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記憶の残滓編
episode210
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切り裂かれるような痛みに感覚が麻痺してきて、キュッリッキは食いしばるように閉じていた目を開いた。
「ベルトルドさんも、アルカネットさんも、アタシを好きだって言った。でもそれは、アタシが召喚スキル〈才能〉を持っているからなんだ…」
「違います!!」
アルカネットは咄嗟に悲痛な叫びを上げた。
「違わないよ…。出来損ないのアタシを、誰も好きになんてならないもん。みんなが好きなのは、召喚スキル〈才能〉のことなんだから」
「なんてことを言うのです、リッキーさん!」
叱りながら今にも飛びつきそうアルカネットを、ベルトルドは素早く手で制した。
「リッキー」
やがて口を開いたベルトルドの声は、驚く程優しかった。
「アイオン族の都合は、俺には関係ない。俺は、リッキーが大好きだ」
「……それは、アタシが召喚スキル〈才能〉を持ってるからでしょ。ベルトルドさんが好きなのは、召喚スキル〈才能〉なんだよ」
キュッリッキは顔を背けたまま、突っ慳貪な口調で言った。
珍しいから。持っている人が極端に少ないスキル〈才能〉だから。だから、みんなキュッリッキのことではなく、召喚スキル〈才能〉を好きになるのだ。
キュッリッキを優しく見つめながら、ベルトルドは少しも気にした風もなく続ける。
「確かに最初に興味を示したのは、召喚スキル〈才能〉だったのは否定しない」
「ほらね、やっぱり」
どこか拗ねたように呟く。結局ベルトルドも、みんなと同じなのだ。
キュッリッキを見つめるベルトルドの顔に、苦笑が浮かんだ。キュッリッキが何を考えているのか、透視せずとも手に取るように判る。そんな表情を浮かべていた。
「誰だって、何かに興味をもって、相手を知ろうとする。それは当たり前だと、俺は思うぞ?」
きっかけは、ほんの些細なこと。相手が望む望まないに限らず、何かに興味を持ち、惹かれるのだ。
「召喚スキル〈才能〉を持っているリッキーと出会った。そして、俺はリッキーを知って、大好きになった。生憎俺は、スキル〈才能〉を好きになったりはしない。何故なら俺は、女が大好きだからな!」
「得意気に断言するのは、そこじゃないでしょう…」
自信満々のベルトルドに、アルカネットがぼそりとツッコむ。
「リッキーだって、誰かを好きになる前は、容姿だったり職業だったり、まずは知り得た部分から興味を持つだろう? いきなり初対面で相手の中身を知るのは難しい。付き合っていって、段々と相手の良さも悪さも知って、それで想いが深まっていく。そうだろう?」
「それは…」
「リッキーと出会うきっかけになったのは、召喚スキル〈才能〉だ。しかし召喚スキル〈才能〉だけが好きなら、俺はここまでしないぞ。リッキーという一人の女の子を知って、それでリッキーが大好きになったんだ。言葉でどう言い表せばいいか困るくらいに、リッキーが大好きで大好きでたまらんのだ」
頑なになるこの不幸な少女に、どうこの気持ちを伝えよう――。食いつきそうな勢いで目をキラキラさせながら、ベルトルドはズイッと身を乗り出した。言っているうちに感情が昂ぶり、想いが噴き出す寸前になっていた。
「ベルトルドさんも、アルカネットさんも、アタシを好きだって言った。でもそれは、アタシが召喚スキル〈才能〉を持っているからなんだ…」
「違います!!」
アルカネットは咄嗟に悲痛な叫びを上げた。
「違わないよ…。出来損ないのアタシを、誰も好きになんてならないもん。みんなが好きなのは、召喚スキル〈才能〉のことなんだから」
「なんてことを言うのです、リッキーさん!」
叱りながら今にも飛びつきそうアルカネットを、ベルトルドは素早く手で制した。
「リッキー」
やがて口を開いたベルトルドの声は、驚く程優しかった。
「アイオン族の都合は、俺には関係ない。俺は、リッキーが大好きだ」
「……それは、アタシが召喚スキル〈才能〉を持ってるからでしょ。ベルトルドさんが好きなのは、召喚スキル〈才能〉なんだよ」
キュッリッキは顔を背けたまま、突っ慳貪な口調で言った。
珍しいから。持っている人が極端に少ないスキル〈才能〉だから。だから、みんなキュッリッキのことではなく、召喚スキル〈才能〉を好きになるのだ。
キュッリッキを優しく見つめながら、ベルトルドは少しも気にした風もなく続ける。
「確かに最初に興味を示したのは、召喚スキル〈才能〉だったのは否定しない」
「ほらね、やっぱり」
どこか拗ねたように呟く。結局ベルトルドも、みんなと同じなのだ。
キュッリッキを見つめるベルトルドの顔に、苦笑が浮かんだ。キュッリッキが何を考えているのか、透視せずとも手に取るように判る。そんな表情を浮かべていた。
「誰だって、何かに興味をもって、相手を知ろうとする。それは当たり前だと、俺は思うぞ?」
きっかけは、ほんの些細なこと。相手が望む望まないに限らず、何かに興味を持ち、惹かれるのだ。
「召喚スキル〈才能〉を持っているリッキーと出会った。そして、俺はリッキーを知って、大好きになった。生憎俺は、スキル〈才能〉を好きになったりはしない。何故なら俺は、女が大好きだからな!」
「得意気に断言するのは、そこじゃないでしょう…」
自信満々のベルトルドに、アルカネットがぼそりとツッコむ。
「リッキーだって、誰かを好きになる前は、容姿だったり職業だったり、まずは知り得た部分から興味を持つだろう? いきなり初対面で相手の中身を知るのは難しい。付き合っていって、段々と相手の良さも悪さも知って、それで想いが深まっていく。そうだろう?」
「それは…」
「リッキーと出会うきっかけになったのは、召喚スキル〈才能〉だ。しかし召喚スキル〈才能〉だけが好きなら、俺はここまでしないぞ。リッキーという一人の女の子を知って、それでリッキーが大好きになったんだ。言葉でどう言い表せばいいか困るくらいに、リッキーが大好きで大好きでたまらんのだ」
頑なになるこの不幸な少女に、どうこの気持ちを伝えよう――。食いつきそうな勢いで目をキラキラさせながら、ベルトルドはズイッと身を乗り出した。言っているうちに感情が昂ぶり、想いが噴き出す寸前になっていた。
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