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混迷の遺跡編
episode167
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怒っているベルトルドを気にもせず、どこまでも取り澄ましているシ・アティウスは淡々と答える。そしてアルカネットの言葉も、容赦と遠慮が全くない。
「こんな傲慢でエロいおっさんでも、一応スキル〈才能〉ランクだけ、は異様に高いですから」
「性格とスキル〈才能〉ランクは、比例しませんからね」
アルカネットとシ・アティウスに畳み掛けられて、ベルトルドは腕を組んで盛大にむくれた。何か言ってやりたいが、倍返しで戻ってくるので言いたくなく。
この2人の前では、肩書きや権威など、無に等しいようだ。
(あんな光景、二度と見られないかもしれない……)
メルヴィンはあまりにも貴重なものを見てしまったような気持ちになって、吹き出したいのを必死で堪えていた。ふくれっ面の副宰相など、そうそう拝めるものじゃない。
それはこの場に居合わせた全員が、同じ気持ちだった。
医師2人、ウリヤス、ベルトルド、アルカネットで慎重に検討した結果、出発は明日に見合わせることが決まった。熱が下がらないまま無理強いすれば、悪化する可能性が高い。キュッリッキの体力は低下する一方だし、帰還に耐えられないだろう。
そうしてウリヤス邸には、また1人客人が増えてしまった。
「患者で大賑わいするより、遥かにマシですよ」
そうウリヤスは笑った。マルヤーナも同じように笑いながら、新たな珍客を歓迎してくれた。
近くの宿もいっぱいで、ライオン傭兵団のメンバーと、ハドリーとファニーは、廊下でも床でも空いてるところで雑魚寝状態だ。気温が高いこともあり、風邪をひく心配だけはなさそうである。
いつ容態が急変しても即対応できるように、医師2人はキュッリッキの病室の外で待機が命じられた。ベルトルドとアルカネットはキュッリッキの病室に泊まることになり、ベッドを挟んで傍らに付き添った。
室内は暑苦しくないように、アルカネットの魔法によって、適温に冷やされている。そして、魔法で作り出した氷で冷やされた水にタオルを浸し、冷たいタオルをキュッリッキの額へそっとのせた。
「冷やしすぎやしないか?」
腕を組んで見ているベルトルドが、いつになく心配そうに呟く。
「大丈夫ですよ。身体に負担がかからない程度にしか、冷やしていませんから」
「そうか」
ホッとして、ベルトルドは座り直す。
「それにしても、この世にあんな醜悪な化物が存在していたとは、驚きだったな」
「ええ。一体アレは、なんなのです?」
「娯楽小説でいうなら、遺跡の番人、とでも言うんだろうかな」
今回の事件の詳細を知るために、ベルトルドはカーティスとルーファスの記憶を透視して、キュッリッキを傷つけた怪物の姿を知った。それをアルカネットにも共有している。
「しかも遺跡の内部も、思い切り変化していたらしいしな」
「仕掛けの存在を、シ・アティウスは気付かなかったのでしょうか?」
「恐らくは。そうした詳細を調べる矢先に、ソレル王国軍に乗り込まれたようだし。ただ、あの遺跡がなんであるかの見当はついているようだ」
「そうですか」
「いずれにしても、あとでお前とシ・アティウスで確認してきてもらう」
「任せてください」
「それとな」
ベルトルドは困ったように、アルカネットをチラリと見る。
「説教するのはいくらやっても構わんが、ザカリーにした私刑は、もう誰にもするな。知ればリッキーが悲しむだけだ」
やんわりと諭され、アルカネットは僅かに拗ねたように口を尖らせた。
「まあ、お前が先に爆発してくれたおかげで、俺が冷静になれたんだけどな…」
そう言ってベルトルドは苦笑し、肩をすくめた。
「こんな傲慢でエロいおっさんでも、一応スキル〈才能〉ランクだけ、は異様に高いですから」
「性格とスキル〈才能〉ランクは、比例しませんからね」
アルカネットとシ・アティウスに畳み掛けられて、ベルトルドは腕を組んで盛大にむくれた。何か言ってやりたいが、倍返しで戻ってくるので言いたくなく。
この2人の前では、肩書きや権威など、無に等しいようだ。
(あんな光景、二度と見られないかもしれない……)
メルヴィンはあまりにも貴重なものを見てしまったような気持ちになって、吹き出したいのを必死で堪えていた。ふくれっ面の副宰相など、そうそう拝めるものじゃない。
それはこの場に居合わせた全員が、同じ気持ちだった。
医師2人、ウリヤス、ベルトルド、アルカネットで慎重に検討した結果、出発は明日に見合わせることが決まった。熱が下がらないまま無理強いすれば、悪化する可能性が高い。キュッリッキの体力は低下する一方だし、帰還に耐えられないだろう。
そうしてウリヤス邸には、また1人客人が増えてしまった。
「患者で大賑わいするより、遥かにマシですよ」
そうウリヤスは笑った。マルヤーナも同じように笑いながら、新たな珍客を歓迎してくれた。
近くの宿もいっぱいで、ライオン傭兵団のメンバーと、ハドリーとファニーは、廊下でも床でも空いてるところで雑魚寝状態だ。気温が高いこともあり、風邪をひく心配だけはなさそうである。
いつ容態が急変しても即対応できるように、医師2人はキュッリッキの病室の外で待機が命じられた。ベルトルドとアルカネットはキュッリッキの病室に泊まることになり、ベッドを挟んで傍らに付き添った。
室内は暑苦しくないように、アルカネットの魔法によって、適温に冷やされている。そして、魔法で作り出した氷で冷やされた水にタオルを浸し、冷たいタオルをキュッリッキの額へそっとのせた。
「冷やしすぎやしないか?」
腕を組んで見ているベルトルドが、いつになく心配そうに呟く。
「大丈夫ですよ。身体に負担がかからない程度にしか、冷やしていませんから」
「そうか」
ホッとして、ベルトルドは座り直す。
「それにしても、この世にあんな醜悪な化物が存在していたとは、驚きだったな」
「ええ。一体アレは、なんなのです?」
「娯楽小説でいうなら、遺跡の番人、とでも言うんだろうかな」
今回の事件の詳細を知るために、ベルトルドはカーティスとルーファスの記憶を透視して、キュッリッキを傷つけた怪物の姿を知った。それをアルカネットにも共有している。
「しかも遺跡の内部も、思い切り変化していたらしいしな」
「仕掛けの存在を、シ・アティウスは気付かなかったのでしょうか?」
「恐らくは。そうした詳細を調べる矢先に、ソレル王国軍に乗り込まれたようだし。ただ、あの遺跡がなんであるかの見当はついているようだ」
「そうですか」
「いずれにしても、あとでお前とシ・アティウスで確認してきてもらう」
「任せてください」
「それとな」
ベルトルドは困ったように、アルカネットをチラリと見る。
「説教するのはいくらやっても構わんが、ザカリーにした私刑は、もう誰にもするな。知ればリッキーが悲しむだけだ」
やんわりと諭され、アルカネットは僅かに拗ねたように口を尖らせた。
「まあ、お前が先に爆発してくれたおかげで、俺が冷静になれたんだけどな…」
そう言ってベルトルドは苦笑し、肩をすくめた。
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