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混迷の遺跡編
episode146
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街灯も道路もない真っ暗な場所を、魔法で作り出された灯りを頼りに、ブルニタルの完璧なナビゲーションで、皆迷わずイソラの町まで到着した。
「さすがブルニタル」
ゲッソリとギャリーが褒めると、
「このくらいしか役に立ちませんしね」
そう疲れた顔でブルニタルは応じた。
「後方支援も大事な役割ですよ」
カーティスはホッとしたように言って振り向いた。
「さて、こっからはお医者様探しです。元気の有り余ってる脳筋組みの皆さん、早速散って探してきてください」
パンパンッと掌を打ち、カーティスが顎をしゃくる。
「ヘイヘイ」
ギャリーたちはすぐさま町内に散っていった。
「あたしたちも探しに行こう」
「そうだな」
ファニーとハドリーも医者探しに加わった。
2時間ほどの遠足を満喫させられ、魔法使い組みはキュッリッキの生命維持に魔力を全力消費し、ルーファスはキュッリッキを運ぶために集中していて、暇なのは脳筋組みくらいである。
ケレヴィルの研究者たちはシ・アティウスを除いて、疲れきった顔で座り込んでいた。拘禁されていた精神的疲労もあるだろうし、いきなりの遠足だ。シ・アティウスは静かに、キュッリッキを見つめている。
大して広くもない町なので、程なくしてすぐに病院が見つかった。見つけてきたのはヴァルトだ。
「たのもーー!! 死にかけのジョシが1人いるから開けろー!!」
すでに灯の落ちている建物のドアを、ドンドンドンドンッと破壊する勢いでヴァルトは叩く。木製の古びたドアは、力を持て余しているヴァルトの拳に叩き割られる寸前で開かれた。
何事かとドアを開けた中年の女性は、ガウンの襟元を掻き合せると、やたらと背の高いヴァルトを見上げてギョッと目を剥いた。なにせ、怪物の内蔵や血糊をべったりとその身にかぶっていて、乾いた今は赤黒く変色して異様な姿だったからだ。
性格とは真逆の美しすぎる顔立ちが、より残酷な姿を耽美化していたが、口を開くと全て台無しにしてしまう男である。
「おばちゃん、早く仲間を診てくれ!!」
「急患かい?」
「うん。かなりヤバイんだ。タブンあともうちょっとで死んじゃうから早くして!」
ヴァルトは両手を腰に当てると、仁王立ちになって中年の女性を見おろした。この言葉をキュッリッキが聞いたら「勝手に殺すなあ!」と文句を飛ばしそうだ。
何やらと思ったが、ヴァルトの様子からして重症人がいるのだろう。中年の女性はすぐさまドアを全開にした。
「早く運んでおいで。主人を起こしてくるから」
ヴァルトは「うん!」と元気よく返事をすると、回れ右して全力で走っていった。
「さすがブルニタル」
ゲッソリとギャリーが褒めると、
「このくらいしか役に立ちませんしね」
そう疲れた顔でブルニタルは応じた。
「後方支援も大事な役割ですよ」
カーティスはホッとしたように言って振り向いた。
「さて、こっからはお医者様探しです。元気の有り余ってる脳筋組みの皆さん、早速散って探してきてください」
パンパンッと掌を打ち、カーティスが顎をしゃくる。
「ヘイヘイ」
ギャリーたちはすぐさま町内に散っていった。
「あたしたちも探しに行こう」
「そうだな」
ファニーとハドリーも医者探しに加わった。
2時間ほどの遠足を満喫させられ、魔法使い組みはキュッリッキの生命維持に魔力を全力消費し、ルーファスはキュッリッキを運ぶために集中していて、暇なのは脳筋組みくらいである。
ケレヴィルの研究者たちはシ・アティウスを除いて、疲れきった顔で座り込んでいた。拘禁されていた精神的疲労もあるだろうし、いきなりの遠足だ。シ・アティウスは静かに、キュッリッキを見つめている。
大して広くもない町なので、程なくしてすぐに病院が見つかった。見つけてきたのはヴァルトだ。
「たのもーー!! 死にかけのジョシが1人いるから開けろー!!」
すでに灯の落ちている建物のドアを、ドンドンドンドンッと破壊する勢いでヴァルトは叩く。木製の古びたドアは、力を持て余しているヴァルトの拳に叩き割られる寸前で開かれた。
何事かとドアを開けた中年の女性は、ガウンの襟元を掻き合せると、やたらと背の高いヴァルトを見上げてギョッと目を剥いた。なにせ、怪物の内蔵や血糊をべったりとその身にかぶっていて、乾いた今は赤黒く変色して異様な姿だったからだ。
性格とは真逆の美しすぎる顔立ちが、より残酷な姿を耽美化していたが、口を開くと全て台無しにしてしまう男である。
「おばちゃん、早く仲間を診てくれ!!」
「急患かい?」
「うん。かなりヤバイんだ。タブンあともうちょっとで死んじゃうから早くして!」
ヴァルトは両手を腰に当てると、仁王立ちになって中年の女性を見おろした。この言葉をキュッリッキが聞いたら「勝手に殺すなあ!」と文句を飛ばしそうだ。
何やらと思ったが、ヴァルトの様子からして重症人がいるのだろう。中年の女性はすぐさまドアを全開にした。
「早く運んでおいで。主人を起こしてくるから」
ヴァルトは「うん!」と元気よく返事をすると、回れ右して全力で走っていった。
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