片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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混迷の遺跡編

episode148

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 マリオンの念話の誘導で、町に散らばっていた脳筋組みも、病院に合流した。

 静かな町の小さな病院内には、幸い誰も入院患者はおらず、いきなりやってきた大勢で賑わっても大丈夫だった。

 キュッリッキの容態は相変わらずだが、医者のもとへ運べた安堵感から、みんなの張り詰めていた緊張の糸が、ぷっつり切れたようだ。

 ヴァルトはマルヤーナを見るなり「風呂入りたい!」と子供のように駄々をこね、住宅と兼用になっている院内をドタバタ走り回って、風呂に駆け込んだ。

 ギャリーとタルコットも、返り血が臭うのに飽き飽きし、一緒に狭い風呂場に押しかけて大騒動だった。

「この狭すぎる空間で翼を広げるな翼を!!」

「お前らが勝手に入り込んできただけじゃないか! とっとと出てけよ!!」

「血を落とさせてくれ…臭いんだ」

 風呂場からギャースカ聞こえてくる賑やかな声に、マルヤーナは面白そうにクスクスと笑い、濡れタオルをみんなに配って歩いていた。

 タオルを受け取り、カーティスが申し訳なさそうに頭を下げる。

「本当にすみません。騒々しい連中で…」

「いいのよ。傭兵さんたちは大変ね」

「ははは…」

 穴があったら入りたい、という気持ちでいっぱいになった。

「あ、ところで、たぶん早朝か朝くらいに、数名追加でお邪魔することになると思います」

「お医者様が向かってらっしゃるんでしたわね。主人から伺ってますわ」

「はい。我々も少し休ませていただいたら、数名残して出ますので。通常営業のお邪魔はしません」

「あら、そんなことは気にしなくていいのよ。穏やかな町ですから、忙しくないの」

「すみません」

 恐縮しっぱなしのカーティスに、マルヤーナは柔らかく微笑んだ。

「細かいサービスはしてあげられないけど、ゆっくり休んでくださいね」

「いえ、ありがとうございます」



 ランドンとシビルは、キュッリッキに付き添い処置室に残っていた。

「僕が回復魔法を続けているよ」

「大丈夫? ランドン」

「これしか取り柄がないから。シビルは今のうちに身体休めてて。あとで交替頼む」

「おっけー。んじゃ、頑張って」

「うん」

 ベッドに横たわるキュッリッキの傍らに座り、ランドンは魔法をかけ続けた。

 ずっと魔法を使い続けるのは、相当の精神力と魔力を消耗する。しかしシビルもカーティスも救出作戦ですでに相当消耗していた。少し休まないと手元が狂いそうだったので、シビルはランドンに全て任せることにした。

 サイ《超能力》を使いっぱなしだったルーファスも、キュッリッキをベッドに寝かせた直後ぶっ倒れてしまった。サイ《超能力》は精神力だけが全てなので、より慎重を期すためにコントロールを強いられ、その前にも念話や戦闘などもこなしていたので、倒れてもしょうがなかった。遠距離念話ほど疲れるものはない、と常々言っているくらいだ。

 一通り大騒ぎが収まると、みんな泥のように眠りに就いた。ヴァルトは元気に起きていて、濡れた頭をマルヤーナに拭いてもらっていたが、ホットミルクをもらって一気に飲み干すと、身体を丸めてすぐに眠ってしまった。

「まあまあ、子供みたいね」

 あまりにも無防備に眠るヴァルトを見て、マルヤーナはくすりと笑った。
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