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混迷の遺跡編
episode160
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「ぷはー…、めっちゃ怖かった…」
ハドリーは長い息を吐き出しながら、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「あたしも、一生分の勇気を奮い起こした気がするわ」
同じようにファニーも座り込んで、ハドリーにもたれかかる。
「お2人共、ありがとうございます」
ホッとしたような表情を浮かべたカーティスは、2人のほうを向いて頭を下げた。
「いや、本当のことを言っただけなんで」
ハドリーは苦笑を浮かべて肩をすくめた。キュッリッキのためにしたことだ。
「我々だけでは、止められなかった…」
まさか、あそこまでアルカネットが激怒するとは思っていなかった。確かにキュッリッキを気に入っている様子ではあったが、本気で好きになっているのだろうか。
美しい容姿の純粋な少女。レア中のレアである召喚スキル〈才能〉を持っているとは言え、キュッリッキへの入れ込みようには、首をかしげるものがある。
今回のことは、ザカリーとキュッリッキが喧嘩をして、偶然起こってしまった不幸な事故。当人たちだって、喧嘩をしただけで、こんな事態を引き起こすとは思ってもみなかっただろう。だから、キュッリッキはアルカネットを必死で止めていたのだ。
この先キュッリッキが、誰かと喧嘩をすることもあろうだろうし、危険な目に遭うかもしれない。怪我だってするかもだ。しかしその都度これでは、仲間たちはたまったものではないし、仲間に馴染もうと必死になっているキュッリッキを、傷つけることにもなってしまう。
リーダーとしては頭の痛いことだと、そうカーティスは天を仰いだ。
「おいカーティス、宿の医者に縫ってもらっちゃダメか? これはウリヤスさん一人じゃ縫う箇所多すぎてよ」
肩に担いだザカリーを、ギャリーは指さした。
「急患だからと言えば、縫合してもらえるんじゃないですかねえ。――ヴァルト」
「ぬ?」
蹲踞していたヴァルトは、呼ばれて顔を上げる。
「宿までひとっ走りして、ヴィヒトリを呼んできてください。ザカリーの縫合を頼みたいので」
「おう、マカセトケ!」
元気よく跳ねて立ち上がると、ヴァルトは宿を目指して走り出した。そして、ダッシュで戻ってくる。
「なあ、宿どこだ?」
「バカかおめーは!!」
思わずギャリーがツッコミ怒鳴る。
「初めてきた町だぞ、知ってるほーがオカシーだろ!」
確かにその通りではある。なら、走り出す前に確認して行けと、そうカーティスはひっそり呟いた。
「オレ知ってますよ、案内します」
見かねてハドリーが声をかけた。
「おう! 頼むぞヒゲにーちゃん!」
両腕を広げて喜ぶヴァルトに、ハドリーは薄く笑った。
「なんだかお世話になりっぱなしで、本当にありがとうございます」
「い、いえ」
カーティスに恐縮気味にお礼を言われ、ハドリーは更に薄く笑った。
ヴァルトとハドリーが、連れたって宿へ向かう後ろ姿を見送り、カーティスは立ち上がる。
「さて、手の空いてるひとは、この辺を片付けましょう。ハリケーンが襲ってきたような有様で、ご町内に申し訳ないですから」
カーティスが周囲を手で示すと、病院前から数メートル付近が、ゴミ捨て場のように変わり果てていた。アルカネットがしでかしたとはいえ、自分たちにも原因はあるし、町にしてみたら迷惑をかけられたに過ぎない。
「片付けが終わったら、パブに行って、何か食べてきましょうか」
ハドリーは長い息を吐き出しながら、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「あたしも、一生分の勇気を奮い起こした気がするわ」
同じようにファニーも座り込んで、ハドリーにもたれかかる。
「お2人共、ありがとうございます」
ホッとしたような表情を浮かべたカーティスは、2人のほうを向いて頭を下げた。
「いや、本当のことを言っただけなんで」
ハドリーは苦笑を浮かべて肩をすくめた。キュッリッキのためにしたことだ。
「我々だけでは、止められなかった…」
まさか、あそこまでアルカネットが激怒するとは思っていなかった。確かにキュッリッキを気に入っている様子ではあったが、本気で好きになっているのだろうか。
美しい容姿の純粋な少女。レア中のレアである召喚スキル〈才能〉を持っているとは言え、キュッリッキへの入れ込みようには、首をかしげるものがある。
今回のことは、ザカリーとキュッリッキが喧嘩をして、偶然起こってしまった不幸な事故。当人たちだって、喧嘩をしただけで、こんな事態を引き起こすとは思ってもみなかっただろう。だから、キュッリッキはアルカネットを必死で止めていたのだ。
この先キュッリッキが、誰かと喧嘩をすることもあろうだろうし、危険な目に遭うかもしれない。怪我だってするかもだ。しかしその都度これでは、仲間たちはたまったものではないし、仲間に馴染もうと必死になっているキュッリッキを、傷つけることにもなってしまう。
リーダーとしては頭の痛いことだと、そうカーティスは天を仰いだ。
「おいカーティス、宿の医者に縫ってもらっちゃダメか? これはウリヤスさん一人じゃ縫う箇所多すぎてよ」
肩に担いだザカリーを、ギャリーは指さした。
「急患だからと言えば、縫合してもらえるんじゃないですかねえ。――ヴァルト」
「ぬ?」
蹲踞していたヴァルトは、呼ばれて顔を上げる。
「宿までひとっ走りして、ヴィヒトリを呼んできてください。ザカリーの縫合を頼みたいので」
「おう、マカセトケ!」
元気よく跳ねて立ち上がると、ヴァルトは宿を目指して走り出した。そして、ダッシュで戻ってくる。
「なあ、宿どこだ?」
「バカかおめーは!!」
思わずギャリーがツッコミ怒鳴る。
「初めてきた町だぞ、知ってるほーがオカシーだろ!」
確かにその通りではある。なら、走り出す前に確認して行けと、そうカーティスはひっそり呟いた。
「オレ知ってますよ、案内します」
見かねてハドリーが声をかけた。
「おう! 頼むぞヒゲにーちゃん!」
両腕を広げて喜ぶヴァルトに、ハドリーは薄く笑った。
「なんだかお世話になりっぱなしで、本当にありがとうございます」
「い、いえ」
カーティスに恐縮気味にお礼を言われ、ハドリーは更に薄く笑った。
ヴァルトとハドリーが、連れたって宿へ向かう後ろ姿を見送り、カーティスは立ち上がる。
「さて、手の空いてるひとは、この辺を片付けましょう。ハリケーンが襲ってきたような有様で、ご町内に申し訳ないですから」
カーティスが周囲を手で示すと、病院前から数メートル付近が、ゴミ捨て場のように変わり果てていた。アルカネットがしでかしたとはいえ、自分たちにも原因はあるし、町にしてみたら迷惑をかけられたに過ぎない。
「片付けが終わったら、パブに行って、何か食べてきましょうか」
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