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混迷の遺跡編
episode163
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アルカネットから召集され、ザカリーを欠いたライオン傭兵団の全員が、キュッリッキの病室に集められた。この時初めてキュッリッキの無事な姿を見た面々もいる。包帯を巻かれた痛々しい姿に、皆沈痛な表情を浮かべていた。
キュッリッキは視線を巡らせ室内を見渡し、ザカリーが居ないことに強い不安を覚えて、傍らに座るアルカネットを見上げた。
「ザカリーがいないよ? もしかして、アルカネットさん」
殺意が剥き出しだった昨夜のアルカネットを思い出し、何もしないと言いながらも、ザカリーに何かしたのではないだろうか。それでこの場に居ないのだと、キュッリッキは不安でいっぱいになった。しかしそれに答えたのはギャリーだった。
「ザカリーの奴は、あの山の神殿で怪物とやりあった時に怪我したんだ。キューリよりも包帯でグルグル巻状態だしな。早く治れとベッドに縛り付けてあるだけだ、気にすんなって」
茶化すようなギャリーの言葉に、キュッリッキの顔が曇り出す。
「怪我……、酷いの?」
「ミイラ男になってっけど、大丈夫さ。もとが頑丈に出来てっからよ」
「ホント?」
「ああ」
にやりと笑うギャリーの顔を見て、キュッリッキは小さく頷いた。
もちろん嘘だ。訊かれたらこう答えようと、あらかじめみんなで口裏を合わせていたのだ。昨夜の病室での一件をカーティスとメルヴィンから聞かされた一同は、キュッリッキの不安をこれ以上煽らないほうがいいと考えたからだ。大怪我をした身体に、不安はマイナス効果にしかならない。
あまり信じていない様子だが、アルカネットへの不信が拭えないのだろう。これ以上追求することなく、キュッリッキは口をつぐんだ。
アルカネットはキュッリッキに優しく笑いかけ、一同に身体を向けて座り直した。
「ベルトルド様からの連絡で、本日昼には、こちらにいらっしゃるそうです」
皆表情は変わらず平静さを装っていたが、酷く残念そうな空気を、露骨に室内に漂わせた。もうこれ以上胃が痛くなる人はイラナイデス、と言わんばかりに。
「ベルトルド様が到着次第、リッキーさんをイララクスに連れて帰ります。その際、ザカリー、マーゴット、マリオンはここに残り、他は一緒に戻ります。それについては、後ほど詳細にお話します」
それと、と言ってアルカネットは、キュッリッキに顔を向ける。
「リッキーさんのお友達2人にも、帰還に同行してもらいましょうか。すでに仕事の任は解かれているそうですし、我々と一緒の方がアルイールのエグザイル・システムも使いやすいでしょうから」
「そうなんだ。うん、一緒がいい」
「カーティス、あとで伝えておいてください」
「判りました」
「私は別の用事があるので残ります。道中の指示はベルトルド様がするでしょうから、リッキーさんのことは、皆頼みますよ」
「え、アルカネットさん一緒に帰れないの?」
「ええ。仕事を押し付けられていますから、それが終わらないと帰れないのですよ」
肩をすくめ微笑むアルカネットの顔を、キュッリッキは残念そうに見上げた。
「でも仕事が済んだら、急いで帰りますからね」
「うん」
まるで親子のような微笑ましい光景だったが、昨夜のことがまだ一同の記憶に生々しく刻まれているだけに、何とも言えない気分に蝕まれていた。
「あっ」
「どうしました?」
「あのね、なんでベルトルドさんがくるの?」
キュッリッキは視線を巡らせ室内を見渡し、ザカリーが居ないことに強い不安を覚えて、傍らに座るアルカネットを見上げた。
「ザカリーがいないよ? もしかして、アルカネットさん」
殺意が剥き出しだった昨夜のアルカネットを思い出し、何もしないと言いながらも、ザカリーに何かしたのではないだろうか。それでこの場に居ないのだと、キュッリッキは不安でいっぱいになった。しかしそれに答えたのはギャリーだった。
「ザカリーの奴は、あの山の神殿で怪物とやりあった時に怪我したんだ。キューリよりも包帯でグルグル巻状態だしな。早く治れとベッドに縛り付けてあるだけだ、気にすんなって」
茶化すようなギャリーの言葉に、キュッリッキの顔が曇り出す。
「怪我……、酷いの?」
「ミイラ男になってっけど、大丈夫さ。もとが頑丈に出来てっからよ」
「ホント?」
「ああ」
にやりと笑うギャリーの顔を見て、キュッリッキは小さく頷いた。
もちろん嘘だ。訊かれたらこう答えようと、あらかじめみんなで口裏を合わせていたのだ。昨夜の病室での一件をカーティスとメルヴィンから聞かされた一同は、キュッリッキの不安をこれ以上煽らないほうがいいと考えたからだ。大怪我をした身体に、不安はマイナス効果にしかならない。
あまり信じていない様子だが、アルカネットへの不信が拭えないのだろう。これ以上追求することなく、キュッリッキは口をつぐんだ。
アルカネットはキュッリッキに優しく笑いかけ、一同に身体を向けて座り直した。
「ベルトルド様からの連絡で、本日昼には、こちらにいらっしゃるそうです」
皆表情は変わらず平静さを装っていたが、酷く残念そうな空気を、露骨に室内に漂わせた。もうこれ以上胃が痛くなる人はイラナイデス、と言わんばかりに。
「ベルトルド様が到着次第、リッキーさんをイララクスに連れて帰ります。その際、ザカリー、マーゴット、マリオンはここに残り、他は一緒に戻ります。それについては、後ほど詳細にお話します」
それと、と言ってアルカネットは、キュッリッキに顔を向ける。
「リッキーさんのお友達2人にも、帰還に同行してもらいましょうか。すでに仕事の任は解かれているそうですし、我々と一緒の方がアルイールのエグザイル・システムも使いやすいでしょうから」
「そうなんだ。うん、一緒がいい」
「カーティス、あとで伝えておいてください」
「判りました」
「私は別の用事があるので残ります。道中の指示はベルトルド様がするでしょうから、リッキーさんのことは、皆頼みますよ」
「え、アルカネットさん一緒に帰れないの?」
「ええ。仕事を押し付けられていますから、それが終わらないと帰れないのですよ」
肩をすくめ微笑むアルカネットの顔を、キュッリッキは残念そうに見上げた。
「でも仕事が済んだら、急いで帰りますからね」
「うん」
まるで親子のような微笑ましい光景だったが、昨夜のことがまだ一同の記憶に生々しく刻まれているだけに、何とも言えない気分に蝕まれていた。
「あっ」
「どうしました?」
「あのね、なんでベルトルドさんがくるの?」
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