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混迷の遺跡編
episode178
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皇都イララクスのクーシネン街にあるエグザイル・システムに到着すると、エグザイル・システムの建物の中は、全て正規部隊の軍人だらけになっていた。
「お帰りなさいませ、閣下」
「ブルーベル将軍か、出迎えご苦労」
2mを超える巨躯で、白クマのトゥーリ族であるブルーベル将軍は、つぶらな瞳を細めてベルトルドに敬礼する。
「お嬢様のお加減が悪いようですが、転送の負荷の影響はなかったようですね」
「ああ。俺がついているからな」
「それはようございました」
キュッリッキを見つめ、ブルーベル将軍はホッとしたように肩の力を抜いた。転送の負荷があれば、今頃キュッリッキは血まみれで事切れているだろう。ベルトルドのサイ《超能力》によって守られていた証拠だ。
「このあと、ぞろぞろ同行者どもが飛んでくるが、医者2名はすぐに通してくれ。連れて行くから。一緒に飛べばよかったと、今言っていて思ったが…」
「承りました」
ベルトルドは出口に向かい、その後ろにルーファスとメルヴィンが続く。
建物の外では、馬車の傍らでリュリュが待っていた。
「お帰り、ベル」
「お前まで迎えに来てくれたのか」
「違うわよ。小娘の様子が心配で、ちょっと見に来ただけ。すぐ戻るわ」
「そっか」
リュリュはベルトルドの腕の中を覗き込む、
「辛そうね。早くベッドに寝かせてあげないと」
「ああ」
「あとで色々教えてちょうだいね。さ、行って」
「んっ」
あまり引き止めはせず、リュリュはベルトルドたちを馬車に促した。医師2人もすぐに合流する。
「ベルと医師2人はそっちの馬車、メルヴィンとルーはこっちの馬車に乗んなさい」
上等な馬車が2台並んでおり、先頭の馬車にベルトルドたちが乗り込む。それを確認して、リュリュは御者を促した。
ベルトルドたちの乗る馬車が走り出し、若干遅れてメルヴィンとルーファスを乗せた馬車も続いた。
2台の馬車が走り去って行くのを見送って、リュリュは乗ってきた馬車へと乗り込んだ。
「出してちょうだい」
御者に声をかけると、馬車はすぐに走り出す。
「あんなに細っそりとした身体で、さぞ痛かったでしょうね…。まあ、どんな体型でも性別でも年齢でも、痛いことには変わらないだろうけど」
たまにうっかりと紙で指を切ってしまうことがある。たいして深くもない傷だが、滲みるほど痛いのだ。たったそれだけの傷でも、大怪我したような気分になる。それを思うと、キュッリッキの負った怪我の大きさと痛みは計り知れない。
「ヴィヒトリが付いてるから怪我は完璧に治るだろうけど、心の傷までは、すぐには治らない。立ち直ってくれるといいんだけれど」
リュリュはある人物を思い浮かべていた。そして切なさを匂わせた笑みが、フッと口の端を過る。
「早く良くなってね、小娘」
白い雲が泳ぐ水色の空を見つめ、リュリュは祈るように呟いた。
「お帰りなさいませ、閣下」
「ブルーベル将軍か、出迎えご苦労」
2mを超える巨躯で、白クマのトゥーリ族であるブルーベル将軍は、つぶらな瞳を細めてベルトルドに敬礼する。
「お嬢様のお加減が悪いようですが、転送の負荷の影響はなかったようですね」
「ああ。俺がついているからな」
「それはようございました」
キュッリッキを見つめ、ブルーベル将軍はホッとしたように肩の力を抜いた。転送の負荷があれば、今頃キュッリッキは血まみれで事切れているだろう。ベルトルドのサイ《超能力》によって守られていた証拠だ。
「このあと、ぞろぞろ同行者どもが飛んでくるが、医者2名はすぐに通してくれ。連れて行くから。一緒に飛べばよかったと、今言っていて思ったが…」
「承りました」
ベルトルドは出口に向かい、その後ろにルーファスとメルヴィンが続く。
建物の外では、馬車の傍らでリュリュが待っていた。
「お帰り、ベル」
「お前まで迎えに来てくれたのか」
「違うわよ。小娘の様子が心配で、ちょっと見に来ただけ。すぐ戻るわ」
「そっか」
リュリュはベルトルドの腕の中を覗き込む、
「辛そうね。早くベッドに寝かせてあげないと」
「ああ」
「あとで色々教えてちょうだいね。さ、行って」
「んっ」
あまり引き止めはせず、リュリュはベルトルドたちを馬車に促した。医師2人もすぐに合流する。
「ベルと医師2人はそっちの馬車、メルヴィンとルーはこっちの馬車に乗んなさい」
上等な馬車が2台並んでおり、先頭の馬車にベルトルドたちが乗り込む。それを確認して、リュリュは御者を促した。
ベルトルドたちの乗る馬車が走り出し、若干遅れてメルヴィンとルーファスを乗せた馬車も続いた。
2台の馬車が走り去って行くのを見送って、リュリュは乗ってきた馬車へと乗り込んだ。
「出してちょうだい」
御者に声をかけると、馬車はすぐに走り出す。
「あんなに細っそりとした身体で、さぞ痛かったでしょうね…。まあ、どんな体型でも性別でも年齢でも、痛いことには変わらないだろうけど」
たまにうっかりと紙で指を切ってしまうことがある。たいして深くもない傷だが、滲みるほど痛いのだ。たったそれだけの傷でも、大怪我したような気分になる。それを思うと、キュッリッキの負った怪我の大きさと痛みは計り知れない。
「ヴィヒトリが付いてるから怪我は完璧に治るだろうけど、心の傷までは、すぐには治らない。立ち直ってくれるといいんだけれど」
リュリュはある人物を思い浮かべていた。そして切なさを匂わせた笑みが、フッと口の端を過る。
「早く良くなってね、小娘」
白い雲が泳ぐ水色の空を見つめ、リュリュは祈るように呟いた。
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