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ナルバ山の遺跡編
episode121
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短剣の露を払いながら、ギャリーは詰問官の身体を蹴飛ばす。そして立ち上がったシ・アティウスに顔を向けた。
「ベルトルド……様の命令で救出にきた。オレはライオン傭兵団のギャリーだ」
「シ・アティウスという。私の前では、遠慮せず呼び捨てで構わない。私も本人のいないところでは呼び捨てている」
シ・アティウスの言いように、ギャリーはニヤリと口の端を上げると、通路へ手招きした。
他の研究者たち4名は、一箇所に監禁されていたようで、ペルラたちに引率されてギャリーと合流した。血まみれのシ・アティウスを見たシビルが、ぎょっとしたように目を見張る。
「返り血をかぶっているだけだ」
大したことじゃない、といったようにシ・アティウスに言われ、シビルは固く頷いた。
「連れ出しは成功、だがよ、問題は外だな」
「ヴァルトさんが近づいてきてる気配がします」
シビルが杖の先端を額に当てて目を閉じる。魔法で仲間の気配を特定した。
「じゃあマリオンの音波攻撃を、広範囲でばら撒くのは無理か。いくらヴァルトでもサイ〈超能力〉の音波は防げねえだろうし。範囲絞るにしても、距離がわかりづらいな」
「無理だねえ~。前に実験したことあるしぃ」
「カーティスたちはおいてけぼりしても大丈夫だから、オレたちはこいつらを安全に連れ出すことにだけ、集中しよう」
「ですね」
「屋上に出よう。そっから飛んでいけるだろ。周辺はザカリーに任せときゃいいし、ある程度の時間は、シビルの防御魔法で凌ぐ」
ギャリーがその後の予定を立てていると、ふいに肩の小鳥が嘴を開いた。
〈ギャリー聞こえる?〉
「おうよ」
キュッリッキだった。
〈こっちはいつでも準備オッケーだから、逃げる時は合図してね〉
「判った。まだ少しかかる」
〈ほいさ〉
ギャリーの肩に乗る黄色いルリビタキのような小鳥に目をやり、シ・アティウスは興味深げに口を開いた。
「その鳥は?」
「仲間の召喚士のものだ」
ほほう、と研究者たちが、小さく声をあげた。
「召喚士のものなのか」
「ああ」
「ふむ……。召喚士はそんなこともできるのか」
感心したように呟く。他の研究者たちもそれぞれに、感嘆の声をあげていた。
「あんたら王宮の召喚士見たことあるんじゃないのか? 皇国お抱えの研究機関なんだろケレヴィルって?」
「何度もあるが、そんな素晴らしい芸当は見たことがないのでな」
「ふーん。やっぱ、召喚士にもスキル〈才能〉ランクの差があるんかね」
「かもしれんな。これだけ見事なランク値なら、幼い頃にスキル〈才能〉探査機関で見つかっていそうなものだが」
それはギャリーたちも、ずっと思っていたことだった。
召喚スキル〈才能〉を持っていることが判れば、即刻国が召し上げるだろう。なのにキュッリッキは、フリーで傭兵などをしていたのだ。何故なのか気にはなっているが、そういう野暮を聞かないのが傭兵だ。
顎に手をあてたまま、シ・アティウスはなんの感情もこもらぬ声で呟いた。
「機関を通ってないのなら、孤児だったのだろうな」
「ベルトルド……様の命令で救出にきた。オレはライオン傭兵団のギャリーだ」
「シ・アティウスという。私の前では、遠慮せず呼び捨てで構わない。私も本人のいないところでは呼び捨てている」
シ・アティウスの言いように、ギャリーはニヤリと口の端を上げると、通路へ手招きした。
他の研究者たち4名は、一箇所に監禁されていたようで、ペルラたちに引率されてギャリーと合流した。血まみれのシ・アティウスを見たシビルが、ぎょっとしたように目を見張る。
「返り血をかぶっているだけだ」
大したことじゃない、といったようにシ・アティウスに言われ、シビルは固く頷いた。
「連れ出しは成功、だがよ、問題は外だな」
「ヴァルトさんが近づいてきてる気配がします」
シビルが杖の先端を額に当てて目を閉じる。魔法で仲間の気配を特定した。
「じゃあマリオンの音波攻撃を、広範囲でばら撒くのは無理か。いくらヴァルトでもサイ〈超能力〉の音波は防げねえだろうし。範囲絞るにしても、距離がわかりづらいな」
「無理だねえ~。前に実験したことあるしぃ」
「カーティスたちはおいてけぼりしても大丈夫だから、オレたちはこいつらを安全に連れ出すことにだけ、集中しよう」
「ですね」
「屋上に出よう。そっから飛んでいけるだろ。周辺はザカリーに任せときゃいいし、ある程度の時間は、シビルの防御魔法で凌ぐ」
ギャリーがその後の予定を立てていると、ふいに肩の小鳥が嘴を開いた。
〈ギャリー聞こえる?〉
「おうよ」
キュッリッキだった。
〈こっちはいつでも準備オッケーだから、逃げる時は合図してね〉
「判った。まだ少しかかる」
〈ほいさ〉
ギャリーの肩に乗る黄色いルリビタキのような小鳥に目をやり、シ・アティウスは興味深げに口を開いた。
「その鳥は?」
「仲間の召喚士のものだ」
ほほう、と研究者たちが、小さく声をあげた。
「召喚士のものなのか」
「ああ」
「ふむ……。召喚士はそんなこともできるのか」
感心したように呟く。他の研究者たちもそれぞれに、感嘆の声をあげていた。
「あんたら王宮の召喚士見たことあるんじゃないのか? 皇国お抱えの研究機関なんだろケレヴィルって?」
「何度もあるが、そんな素晴らしい芸当は見たことがないのでな」
「ふーん。やっぱ、召喚士にもスキル〈才能〉ランクの差があるんかね」
「かもしれんな。これだけ見事なランク値なら、幼い頃にスキル〈才能〉探査機関で見つかっていそうなものだが」
それはギャリーたちも、ずっと思っていたことだった。
召喚スキル〈才能〉を持っていることが判れば、即刻国が召し上げるだろう。なのにキュッリッキは、フリーで傭兵などをしていたのだ。何故なのか気にはなっているが、そういう野暮を聞かないのが傭兵だ。
顎に手をあてたまま、シ・アティウスはなんの感情もこもらぬ声で呟いた。
「機関を通ってないのなら、孤児だったのだろうな」
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