154 / 882
混迷の遺跡編
episode151
しおりを挟む
アルカネットと医師2人がソレル王国のエグザイル・システムに到着すると、いきなり銃口が多数突きつけられた。エグザイル・システムの周りは、2個小隊ほどのソレル王国兵たちに取り囲まれている。
エグザイル・システムは、飛ぶときは台座の上に乗っていくが、飛んだ先では台座の下に到着する。その為台座の下には、多勢が飛んできてもいいように、開けた場所が必ず設置されていた。
ひな壇になっている中段に、台座が置かれている。そこから辺りを睥睨し、口ぶりだけはいつもと変わらず、アルカネットは穏やかに言った。
「なんの真似でしょうか?」
しかしそれに応える者は誰もおらず、ピリピリとした緊張だけがこの場を支配している。誰何する声もなく、銃口と剣先が向けられ、明らかに敵意ある魔力の高まりも感じられた。
ハワドウレ皇国のエグザイル・システムのある建物ほどではないが、ソレル王国首都アルイールのエグザイル・システムの建物も立派である。遺跡観光を看板に掲げる国らしく、遺跡をモチーフとした美術的デザインが美しい。それを物珍しげに眺め渡し、ヴィヒトリは小さく欠伸をした。
「連続オペで、ボク疲れてるんだよね。さっさと行きましょうよ、アルカネットさん」
「ええ、そうですね」
淡々と言いながらも、僅かにアルカネットの声音には苛立ちが含まれていた。それを敏感に感じ取って、背後に控えていたドグラスは、恐々と身を強ばらせた。
アルカネットは一歩前に踏み出すと、いきなり両手をバッと広げた。
「イスベル・ヴリズン」
一言魔法名を言い放つ。すると、アルカネットの両手掌から、氷柱のようなものが無数に飛び出し、エグザイル・システムを取り囲むソレル王国兵たちに突き刺さっていった。
「うひゃ…」
ヴィヒトリは首をすくめて小さく悲鳴をあげる。辺は一瞬で騒然とし、氷柱攻撃を免れた兵士たちが発砲した。しかし、
「トイコス・トゥルバ!」
エグザイル・システムのひな壇の周りに、突如土の壁が床からせり上がり、銃弾を全て防いでしまった。
(凄いなあ…、これが噂に聞く、アルカネットさんしかできないっていう無詠唱魔法ってやつか)
魔法スキル〈才能〉を持つ者は、体内に魔力を内包している。使う魔法の属性魔力を引き出し、魔法の形に作り上げるために呪文が必要になる。そして作り上げたその魔法を放つ時に魔法名を言う。
人によって魔法を作り上げるスピードは異なるが、アルカネットの場合、魔法を作り上げるための呪文が必要ない。一瞬で必要な魔法の属性魔力を引き出して、完成させてしまうのだ。俗に言う無詠唱魔法である。
アルカネットもまた、ベルトルドと同じように、Overランクを持つ魔法使いだ。神を引っ張り出さないと、倒すことができないとまで言われている。
ソレル王国内は、現在超厳戒態勢が敷かれている。軍施設がライオン傭兵団の襲撃を受けて、ケレヴィルの研究者たちが攫われてしまったからだ。その為、とくにエグザイル・システムは国外脱出手段の一つになるため、犯人たちやその仲間が出入りしないよう、兵士たちが厳重に配備されていた。
誰が飛んでくるか判らないため、エグザイル・システムから誰かが飛んでくるたびに、兵士たちは銃口を向けて脅していた。それが、両手を上げるわけでもなく、いきなり魔法で攻撃してくるので慌ててしまっていた。
アルカネットは素早く、3人の周りに防御魔法を張り巡らせる。そしてパチリと指を鳴らすと、3人の身体がひな壇から浮き上がった。
アルカネットを先頭に、ゆっくりとひな壇の階段を滑り降りると、出口に向けて加速した。
不意をつかれたソレル王国兵たちは一瞬出遅れたが、すぐさま発砲し、魔法攻撃が3人目掛けて迫る。しかし攻撃は掠りもせず、建物を抜けた3人の身体は、そのまま外に躍り出た。
エグザイル・システムは、飛ぶときは台座の上に乗っていくが、飛んだ先では台座の下に到着する。その為台座の下には、多勢が飛んできてもいいように、開けた場所が必ず設置されていた。
ひな壇になっている中段に、台座が置かれている。そこから辺りを睥睨し、口ぶりだけはいつもと変わらず、アルカネットは穏やかに言った。
「なんの真似でしょうか?」
しかしそれに応える者は誰もおらず、ピリピリとした緊張だけがこの場を支配している。誰何する声もなく、銃口と剣先が向けられ、明らかに敵意ある魔力の高まりも感じられた。
ハワドウレ皇国のエグザイル・システムのある建物ほどではないが、ソレル王国首都アルイールのエグザイル・システムの建物も立派である。遺跡観光を看板に掲げる国らしく、遺跡をモチーフとした美術的デザインが美しい。それを物珍しげに眺め渡し、ヴィヒトリは小さく欠伸をした。
「連続オペで、ボク疲れてるんだよね。さっさと行きましょうよ、アルカネットさん」
「ええ、そうですね」
淡々と言いながらも、僅かにアルカネットの声音には苛立ちが含まれていた。それを敏感に感じ取って、背後に控えていたドグラスは、恐々と身を強ばらせた。
アルカネットは一歩前に踏み出すと、いきなり両手をバッと広げた。
「イスベル・ヴリズン」
一言魔法名を言い放つ。すると、アルカネットの両手掌から、氷柱のようなものが無数に飛び出し、エグザイル・システムを取り囲むソレル王国兵たちに突き刺さっていった。
「うひゃ…」
ヴィヒトリは首をすくめて小さく悲鳴をあげる。辺は一瞬で騒然とし、氷柱攻撃を免れた兵士たちが発砲した。しかし、
「トイコス・トゥルバ!」
エグザイル・システムのひな壇の周りに、突如土の壁が床からせり上がり、銃弾を全て防いでしまった。
(凄いなあ…、これが噂に聞く、アルカネットさんしかできないっていう無詠唱魔法ってやつか)
魔法スキル〈才能〉を持つ者は、体内に魔力を内包している。使う魔法の属性魔力を引き出し、魔法の形に作り上げるために呪文が必要になる。そして作り上げたその魔法を放つ時に魔法名を言う。
人によって魔法を作り上げるスピードは異なるが、アルカネットの場合、魔法を作り上げるための呪文が必要ない。一瞬で必要な魔法の属性魔力を引き出して、完成させてしまうのだ。俗に言う無詠唱魔法である。
アルカネットもまた、ベルトルドと同じように、Overランクを持つ魔法使いだ。神を引っ張り出さないと、倒すことができないとまで言われている。
ソレル王国内は、現在超厳戒態勢が敷かれている。軍施設がライオン傭兵団の襲撃を受けて、ケレヴィルの研究者たちが攫われてしまったからだ。その為、とくにエグザイル・システムは国外脱出手段の一つになるため、犯人たちやその仲間が出入りしないよう、兵士たちが厳重に配備されていた。
誰が飛んでくるか判らないため、エグザイル・システムから誰かが飛んでくるたびに、兵士たちは銃口を向けて脅していた。それが、両手を上げるわけでもなく、いきなり魔法で攻撃してくるので慌ててしまっていた。
アルカネットは素早く、3人の周りに防御魔法を張り巡らせる。そしてパチリと指を鳴らすと、3人の身体がひな壇から浮き上がった。
アルカネットを先頭に、ゆっくりとひな壇の階段を滑り降りると、出口に向けて加速した。
不意をつかれたソレル王国兵たちは一瞬出遅れたが、すぐさま発砲し、魔法攻撃が3人目掛けて迫る。しかし攻撃は掠りもせず、建物を抜けた3人の身体は、そのまま外に躍り出た。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。


覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる