片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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記憶の残滓編

episode221

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 キュッリッキは膝を抱えて、平らな地面に座っていた。周りは暗くて、でも自分の姿はハッキリと浮かんでいる。

 これは意識の中だ、とキュッリッキには判っている。時々、スコンッと陥る時があるのだ。

(また、やっちゃった…)

 過去のことを夢に見て、見境がつかなくなって、ベルトルドとアルカネットに酷い態度を取ってしまった。しかし2人は、もうこれからそのことを気に病まなくていい、どんどんぶつけろと言ってくれた。でも、そんな態度を取ってしまうと、後でこうして気分が塞いでしまうのだ。

(あれは、フェンリルと一緒に、初めて惑星ヒイシに来たばかりの頃のだったなあ…)

 顔を上げたキュッリッキの目の前で、ぼんやりと空間が滲み、そこに幼い頃のキュッリッキの姿を映す出す。



 修道院の建つ奇岩の上から突き落とされたキュッリッキは、間一髪フェンリルに助けられ、そのまま修道院を出て行った。

 行くあてなどないし、この先ずっと生きていかなくてはならない。生きる目的も目標もなかったが、死んでしまうのは嫌だった。

 アイオン族の治める惑星ペッコは、浮遊する大陸や島が多くあり、街や村などはほどんど浮遊島や浮遊大陸にある。地に根ざした土地は、畑や牧場などしかなく、飛べないキュッリッキには厳しい環境だ。

 そこでフェンリルは、キュッリッキを惑星ヒイシに連れてきた。ヴィプネン族が治める惑星だ。ここでなら、アイオン族だということを隠し、ヴィプネン族に紛れて生きていける。片翼で迫害を受けることはないのだ。

 迫害の心配はなくなったが、7歳の幼い少女が生きるには、厳しい環境であることに変わりはない。

 フェンリルはキュッリッキを施設にあずけることは、絶対にしなかった。アイオン族の修道院で、キュッリッキが受けていた差別や虐めの数々を見てきて、人間を信用できなくなっていたからだ。あんな目に遭うくらいなら、1人で生きていけばいい、そうフェンリルは譲らなかった。そしてフェンリルとキュッリッキは、惑星ヒイシを彷徨った。

 ちょっと賑やかな町にたどり着いたとき、キュッリッキはお腹がすき過ぎて、町の隅に座り込んでしまった。

「なにかたべたいの…」

 悲鳴を上げっぱなしのお腹を小さな手で押さえ、目に涙をいっぱい浮かべて、キュッリッキは肩を震わせた。

 神であるフェンリルには空腹などない。食事をすることがないので、キュッリッキの食の心配を一切していなかったのだ。フェンリルは慌てて食べ物を調達しに、町の中に飛び出していった。
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