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混迷の遺跡編
episode140
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瀕死のキュッリッキのほうは、ランドン、シビル、カーティスの回復魔法で、かろうじて命をつないでいる状況だった。一刻も早く医者の手に委ねる為に、この場から動かせるくらいには、しておかなければならなかった。
回復作業を手伝おうと、マーゴットも意気揚々として加わろうとしたが、カーティスにぴしゃりと止められた。
かすり傷を治す程度なら構わなかったが、魔法の扱いが下手なマーゴットが手を出せば、かえって危険な状態になる。自らが下手だということを認めないマーゴットは、ぶちぶちと不平を垂れたが、皆取り合わなかった。それどころじゃないからだ。
「そろそろ動かせそうかい?」
ルーファスに問われて、ランドンが小さく頷く。
「僕とシビルで魔法をかけ続けるから、ルーファスはサイ《超能力》でキューリを運んで。慎重にね。抱き上げてグラグラ動かすと、怪我にかかる負担が大きくなって、危ないから」
「判った。よし、いくぞ」
ルーファスは両手をキュッリッキにかざす。
横たわる姿勢を固定したイメージを頭に浮かべ、キュッリッキの身体をそっと浮かせた。しかし血をたっぷり吸った衣服が、ねっとりと床に張り付いて抵抗があり、ルーファスは一旦動きを止めた。
「すまん、誰か床に張り付いちまってるキューリちゃんの髪の毛と服を、そっと剥がしてくれないか?」
傍らにいたメルヴィンが、床から少し浮いたキュッリッキの身体の下を見る。そして粘りを帯びた血の糸を引いている髪と服を、床からそっと剥がした。
「いいですよ、ルーファスさん」
「ありっ」
今度は抵抗なくキュッリッキの身体は、仰向いたまま浮き上がる。
「神殿を出よう」
キュッリッキを浮かせて歩くルーファスを妨げないように、ハーマンは魔法で明かりを出して先導する。その後ろからランドンとシビルが回復魔法をかけ続け、残りのメンバーがぞろぞろ続いた。
「怪物はアイツ1匹ってわけじゃないだろうから、警戒を怠るなよ」
神経を研ぎ澄ませながら、ギャリーは戦闘組みを促す。
「判りました、ギャリーさん」
メルヴィンは頷きながら、力なく垂れているキュッリッキの手を、痛ましく見つめた。
(リッキーさん…)
大人の男でも、あんな怪我を負ったら即死してしまうだろう。駆けつけたのが早かったので、なんとか命を取り留めているが、もし遅れていたらどうなっていたか。
励ますために握った、キュッリッキの冷たくなっていた手。細っそりと小さく、脆くて儚い。凍っているかのように冷たいその手は、メルヴィンの不安をザワザワと掻き立てていた。
医療スキル〈才能〉も魔法もサイ《超能力》も持っていない自分では、キュッリッキを前にして何もできなかった。役に立てていない自分が、激しく憤ろしい。今もこうして後ろを歩いて、心配することだけしかできない。
歯がゆく思いながらも、みんなが無事遺跡から出られるよう、メルヴィンは警戒を強めて集中した。
回復作業を手伝おうと、マーゴットも意気揚々として加わろうとしたが、カーティスにぴしゃりと止められた。
かすり傷を治す程度なら構わなかったが、魔法の扱いが下手なマーゴットが手を出せば、かえって危険な状態になる。自らが下手だということを認めないマーゴットは、ぶちぶちと不平を垂れたが、皆取り合わなかった。それどころじゃないからだ。
「そろそろ動かせそうかい?」
ルーファスに問われて、ランドンが小さく頷く。
「僕とシビルで魔法をかけ続けるから、ルーファスはサイ《超能力》でキューリを運んで。慎重にね。抱き上げてグラグラ動かすと、怪我にかかる負担が大きくなって、危ないから」
「判った。よし、いくぞ」
ルーファスは両手をキュッリッキにかざす。
横たわる姿勢を固定したイメージを頭に浮かべ、キュッリッキの身体をそっと浮かせた。しかし血をたっぷり吸った衣服が、ねっとりと床に張り付いて抵抗があり、ルーファスは一旦動きを止めた。
「すまん、誰か床に張り付いちまってるキューリちゃんの髪の毛と服を、そっと剥がしてくれないか?」
傍らにいたメルヴィンが、床から少し浮いたキュッリッキの身体の下を見る。そして粘りを帯びた血の糸を引いている髪と服を、床からそっと剥がした。
「いいですよ、ルーファスさん」
「ありっ」
今度は抵抗なくキュッリッキの身体は、仰向いたまま浮き上がる。
「神殿を出よう」
キュッリッキを浮かせて歩くルーファスを妨げないように、ハーマンは魔法で明かりを出して先導する。その後ろからランドンとシビルが回復魔法をかけ続け、残りのメンバーがぞろぞろ続いた。
「怪物はアイツ1匹ってわけじゃないだろうから、警戒を怠るなよ」
神経を研ぎ澄ませながら、ギャリーは戦闘組みを促す。
「判りました、ギャリーさん」
メルヴィンは頷きながら、力なく垂れているキュッリッキの手を、痛ましく見つめた。
(リッキーさん…)
大人の男でも、あんな怪我を負ったら即死してしまうだろう。駆けつけたのが早かったので、なんとか命を取り留めているが、もし遅れていたらどうなっていたか。
励ますために握った、キュッリッキの冷たくなっていた手。細っそりと小さく、脆くて儚い。凍っているかのように冷たいその手は、メルヴィンの不安をザワザワと掻き立てていた。
医療スキル〈才能〉も魔法もサイ《超能力》も持っていない自分では、キュッリッキを前にして何もできなかった。役に立てていない自分が、激しく憤ろしい。今もこうして後ろを歩いて、心配することだけしかできない。
歯がゆく思いながらも、みんなが無事遺跡から出られるよう、メルヴィンは警戒を強めて集中した。
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