!」

「は、はあ」

 それ以上訊いたら噛み付かれそうで、ルーファスはヘラリと笑った。

「もう部屋に下がれ、ルー、メルヴィン」

「そうしまっす。んじゃ、おやすみキューリちゃん」

 頷いてメルヴィンも立ち上がった。

「では、おやすみなさい、リッキーさん」

「おやすみ、ルーさん、メルヴィン」

 出て行くメルヴィンの後ろ姿を残念そうに見送り、キュッリッキは小さく息をついた。
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