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記憶の残滓編
episode206
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キュッリッキの過去を調べ上げたのはアルカネットだったが、知り得ている情報と照らし合わせても、映像で見せられるとより辛い。胸が締め付けられるほど苦しくなり、アルカネットは荒く息を吐き出した。
「リッキーさんの苦しみは、こんなものではないのでしょうね…」
これまでどれほどの痛みを、心に受けていたのだろうと思うと、アルカネットはやりきれない思いでいっぱいになった。
「子供の時分にこれだけ辛酸な目にあっていれば、立ち直るのは難しいだろう。だが、このままだと、どこへ行っても居場所を失う」
「荒れ方からすると、ほとんど無意識に、感情が迸っているような感じでしたね」
「うん。そして正気に戻れば、深い後悔ばかりだ。自分で自分を傷つけている」
「ふむ」
深沈するように俯いたシ・アティウスを見ながら、ベルトルドは腕を組んで小さなため息をついた。
「あれでは遠からず、壊れてしまうだろう。もう限界が見えている。なんとかしてやりたい」
そこで、とベルトルドはデスクに座って脚を組む。
「俺に全部任せろ」
唐突に胸をバンッと叩き、どこから湧いてくるんだろうと思うような自信を顔に貼り付けて、ベルトルドは傲然と言い放った。
とてつもなく無表情なシ・アティウスと、胡乱げに目を眇めるアルカネットに見つめられ、ベルトルドは「なによ」と頬を引きつらせる。
たっぷりと間が空いたあと、アルカネットが深々としたため息をつく。
「偉そうに何を言うかと思えば…。それこそ過去女性問題で、私がどれほど尻拭いさせられたか、アナタ忘れてないでしょうね?」
「救うより遊んで捨てる方が得意なのだと、ずーっと思っていました」
「おまえらな…」
ベルトルドは腕を組んで、ふくれっ面のままそっぽを向いた。
「俺はリッキーに恋をしているんだ。愛している。本気でな」
「へー」
シ・アティウスが棒のような声でツッこむ。キリッと決めたところへ薄い反応が返され、ベルトルドの表情がガックリと歪んだ。
「へーとか言うな、へーとかっ! たいがい無礼だなお前は!」
「失礼、心の声がつい」
「ぐぎぎ」
ベルトルドは噛み付きそうな顔をシ・アティウスに向けたが、涼しくスルーされた。
2人の様子を呆れ顔で見つめながら、アルカネットはさてどうしたものかと思案し始めた。
幼い頃から傷つき続けているキュッリッキの心を救い、癒すためには、それ以上の優しさと愛がなければダメだ。
「負けませんよ…」
シ・アティウスに噛み付き続けるベルトルドの顔を、アルカネットは目を細めて睨みつけた。
「リッキーさんの苦しみは、こんなものではないのでしょうね…」
これまでどれほどの痛みを、心に受けていたのだろうと思うと、アルカネットはやりきれない思いでいっぱいになった。
「子供の時分にこれだけ辛酸な目にあっていれば、立ち直るのは難しいだろう。だが、このままだと、どこへ行っても居場所を失う」
「荒れ方からすると、ほとんど無意識に、感情が迸っているような感じでしたね」
「うん。そして正気に戻れば、深い後悔ばかりだ。自分で自分を傷つけている」
「ふむ」
深沈するように俯いたシ・アティウスを見ながら、ベルトルドは腕を組んで小さなため息をついた。
「あれでは遠からず、壊れてしまうだろう。もう限界が見えている。なんとかしてやりたい」
そこで、とベルトルドはデスクに座って脚を組む。
「俺に全部任せろ」
唐突に胸をバンッと叩き、どこから湧いてくるんだろうと思うような自信を顔に貼り付けて、ベルトルドは傲然と言い放った。
とてつもなく無表情なシ・アティウスと、胡乱げに目を眇めるアルカネットに見つめられ、ベルトルドは「なによ」と頬を引きつらせる。
たっぷりと間が空いたあと、アルカネットが深々としたため息をつく。
「偉そうに何を言うかと思えば…。それこそ過去女性問題で、私がどれほど尻拭いさせられたか、アナタ忘れてないでしょうね?」
「救うより遊んで捨てる方が得意なのだと、ずーっと思っていました」
「おまえらな…」
ベルトルドは腕を組んで、ふくれっ面のままそっぽを向いた。
「俺はリッキーに恋をしているんだ。愛している。本気でな」
「へー」
シ・アティウスが棒のような声でツッこむ。キリッと決めたところへ薄い反応が返され、ベルトルドの表情がガックリと歪んだ。
「へーとか言うな、へーとかっ! たいがい無礼だなお前は!」
「失礼、心の声がつい」
「ぐぎぎ」
ベルトルドは噛み付きそうな顔をシ・アティウスに向けたが、涼しくスルーされた。
2人の様子を呆れ顔で見つめながら、アルカネットはさてどうしたものかと思案し始めた。
幼い頃から傷つき続けているキュッリッキの心を救い、癒すためには、それ以上の優しさと愛がなければダメだ。
「負けませんよ…」
シ・アティウスに噛み付き続けるベルトルドの顔を、アルカネットは目を細めて睨みつけた。
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