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ナルバ山の遺跡編
episode123
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ヴァルトは肩ごしに振り向くと、噛み付きそうな形相のギャリーの、その奥を見て目を輝かせた。
「俺様のペルラ!!!」
両手を広げ、今にも飛び込んできそうなヴァルトに、ペルラは鬱陶しそうにため息をついた。
アイオン族のヴァルトは、ネコのトゥーリ族であるペルラにベタ惚れしている。シャム猫のようにシャープな美しさのあるペルラが、大好きで大好きでたまらないヴァルトは、邪険にされようがスルーされようが、それらは全てペルラの愛ゆえ、だと信じて疑っていなかった。
ペルラは素っ気ない態度をとりつつ、スッとソレル王国兵たちを指差す。
「そこの雑魚どもを、全部片付けてくれ…」
「判った!!」
ヴァルトの顔が、パッと花開いたように笑顔になった。
ペルラからお願いされたヴァルトは――周りから見たら体よくあしらわれただけ――元気よく叫ぶと、その場で思いっきり翼を羽ばたかせる。気合が注入された。
広場に所狭しとすし詰めになっていたソレル王国兵たちが、片手剣を構えながら目を細める。
「あの世まで飛んで行けっ!」
拳を固く握り締め、ヴァルトは床を蹴って飛び出した。
手前の兵士の顔面に拳がめり込むと、後ろに居た数十人の兵士も巻き込み豪快に吹っ飛んだ。広場は一気に騒然となる。
見せ場を奪われたギャリーは、ヴァルトを忌々しげに睨む。
「あのクソッタレめ……。バカはほっといて、俺たちは屋上へいくぞ!」
ギャリーは舌打ちしながら魔剣シラーを背負い直し、屋上への階段を登った。
屋上にいる敵を、今度こそ魔剣シラーの剣風で吹き飛ばすと、ギャリーは肩の小鳥に話しかけた。
「キューリ、いつでもいいぜ!!」
『小鳥を軽く宙へ放って』
すぐさまキュッリッキから応答が返ってくる。
ギャリーは言われたとおり小鳥を宙に放る。すると、小鳥は淡い銀色の光に包まれ、その小さな身体を巨体に変じて屋上に舞い降りた。
「うっほ……でけえな」
仰け反るようにして小鳥ならぬ巨鳥を見上げ、ギャリーは口笛を吹いた。
巨鳥に変じた小鳥は、身をかがめて皆を背中に誘う。
「よし、シビルは防御を張り巡らせながら乗れ。さすがに目立つ。下の奴らが発砲してくるだろうから」
そう言っている矢先に砲撃が開始された。しかしすぐに1人、2人と砲撃者の数が減っていったが、さすがのザカリーでも数が多すぎて、全て倒しきるのは無理がありそうだった。
マリオンはシビルを抱えると、すぐさま巨鳥に飛び乗った。
シビルはそのまま杖に意識を集中して、巨鳥の周りに防御結界を張り巡らせる。下から飛んでくる砲弾は、全て見えない結界の壁に弾かれた。
「みんなぁ、早く乗ってぇ~」
マリオンがのほほんと声をかけると、呆気にとられていた研究者たちが我に返って、いそいそと巨鳥の背に乗り始めた。
全員が乗ったことを確認して、ギャリーも飛び乗る。
「いいぜ!」
それを合図にして、巨鳥は翼を広げ、跳ね上がった。
「俺様のペルラ!!!」
両手を広げ、今にも飛び込んできそうなヴァルトに、ペルラは鬱陶しそうにため息をついた。
アイオン族のヴァルトは、ネコのトゥーリ族であるペルラにベタ惚れしている。シャム猫のようにシャープな美しさのあるペルラが、大好きで大好きでたまらないヴァルトは、邪険にされようがスルーされようが、それらは全てペルラの愛ゆえ、だと信じて疑っていなかった。
ペルラは素っ気ない態度をとりつつ、スッとソレル王国兵たちを指差す。
「そこの雑魚どもを、全部片付けてくれ…」
「判った!!」
ヴァルトの顔が、パッと花開いたように笑顔になった。
ペルラからお願いされたヴァルトは――周りから見たら体よくあしらわれただけ――元気よく叫ぶと、その場で思いっきり翼を羽ばたかせる。気合が注入された。
広場に所狭しとすし詰めになっていたソレル王国兵たちが、片手剣を構えながら目を細める。
「あの世まで飛んで行けっ!」
拳を固く握り締め、ヴァルトは床を蹴って飛び出した。
手前の兵士の顔面に拳がめり込むと、後ろに居た数十人の兵士も巻き込み豪快に吹っ飛んだ。広場は一気に騒然となる。
見せ場を奪われたギャリーは、ヴァルトを忌々しげに睨む。
「あのクソッタレめ……。バカはほっといて、俺たちは屋上へいくぞ!」
ギャリーは舌打ちしながら魔剣シラーを背負い直し、屋上への階段を登った。
屋上にいる敵を、今度こそ魔剣シラーの剣風で吹き飛ばすと、ギャリーは肩の小鳥に話しかけた。
「キューリ、いつでもいいぜ!!」
『小鳥を軽く宙へ放って』
すぐさまキュッリッキから応答が返ってくる。
ギャリーは言われたとおり小鳥を宙に放る。すると、小鳥は淡い銀色の光に包まれ、その小さな身体を巨体に変じて屋上に舞い降りた。
「うっほ……でけえな」
仰け反るようにして小鳥ならぬ巨鳥を見上げ、ギャリーは口笛を吹いた。
巨鳥に変じた小鳥は、身をかがめて皆を背中に誘う。
「よし、シビルは防御を張り巡らせながら乗れ。さすがに目立つ。下の奴らが発砲してくるだろうから」
そう言っている矢先に砲撃が開始された。しかしすぐに1人、2人と砲撃者の数が減っていったが、さすがのザカリーでも数が多すぎて、全て倒しきるのは無理がありそうだった。
マリオンはシビルを抱えると、すぐさま巨鳥に飛び乗った。
シビルはそのまま杖に意識を集中して、巨鳥の周りに防御結界を張り巡らせる。下から飛んでくる砲弾は、全て見えない結界の壁に弾かれた。
「みんなぁ、早く乗ってぇ~」
マリオンがのほほんと声をかけると、呆気にとられていた研究者たちが我に返って、いそいそと巨鳥の背に乗り始めた。
全員が乗ったことを確認して、ギャリーも飛び乗る。
「いいぜ!」
それを合図にして、巨鳥は翼を広げ、跳ね上がった。
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