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記憶の残滓編
episode214
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「お前ばっかり狡い!! 俺もリッキーとちゅーしたい!! リッキーの承諾はもらってるんだからいいじゃないか」
「やはり念話で迫ったんですね。イヤラシイったらないですよ、このおっさんは」
「声に出して言ったら、お前阻止するだろう!」
「当たり前です。そんなにキスがしたいなら、適当に女でも見繕ってきますよ。この屋敷のメイドたちなんて如何でしょう。アナタに秘めやかな恋心を向けているのですよ?」
「俺はリッキーとちゅーがしたいんだ! 他の女なぞいらんっ!!」
「私がそれを許すと思いますか? ああ、今日から私がリッキーさんと一緒に寝ることにします。アナタの毒牙から守ってあげなければ」
「俺が一緒に寝る! お前は自分の部屋で寝るがいい!!」
さっきまでの幸福に包まれた感動は、何処へ行ってしまったのか。溢れる涙に視界が曇るほどの喜びも、今は砂に吸い取られる水の勢いで乾いていっているキュッリッキだった。
自分よりもウンと年上の男性2人が、何故こうもキスをしたい、させないと喧嘩になるのか。そうしみじみ思いながら、2人の舌戦を見上げた。
――唇と唇でのキスは大事な人とするものなんだから、無闇に振りまいちゃダメだからね!
前にファニーにそう言われている。
確かにベルトルドもアルカネットも、キュッリッキにとって大事な人になった。しかしファニーの言っていた『大事な人』の意味とは、なんとなく違うような気がしている。そう、恋人とは全く違う大事な人、という感じだ。
(おとうさんが、2人も出来たみたいな感じ…)
親というものがどんな存在なのか、子供を捨てるもの、という以外知らないキュッリッキでも、ベルトルドとアルカネットは、父親のように感じていた。だから、キスをする間柄とは捉えにくい。
もしかして2人は、自分を娘のようには思っていないのだろうか? 違う意味での愛なのだろうか。恋愛経験が一切ないキュッリッキには、恋愛というものは理解の範疇外だった。
やがて考えることに疲れてキュッリッキが大きな溜息をつくと、それに気づいて2人はきゅっと黙り込んだ。
室内が異様に静まり返り、時計が時を刻む音だけが、カチリ、カチリと鳴り響く。
「――着替えて食事を済ませてきましょうか」
「風呂にも入らないとな」
2人は恐る恐るキュッリッキを見ると、複雑な色を浮かべた瞳とぶつかり、気まずそうに視線をあらぬ方向へ彷徨わせた。
「じゃ、じゃあ、後でなリッキー」
「先に休んでいて構いませんからね」
そう言いおいて、2人はそそくさと部屋を出て行った。
「やはり念話で迫ったんですね。イヤラシイったらないですよ、このおっさんは」
「声に出して言ったら、お前阻止するだろう!」
「当たり前です。そんなにキスがしたいなら、適当に女でも見繕ってきますよ。この屋敷のメイドたちなんて如何でしょう。アナタに秘めやかな恋心を向けているのですよ?」
「俺はリッキーとちゅーがしたいんだ! 他の女なぞいらんっ!!」
「私がそれを許すと思いますか? ああ、今日から私がリッキーさんと一緒に寝ることにします。アナタの毒牙から守ってあげなければ」
「俺が一緒に寝る! お前は自分の部屋で寝るがいい!!」
さっきまでの幸福に包まれた感動は、何処へ行ってしまったのか。溢れる涙に視界が曇るほどの喜びも、今は砂に吸い取られる水の勢いで乾いていっているキュッリッキだった。
自分よりもウンと年上の男性2人が、何故こうもキスをしたい、させないと喧嘩になるのか。そうしみじみ思いながら、2人の舌戦を見上げた。
――唇と唇でのキスは大事な人とするものなんだから、無闇に振りまいちゃダメだからね!
前にファニーにそう言われている。
確かにベルトルドもアルカネットも、キュッリッキにとって大事な人になった。しかしファニーの言っていた『大事な人』の意味とは、なんとなく違うような気がしている。そう、恋人とは全く違う大事な人、という感じだ。
(おとうさんが、2人も出来たみたいな感じ…)
親というものがどんな存在なのか、子供を捨てるもの、という以外知らないキュッリッキでも、ベルトルドとアルカネットは、父親のように感じていた。だから、キスをする間柄とは捉えにくい。
もしかして2人は、自分を娘のようには思っていないのだろうか? 違う意味での愛なのだろうか。恋愛経験が一切ないキュッリッキには、恋愛というものは理解の範疇外だった。
やがて考えることに疲れてキュッリッキが大きな溜息をつくと、それに気づいて2人はきゅっと黙り込んだ。
室内が異様に静まり返り、時計が時を刻む音だけが、カチリ、カチリと鳴り響く。
「――着替えて食事を済ませてきましょうか」
「風呂にも入らないとな」
2人は恐る恐るキュッリッキを見ると、複雑な色を浮かべた瞳とぶつかり、気まずそうに視線をあらぬ方向へ彷徨わせた。
「じゃ、じゃあ、後でなリッキー」
「先に休んでいて構いませんからね」
そう言いおいて、2人はそそくさと部屋を出て行った。
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