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混迷の遺跡編
episode171
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キュッリッキを乗せた担架は、ベルトルドのサイ《超能力》で操作され、振動も揺れもなく静かに浮いて進む。
担架の傍らで操作するベルトルドに、ケレヴィルの研究者たちが何事かを報告している。その後ろに若干の間を置いて医師2人とライオン傭兵団が続き、ハドリーとファニーが最後尾に続く。
漁港を目指し、御一行は徒歩で進んでいた。
ハドリーとファニーは、シ・アティウスから任を解かれていたが、キュッリッキが心配でライオン傭兵団と共にいた。そして彼らの起こした騒動で、アルイールのエグザイル・システムが抑えられ、更にはハワドウレ皇国の正規部隊までもが出動して、アルイールを制圧したという。
どうやって帰れば、と思案していたところに、カーティスから帰還同行の誘いがあって、ありがたく同行させてもらっている。
「リッキーも無事だし、あたしたちも帰れるし、ホント良かったよね」
「だなあ。安心して帰れる」
先頭のほうは見えないが、キュッリッキの傍らには副宰相ベルトルドがついている。
キュッリッキの大怪我を治すために、アルカネットと医師2人を手配してくれたのはベルトルドらしい。そして、エグザイル・システムが安全に使えるように、正規部隊を動かしたのもベルトルドだという。
召喚スキル〈才能〉という、レアなスキル〈才能〉を持っているとはいえ、キュッリッキは一介の傭兵にしか過ぎない。それなのに、あんな大物が動いてくれた。
「感謝しかないよな、色々と」
ハドリーの呟きに、ファニーも頷く。
「帰ったら新しい仕事見つけないとっ」
ファニーは握り拳を作って気合を入れる。
「もう仕事行くのかよ…」
「あったりまえでショ。中年になるまでにいっぱい貯金して、あとは引退して悠々自適生活するって目標、あるんだもんね」
「堅実な人生設計だなあ、相変わらず」
「だってさー、あたしらみたいな平々凡々な戦闘スキル〈才能〉じゃ、大金が転がり込むような仕事は縁遠いじゃない」
「だよなあ」
「有名どころに誘ってもらえることもないし、だったら、小口でもしっかりと働いて、貯金しないとね!」
「んだんだ」
ファニーの言う通りで、大多数の傭兵たちは、自分たちと同じような環境なのだ。
ライオン傭兵団のように、後ろ盾もしっかりとしたトップクラスの傭兵団は、稀な方なのである。仕事先で怪我を負ったからといって、ここまでしてくれるところなど、普通はないのだから。
(良いところに入れたな、リッキー。本当に良かった)
ほっこりとした気持ちでそう思ったところで、一行の進みが止まった。ハドリーは止まりそこねて、ガエルの背中にぶつかってしまった。
「すまん」
慌てて謝っていると、
「まどろっこしい!」
と、副宰相が突然前の方で叫びだした。
何事かと首をかしげていると、突然身体がふわりと宙に浮いた。
「あわわ、なになにこれ!?」
慌てるファニーに、
「これでラクに漁港まで行けるぜ」
ニヤリとギャリーが言った。
「オレら、ベルトルド様のサイ《超能力》で浮いてるんだよ。1時間の道程が、ギューンと短縮するよ~」
そうニッコリと、ルーファスがファニーに笑顔を向けた。
「へ?」
それと同時に、浮いた姿勢のまま、いきなり前方に加速した。
担架の傍らで操作するベルトルドに、ケレヴィルの研究者たちが何事かを報告している。その後ろに若干の間を置いて医師2人とライオン傭兵団が続き、ハドリーとファニーが最後尾に続く。
漁港を目指し、御一行は徒歩で進んでいた。
ハドリーとファニーは、シ・アティウスから任を解かれていたが、キュッリッキが心配でライオン傭兵団と共にいた。そして彼らの起こした騒動で、アルイールのエグザイル・システムが抑えられ、更にはハワドウレ皇国の正規部隊までもが出動して、アルイールを制圧したという。
どうやって帰れば、と思案していたところに、カーティスから帰還同行の誘いがあって、ありがたく同行させてもらっている。
「リッキーも無事だし、あたしたちも帰れるし、ホント良かったよね」
「だなあ。安心して帰れる」
先頭のほうは見えないが、キュッリッキの傍らには副宰相ベルトルドがついている。
キュッリッキの大怪我を治すために、アルカネットと医師2人を手配してくれたのはベルトルドらしい。そして、エグザイル・システムが安全に使えるように、正規部隊を動かしたのもベルトルドだという。
召喚スキル〈才能〉という、レアなスキル〈才能〉を持っているとはいえ、キュッリッキは一介の傭兵にしか過ぎない。それなのに、あんな大物が動いてくれた。
「感謝しかないよな、色々と」
ハドリーの呟きに、ファニーも頷く。
「帰ったら新しい仕事見つけないとっ」
ファニーは握り拳を作って気合を入れる。
「もう仕事行くのかよ…」
「あったりまえでショ。中年になるまでにいっぱい貯金して、あとは引退して悠々自適生活するって目標、あるんだもんね」
「堅実な人生設計だなあ、相変わらず」
「だってさー、あたしらみたいな平々凡々な戦闘スキル〈才能〉じゃ、大金が転がり込むような仕事は縁遠いじゃない」
「だよなあ」
「有名どころに誘ってもらえることもないし、だったら、小口でもしっかりと働いて、貯金しないとね!」
「んだんだ」
ファニーの言う通りで、大多数の傭兵たちは、自分たちと同じような環境なのだ。
ライオン傭兵団のように、後ろ盾もしっかりとしたトップクラスの傭兵団は、稀な方なのである。仕事先で怪我を負ったからといって、ここまでしてくれるところなど、普通はないのだから。
(良いところに入れたな、リッキー。本当に良かった)
ほっこりとした気持ちでそう思ったところで、一行の進みが止まった。ハドリーは止まりそこねて、ガエルの背中にぶつかってしまった。
「すまん」
慌てて謝っていると、
「まどろっこしい!」
と、副宰相が突然前の方で叫びだした。
何事かと首をかしげていると、突然身体がふわりと宙に浮いた。
「あわわ、なになにこれ!?」
慌てるファニーに、
「これでラクに漁港まで行けるぜ」
ニヤリとギャリーが言った。
「オレら、ベルトルド様のサイ《超能力》で浮いてるんだよ。1時間の道程が、ギューンと短縮するよ~」
そうニッコリと、ルーファスがファニーに笑顔を向けた。
「へ?」
それと同時に、浮いた姿勢のまま、いきなり前方に加速した。
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