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混迷の遺跡編
episode137
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ルーファスはハーマンにガエルのサポートにつくよう指示をすると、すぐさまカーティスに念話を送る。
(それは…)
映像付きの念話を送られ、カーティスは愕然とその場に立ち止まった。ヴァルトらが何事かと足を止める。
(ヤバイぞ、かなりの重症過ぎて。ランドンに止血させてるが、このままじゃ死んじまう)
(わ、我々もすぐに向かいます)
(ああ。ギャリーには俺から連絡を入れておく)
(判りました)
いつになく狼狽えるカーティスとの念話が終わると、ルーファスはすぐさまギャリーに念話を送った。
急に辺りが騒がしくなり、キュッリッキは小さな声をあげる。
「……だ…れ?」
「リッキーさん!」
ランドンの反対側に膝をついていたメルヴィンは、キュッリッキの顔を覗き込んだ。
ぼんやりとする意識の中、メルヴィンに気づいて声を振り絞る。しかしその声は弱々しく、か細く聞き取れない。
「助け…て」
言葉を発するのが苦痛なのか、血を溢れさせながら小さく唇を動かした。
蒼白なキュッリッキの顔を覗き込みながら、メルヴィンは必死に叫ぶ。
「もう大丈夫ですから、助けに来ましたからね!」
力なく床に置かれていた左手をそっと取って、メルヴィンは励ました。驚く程手は冷たくなっていて、それがよりメルヴィンの不安を煽る。
口を動かしたことで喉に血が流れ込んだのか、むせて激しく咳き込み血を吐き出した。メルヴィンは慌ててキュッリッキの口元をそっと拭ってやる。
「動かないで!」
額に汗を滲ませランドンが悲鳴のように叫ぶ。回復魔法は専門だが、こんなに酷い怪我人を診るのは初めてのことだった。
「おし、みんなに連絡はついた。もうちょっと一人で頑張ってくれランドン。シビルがこっち向かってるから」
「うん」
回復魔法では、怪我や病気自体は治せない。痛みや疲労を和らげ、止血をし、細胞の壊死を防ぐくらいだ。それはどんなに高位魔法を操る魔法使いにも、それ以上のことは不可能なのだ。怪我や病気をある程度治せるのは、医療スキル〈才能〉だけである。
キュッリッキの状態は深刻で、一刻も早く医者による治療が必要だった。これでよく即死しなかったと、褒めてやりたいほどだとランドンは思う。
「メルヴィン、キューリに君の外套をかけてあげて。血が流れすぎてて体温が急激に下がってる」
「そうですね」
頷いてメルヴィンは外套を脱ぐと、そっと下半身にかけてやった。そして再度手を取りそっと握る。
ランドンの回復魔法を受け痛みが和らいだのか、キュッリッキはどこかホッとしたような気分になっていた。でも意識は混濁としていてはっきりしない。
寒くて寒くて、仕方が無かった。
メルヴィンが握ってくれてる手だけが、ほんのりと温かい。
仲間たちの気配を僅かに感じながら、キュッリッキの意識は深い闇へと落ちていった。
(それは…)
映像付きの念話を送られ、カーティスは愕然とその場に立ち止まった。ヴァルトらが何事かと足を止める。
(ヤバイぞ、かなりの重症過ぎて。ランドンに止血させてるが、このままじゃ死んじまう)
(わ、我々もすぐに向かいます)
(ああ。ギャリーには俺から連絡を入れておく)
(判りました)
いつになく狼狽えるカーティスとの念話が終わると、ルーファスはすぐさまギャリーに念話を送った。
急に辺りが騒がしくなり、キュッリッキは小さな声をあげる。
「……だ…れ?」
「リッキーさん!」
ランドンの反対側に膝をついていたメルヴィンは、キュッリッキの顔を覗き込んだ。
ぼんやりとする意識の中、メルヴィンに気づいて声を振り絞る。しかしその声は弱々しく、か細く聞き取れない。
「助け…て」
言葉を発するのが苦痛なのか、血を溢れさせながら小さく唇を動かした。
蒼白なキュッリッキの顔を覗き込みながら、メルヴィンは必死に叫ぶ。
「もう大丈夫ですから、助けに来ましたからね!」
力なく床に置かれていた左手をそっと取って、メルヴィンは励ました。驚く程手は冷たくなっていて、それがよりメルヴィンの不安を煽る。
口を動かしたことで喉に血が流れ込んだのか、むせて激しく咳き込み血を吐き出した。メルヴィンは慌ててキュッリッキの口元をそっと拭ってやる。
「動かないで!」
額に汗を滲ませランドンが悲鳴のように叫ぶ。回復魔法は専門だが、こんなに酷い怪我人を診るのは初めてのことだった。
「おし、みんなに連絡はついた。もうちょっと一人で頑張ってくれランドン。シビルがこっち向かってるから」
「うん」
回復魔法では、怪我や病気自体は治せない。痛みや疲労を和らげ、止血をし、細胞の壊死を防ぐくらいだ。それはどんなに高位魔法を操る魔法使いにも、それ以上のことは不可能なのだ。怪我や病気をある程度治せるのは、医療スキル〈才能〉だけである。
キュッリッキの状態は深刻で、一刻も早く医者による治療が必要だった。これでよく即死しなかったと、褒めてやりたいほどだとランドンは思う。
「メルヴィン、キューリに君の外套をかけてあげて。血が流れすぎてて体温が急激に下がってる」
「そうですね」
頷いてメルヴィンは外套を脱ぐと、そっと下半身にかけてやった。そして再度手を取りそっと握る。
ランドンの回復魔法を受け痛みが和らいだのか、キュッリッキはどこかホッとしたような気分になっていた。でも意識は混濁としていてはっきりしない。
寒くて寒くて、仕方が無かった。
メルヴィンが握ってくれてる手だけが、ほんのりと温かい。
仲間たちの気配を僅かに感じながら、キュッリッキの意識は深い闇へと落ちていった。
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