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記憶の残滓編
episode191
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召喚スキル〈才能〉を持つ者が、フリーで傭兵をしていると聞きつけてきたのはアルカネットだった。
ベルトルドもアルカネットも、宮中で召喚スキル〈才能〉を持つ者たちを何度も見ているので、どうせその程度か、単に魔法使いが使い魔を呼び出しているところを目撃して、勘違いしたのだろう。そう思って取り合わなかった。
そもそも召喚士が傭兵をしていること自体が有り得ないことであり、前例はなかった。何故なら、スキル〈才能〉判定が行われて召喚スキル〈才能〉があると判明すれば、家族ごと国の保護下に置かれる。それは3種族共通のことだ。そうなると、一般の目に触れる機会などまずない。
しかし、凄い力を持っているという噂がなかり出回っているので、真偽の程をアルカネットに確かめさせた。すると、そのことは事実であり、興味を覚え徹底的に調査を命じた。
生まれ落ちてすぐ名前も与えられず、家族から捨てられた召喚スキル〈才能〉を持つ女児はアイオン族で、その名をキュッリッキといった。引き取り先の修道院で、名を与えられたらしい。
どんな理由が有るにせよ、子供を捨てた事実が公になっていれば、人道的にも問題視され、ハワドウレ皇国なら投獄されるほどの重い罪になる。それなのに、公になっているうえで、イルマタル帝国は親の蛮行を賛美し、アイオン族総出で親の蛮行を称えた。
アイオン族は美醜を非常に重んじる。ヴィプネン族やトゥーリ族からみれば、常軌を逸しているレベルだが、アイオン族にとっては重要なことだった。
キュッリッキは生まれつき、片方の翼がない。そのことで、両親に捨てられたのだ。そして両親は、隠さず公にした。そのため惑星ペッコに留まらず、他惑星に住むアイオン族にも伝わっていた。
惑星ペッコのアイオン族は、非道な行いをした両親を賞賛したが、他惑星のアイオン族は当然軽蔑した。かつての悪習が取り払われた今でも、惑星ペッコのアイオン族の心に、暗く深く根ざし続けていた結果だった。
差別や蔑みを受け続ける中でもっとも残酷だったのは、両親から捨てられた事実と理由を、キュッリッキが知っているということだ。
物心つく頃から、隠されることなく、周囲から言われ続けてきた。
それらの非道に、どれほど心を痛めたことだろう。
アルカネットからの報告書を読んで、ベルトルドは底の知れないほどの怒りを覚えた。それはアルカネットも同様だった。
これまで定住地を得られなかったのも、この過去のことが大きく影響していたのだろう。それは易易と想像出来ることだった。過去のことを思い出しただけで、この調子である。
自分の過去を打ち明ける相手もおらず、受け止められるだけの度量を持った相手にも出会えない。必死に生い立ちを隠して生きようとしても、些細なことで蒸し返して感情のコントロールがきかなくなれば、何も知らない周囲の人間たちには手の施しようもなく、離れていくだけだ。 そしてまた心に傷を作り、蓄積されていく。
この18年間ずっと、キュッリッキは救われずに生きてきたのだ。
「リッキー…」
ベルトルドは眠るキュッリッキの頬を、優しく撫でる。
初めて会った時の様子を思い出し、ベルトルドは痛いほど胸が締め付けられた。
緊張していた顔、戸惑っていた顔、額にキスをされて真っ赤になっていた顔、無邪気に笑っていた顔、興味津々の顔。そのどれもが愛らしく、愛おしく、ベルトルドの心を騒がせた。
美しい顔立ちもそうだが、純粋な笑顔に惚れた。
心に深い傷を持っていると知っても、23歳も年の離れたこの少女を、心から愛してしまったのだ。
ベルトルドもアルカネットも、宮中で召喚スキル〈才能〉を持つ者たちを何度も見ているので、どうせその程度か、単に魔法使いが使い魔を呼び出しているところを目撃して、勘違いしたのだろう。そう思って取り合わなかった。
そもそも召喚士が傭兵をしていること自体が有り得ないことであり、前例はなかった。何故なら、スキル〈才能〉判定が行われて召喚スキル〈才能〉があると判明すれば、家族ごと国の保護下に置かれる。それは3種族共通のことだ。そうなると、一般の目に触れる機会などまずない。
しかし、凄い力を持っているという噂がなかり出回っているので、真偽の程をアルカネットに確かめさせた。すると、そのことは事実であり、興味を覚え徹底的に調査を命じた。
生まれ落ちてすぐ名前も与えられず、家族から捨てられた召喚スキル〈才能〉を持つ女児はアイオン族で、その名をキュッリッキといった。引き取り先の修道院で、名を与えられたらしい。
どんな理由が有るにせよ、子供を捨てた事実が公になっていれば、人道的にも問題視され、ハワドウレ皇国なら投獄されるほどの重い罪になる。それなのに、公になっているうえで、イルマタル帝国は親の蛮行を賛美し、アイオン族総出で親の蛮行を称えた。
アイオン族は美醜を非常に重んじる。ヴィプネン族やトゥーリ族からみれば、常軌を逸しているレベルだが、アイオン族にとっては重要なことだった。
キュッリッキは生まれつき、片方の翼がない。そのことで、両親に捨てられたのだ。そして両親は、隠さず公にした。そのため惑星ペッコに留まらず、他惑星に住むアイオン族にも伝わっていた。
惑星ペッコのアイオン族は、非道な行いをした両親を賞賛したが、他惑星のアイオン族は当然軽蔑した。かつての悪習が取り払われた今でも、惑星ペッコのアイオン族の心に、暗く深く根ざし続けていた結果だった。
差別や蔑みを受け続ける中でもっとも残酷だったのは、両親から捨てられた事実と理由を、キュッリッキが知っているということだ。
物心つく頃から、隠されることなく、周囲から言われ続けてきた。
それらの非道に、どれほど心を痛めたことだろう。
アルカネットからの報告書を読んで、ベルトルドは底の知れないほどの怒りを覚えた。それはアルカネットも同様だった。
これまで定住地を得られなかったのも、この過去のことが大きく影響していたのだろう。それは易易と想像出来ることだった。過去のことを思い出しただけで、この調子である。
自分の過去を打ち明ける相手もおらず、受け止められるだけの度量を持った相手にも出会えない。必死に生い立ちを隠して生きようとしても、些細なことで蒸し返して感情のコントロールがきかなくなれば、何も知らない周囲の人間たちには手の施しようもなく、離れていくだけだ。 そしてまた心に傷を作り、蓄積されていく。
この18年間ずっと、キュッリッキは救われずに生きてきたのだ。
「リッキー…」
ベルトルドは眠るキュッリッキの頬を、優しく撫でる。
初めて会った時の様子を思い出し、ベルトルドは痛いほど胸が締め付けられた。
緊張していた顔、戸惑っていた顔、額にキスをされて真っ赤になっていた顔、無邪気に笑っていた顔、興味津々の顔。そのどれもが愛らしく、愛おしく、ベルトルドの心を騒がせた。
美しい顔立ちもそうだが、純粋な笑顔に惚れた。
心に深い傷を持っていると知っても、23歳も年の離れたこの少女を、心から愛してしまったのだ。
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