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ナルバ山の遺跡編
episode124
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「カーティスあれ」
背中合わせに立っていたマーゴットが、すっかり濃紺色に染まった空を指差す。カーティスは顔を上げると、夜空を有り得ないほどの巨大な鳥が飛んでいく様が見えた。
「ギャリーたちですか。無事に飛び立てたようですね」
カーティスは小さく頷くと、銀の杖を構え直した。
「ルーファス、タルコットとハーマンとヴァルトに、戦線を離脱するように念話を送ってください。合流地点で落ち合って、我々も逃げますよ」
「了解だ」
ルーファスは目の前の兵士を切り捨てると、身体は戦いを続け、意識のみをこらす。
(タルコット、ハーマン、ギャリーたちが脱出した)
(うん、でっかな鳥が見えたよ!)
まだ暴れ足りなそうなハーマンの、元気な声が脳裏に響く。
(ボクも確認した。周辺の雑魚を掃討しながら、合流地点へ向かうよ)
タルコットの声も、素直に応じた。
(2人とも気をつけてな。後で会おう)
ハーマンとタルコットは、無事に合流地点で会えるだろう。そして、若干心配なのが一人。
陽動すればいいだけなのに、収監施設へ乗り込んでいってしまい、カーティスたちとすっかり離ればなれになってしまった。さすがに施設までは追いかけていけず、ヴァルトは絶賛大放置状態だ。
ルーファスは念話を送りやすいように、仲間たちにはマーキングをしている。どんなに遠く離れていても、それを頼りに念を送ればいい。しかしこれだけ人が大勢いると、マーキングも探しづらく、ようやくヴァルトを探し当てた。
(ヴァルト、引き上げて合流地点へ向かってくれ!)
(ん? 俺様もう、ごーりゅーチテンにいるぞ)
「……ナンデスッテエエエ!?」
思わずルーファスは声に出して絶叫する。
(建物ン中のれんちゅー、全部倒したし、ギャリーたちも屋上へ向かったしな。俺様も飛んで脱出した)
鼻ほじしている姿が目に浮かぶ。
ルーファスは無言になると、斬り捨てた兵士の死体に片足を乗せ、片手剣の切っ先を死体の腹に突き立てる。そして、八つ当たりする勢いで何度も突きまくった。
(死ね、うぜえ、ごるぁあ!)
念話ではなく、心の声である。
「な、何をしているんですルーファス…」
いきなり荒ぶるルーファスに、カーティスが引き気味にツッコむ。
「ン、何でもないヨー」
ニッコリと笑顔を浮かべ、カーティスを振り向く。しかし目は少しも笑っていなかった。
死体に怒りの限りをぶつけてすっきりしたルーファスは、普段の穏やかな顔に戻る。
「おっし、連絡はおっけーだよ」
「…判りました。さあ、少々派手にいきますよ」
軽く頭を振り、カーティスは銀の杖に片手を翳すと、朗々と呪文を唱えだした。
「天もみたことがない稲妻と
地も聴いたことがない雷鳴を
遍く全ての想像を絶したる大音響を作り出さん
イラアルータ・トニトルス!!」
カーティスは杖を高く掲げる。
杖から伸びた巨大な雷光が、宙で幾つもの枝のように広がり、アーチ状となって周囲に降り注いだ。
背中合わせに立っていたマーゴットが、すっかり濃紺色に染まった空を指差す。カーティスは顔を上げると、夜空を有り得ないほどの巨大な鳥が飛んでいく様が見えた。
「ギャリーたちですか。無事に飛び立てたようですね」
カーティスは小さく頷くと、銀の杖を構え直した。
「ルーファス、タルコットとハーマンとヴァルトに、戦線を離脱するように念話を送ってください。合流地点で落ち合って、我々も逃げますよ」
「了解だ」
ルーファスは目の前の兵士を切り捨てると、身体は戦いを続け、意識のみをこらす。
(タルコット、ハーマン、ギャリーたちが脱出した)
(うん、でっかな鳥が見えたよ!)
まだ暴れ足りなそうなハーマンの、元気な声が脳裏に響く。
(ボクも確認した。周辺の雑魚を掃討しながら、合流地点へ向かうよ)
タルコットの声も、素直に応じた。
(2人とも気をつけてな。後で会おう)
ハーマンとタルコットは、無事に合流地点で会えるだろう。そして、若干心配なのが一人。
陽動すればいいだけなのに、収監施設へ乗り込んでいってしまい、カーティスたちとすっかり離ればなれになってしまった。さすがに施設までは追いかけていけず、ヴァルトは絶賛大放置状態だ。
ルーファスは念話を送りやすいように、仲間たちにはマーキングをしている。どんなに遠く離れていても、それを頼りに念を送ればいい。しかしこれだけ人が大勢いると、マーキングも探しづらく、ようやくヴァルトを探し当てた。
(ヴァルト、引き上げて合流地点へ向かってくれ!)
(ん? 俺様もう、ごーりゅーチテンにいるぞ)
「……ナンデスッテエエエ!?」
思わずルーファスは声に出して絶叫する。
(建物ン中のれんちゅー、全部倒したし、ギャリーたちも屋上へ向かったしな。俺様も飛んで脱出した)
鼻ほじしている姿が目に浮かぶ。
ルーファスは無言になると、斬り捨てた兵士の死体に片足を乗せ、片手剣の切っ先を死体の腹に突き立てる。そして、八つ当たりする勢いで何度も突きまくった。
(死ね、うぜえ、ごるぁあ!)
念話ではなく、心の声である。
「な、何をしているんですルーファス…」
いきなり荒ぶるルーファスに、カーティスが引き気味にツッコむ。
「ン、何でもないヨー」
ニッコリと笑顔を浮かべ、カーティスを振り向く。しかし目は少しも笑っていなかった。
死体に怒りの限りをぶつけてすっきりしたルーファスは、普段の穏やかな顔に戻る。
「おっし、連絡はおっけーだよ」
「…判りました。さあ、少々派手にいきますよ」
軽く頭を振り、カーティスは銀の杖に片手を翳すと、朗々と呪文を唱えだした。
「天もみたことがない稲妻と
地も聴いたことがない雷鳴を
遍く全ての想像を絶したる大音響を作り出さん
イラアルータ・トニトルス!!」
カーティスは杖を高く掲げる。
杖から伸びた巨大な雷光が、宙で幾つもの枝のように広がり、アーチ状となって周囲に降り注いだ。
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