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混迷の遺跡編
episode131
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キュッリッキの背後から、ザカリーがニヤニヤ顔で話に割って入ってきた。シ・アティウスは小さく首をかしげたが、キュッリッキは殆ど条件反射のように肩を怒らせると、噛み付くような顔でザカリーに振り向いた。
「なによっ!」
「ホラッ」
ザカリーはからかうように、身体をヒョイッと避けてみせる。
(何で話に入ってくるのよ)
キュッリッキは忌々しそうにザカリーを睨みつけた。その目を真っ向から受けて、ザカリーは内心苦笑する。
あの日、キュッリッキの秘密を覗き見したことで、以来話しかけても応じてくれず、声をかければそっぽを向くか、無視をされ続けていた。もちろんザカリーには秘密をバラす気など、そんなつもりは毛頭ない。だが、キュッリッキが自分を信用していないことだけは判っていた。
秘密を見てしまったのだから、それはしょがないと思う気持ちと、そろそろお怒りを解いて欲しいと願う気持ちで板挟みになっている。
可愛い子専を自負するザカリーは、10歳も年下のキュッリッキを、本気で好きになっていた。
背も小さく華奢で、本人は全く自覚していないが美少女である。アジトの近所でもすぐ評判になった。手を出そうとする輩も多い界隈に、ザカリーとしては気が気じゃないのだ。最も、ライオン傭兵団の一員と知って、手を出す強者は居ないが。
あの細っそりした身体を、そっと抱きしめてみたい。柔らかな肌に触れながら、桜貝のような色の唇にキスをしてみたかった。そしていつかは、全てを自分のモノにしたい。
好きだという気持ちを自覚してからは、求める気持ちがどんどん強まっている。笑いかけて欲しくて必死にちょっかいを出すが、なかなか成功しない。こうしてからかったときくらいしか、顔を合わせてくれようともしないので、ザカリーとしてはキュッリッキを怒らせるしか手段がなかった。
一方、キュッリッキはザカリーに話しかけられるたびに、心底ビクビクしていた。アイオン族であること、片翼のことを、みんなにバラされるんじゃないかと。彼は秘密を話すんじゃないか、その不安が態度を頑なにさせている。
ザカリーのことは、好きとか嫌いとかじゃない。ただただ不安で不安で、その存在自体が怖くてたまらない。ヴァルトも秘密を知る者だが、同じ種族で事情も知っていることから、無闇にバラすことはないだろうと思える。
まさかザカリーが自分を本気で好きになっているなど知る由もないので、不安を隠すために、態度が強気になり険悪になる。
ザカリーの乱入のせいで、キュッリッキとの話が中断されたシ・アティウスは、ヤレヤレといった気分で肩をすくませた。その様子を見ていたカーティスは、ザカリーとキュッリッキが揉めているのを見かね、口を挟んだ。
「あんまりキューリさんを、からかわないで下さいよ」
「別にからかっちゃいないよ。だってよ、退屈なんだもん。なあ」
ザカリーは強引にキュッリッキの肩を抱き寄せる。あまりにも素早い行動に、キュッリッキはビックリした顔で、ザカリーの腕の中に抱き寄せられ目を見張った。
(ヤダ…)
足元から嫌悪感が這い上がってきて、吐き気を覚えて顔をしかめる。
「ザカリー、そのくらいにしておいて下さい、嫌がってますよ」
理由は知らないまでも、ザカリーが話しかけるとキュッリッキの態度が意固地になるのは、カーティスにも判っていた。目を合わせようともしないし、話しかけられても無視している。今も、本気で嫌がっているのが、露骨に顔に出ているのだ。
「退屈だしさ、神殿の中で楽しいことしようぜ」
「なによっ!」
「ホラッ」
ザカリーはからかうように、身体をヒョイッと避けてみせる。
(何で話に入ってくるのよ)
キュッリッキは忌々しそうにザカリーを睨みつけた。その目を真っ向から受けて、ザカリーは内心苦笑する。
あの日、キュッリッキの秘密を覗き見したことで、以来話しかけても応じてくれず、声をかければそっぽを向くか、無視をされ続けていた。もちろんザカリーには秘密をバラす気など、そんなつもりは毛頭ない。だが、キュッリッキが自分を信用していないことだけは判っていた。
秘密を見てしまったのだから、それはしょがないと思う気持ちと、そろそろお怒りを解いて欲しいと願う気持ちで板挟みになっている。
可愛い子専を自負するザカリーは、10歳も年下のキュッリッキを、本気で好きになっていた。
背も小さく華奢で、本人は全く自覚していないが美少女である。アジトの近所でもすぐ評判になった。手を出そうとする輩も多い界隈に、ザカリーとしては気が気じゃないのだ。最も、ライオン傭兵団の一員と知って、手を出す強者は居ないが。
あの細っそりした身体を、そっと抱きしめてみたい。柔らかな肌に触れながら、桜貝のような色の唇にキスをしてみたかった。そしていつかは、全てを自分のモノにしたい。
好きだという気持ちを自覚してからは、求める気持ちがどんどん強まっている。笑いかけて欲しくて必死にちょっかいを出すが、なかなか成功しない。こうしてからかったときくらいしか、顔を合わせてくれようともしないので、ザカリーとしてはキュッリッキを怒らせるしか手段がなかった。
一方、キュッリッキはザカリーに話しかけられるたびに、心底ビクビクしていた。アイオン族であること、片翼のことを、みんなにバラされるんじゃないかと。彼は秘密を話すんじゃないか、その不安が態度を頑なにさせている。
ザカリーのことは、好きとか嫌いとかじゃない。ただただ不安で不安で、その存在自体が怖くてたまらない。ヴァルトも秘密を知る者だが、同じ種族で事情も知っていることから、無闇にバラすことはないだろうと思える。
まさかザカリーが自分を本気で好きになっているなど知る由もないので、不安を隠すために、態度が強気になり険悪になる。
ザカリーの乱入のせいで、キュッリッキとの話が中断されたシ・アティウスは、ヤレヤレといった気分で肩をすくませた。その様子を見ていたカーティスは、ザカリーとキュッリッキが揉めているのを見かね、口を挟んだ。
「あんまりキューリさんを、からかわないで下さいよ」
「別にからかっちゃいないよ。だってよ、退屈なんだもん。なあ」
ザカリーは強引にキュッリッキの肩を抱き寄せる。あまりにも素早い行動に、キュッリッキはビックリした顔で、ザカリーの腕の中に抱き寄せられ目を見張った。
(ヤダ…)
足元から嫌悪感が這い上がってきて、吐き気を覚えて顔をしかめる。
「ザカリー、そのくらいにしておいて下さい、嫌がってますよ」
理由は知らないまでも、ザカリーが話しかけるとキュッリッキの態度が意固地になるのは、カーティスにも判っていた。目を合わせようともしないし、話しかけられても無視している。今も、本気で嫌がっているのが、露骨に顔に出ているのだ。
「退屈だしさ、神殿の中で楽しいことしようぜ」
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