片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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混迷の遺跡編

episode128

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 ライオン傭兵団は全員が顔を揃えると、遺跡の前で大きな輪を作って、各部隊の武勇伝を披露し合っていた。しかしいざ戦闘の話になると、バトル3馬鹿はキュッリッキのチート支援の話題に集中した。

「カーティス、今度戦闘のある仕事が入ったら、ボクにはキューリを支援につけてくれ」

 おかっぱに切りそろえた黒髪を揺らしながら、タルコットはカーティスを軽く睨む。

「それはダメだろう。俺と組むんだ」

 隣に立つキュッリッキに、ガエルは凄みのある笑顔を向ける。

「キューリは俺様に支援をすればいい!」

 向かい側に立つヴァルトは、ぎゃーすか喧しく喚きたてた。

「モテ期ですね、キューリさん」

 キュッリッキの足元で、シビルが肩をすくめた。

「だいたいガエルがボクたちより数を稼げたのは、全部キューリの支援のおかげだろう。ボクたちと同等の支援じゃない限り、今回の数は無効だ」

「そーだそーだ! そのトーリ!!」

「確かに支援はこちらが優秀すぎたが、それを巧みに活かしての戦闘だ。間違いなく俺の勝ちだ」

「カーティスのしょぼい強化じゃなきゃ、俺様が負けるはずねえ!」

「ヴァルトと違ってボクは、防御もしっかりしながらの戦闘だった。それでこれだけの数を稼いだんだから、当然ボクの勝ちじゃないと納得できない。それに、ヴァルトは跳ね返した弾で倒した数も足してるぞ」

「入れてねーよ! テメーも見てただろ」

「知らないな。ズルはよくない」

「ナンダト~~!」

 盛り上がる3人を冷ややかに見やって、カーティスはゲッソリと溜息をついた。

「毎回苦労して強化魔法を施し、回復や弱体支援をしている私に向かって、なんて言い草でしょうかね全く…。まあ、3馬鹿はほっといて、今後の通達事項ですよ」

「カーティス、たいへんなんだね…」

 キュッリッキも呆れ顔で薄く笑った。

「まあ、いつものことだ」

 タバコをふかしながら、ギャリーも薄く笑う。輪のあちこちから、同意する頷きや苦笑が飛び交っていた。

「ケレヴィルの方々は、もう少し調査を続けたいそうです。恐らくソレル王国軍は、再びナルバ山に攻め込んでくるでしょう。遺跡は死守して欲しいとのことなので、麓で迎撃することになります」

「夜間攻めて来ることはなさそー?」

 手を挙げてルーファスが言うと、

「多分、今夜は無いと思います」

 かわってブルニタルが答えた。

「そーだよね。散々暴れてきたから、すぐ立て直し出来ても、夜間中に奇襲は無理かあ」

「ただ、探りを入れに来ることはあるかもしれません。夜通し警戒を続けるのは必須だと思いますが」

「そうですね。全員疲れていると思いますが、グループ分けをして警戒に当たりましょうか」

 ブルニタルの発言を受けて、カーティスが決定する。

「それなら、みんなにもこれ渡しておくね」

 キュッリッキは掌に乗せていた綿毛を、軽く宙に放る。

「なんでえ、それ?」

 不思議がるギャリーたちに、ブルニタルが素早く説明した。

「本当に召喚士というのは、すごいものなんですねえ」

 カーティスは満足そうに頷き、小さな綿毛を頭に置いた。
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