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ナルバ山の遺跡編
episode117
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ソレル王国首都アルイールは海岸沿いに建てられ、人口70万人ほどの賑やかで大きな街だ。しかし街の中には多くの遺跡が存在していて、その合間を縫うようにして家屋が建つので、見た目が悪い都市としても有名だった。街の景観より遺跡の保護を謳う国らしい街並みだった。
都市の中央には小高い丘があり、優美な宮殿が建っている。ソレル王国を建国したメリロット王家のものだ。その王宮の丘から西の方角に、軍事に関する施設がある。やはりここも遺跡をまたぐようにして施設がバラバラと建っているので、どこかまとまり感を欠いた雰囲気が立ち込めていた。
左右を遺跡に囲まれた、広大な敷地に建つ軍の収監施設の周りは鉄柵で覆われ、囲いに沿って所狭しと銃兵たちが並んでいる。そして敷地内では、白い漆喰を塗り固めた石造りの2階建ての建物の周りに、剣を帯びた茶色い甲冑をまとった兵士たちが、びっしりと埋め尽くしていた。
そして施設周囲の木や建物の上には、狙撃専門の銃兵たちも配備されている。施設前の路上には、身動きもままならないほどの銃兵、魔法兵なども配備されていた。
敷地の中、外回りなど合わせ、約3個中隊ほどの大人数である。厳重に輪をかけた重厚な警戒態勢だ。
夕刻になり、蒸し暑さが多少緩和され、海風がそっと吹き抜けていく気持ちのいい時間帯に、突如耳をつんざく爆音が轟いた。
密集した兵士たちの間に、突如複数の火柱が無造作に立ち上がったのだ。魔法スキル〈才能〉を持つハーマンが放った、火炎系攻撃魔法【ギガス・フランマ】だ。
巨大な火柱は、兵士たちを無差別に飲み込み焼き尽くす。あまりに突然起こった出来事に、兵士たちは狼狽し、騒然となった。
火柱で騒然となっている場から、少し離れたソレル王国兵たちの上に、ふわりと真っ白な羽根がいくつも舞い降りてきた。
「オラオラいくぜテメーら!!!」
ざわつく兵士たちに劣らぬ大声で、ヴァルトが天から落下し、密集する兵士たちのど真ん中に拳を叩きつける。地面はベコッとめり込むと、亀裂を生じながら巨大なクレーターを作った。土埃が盛大に巻き起こり、砕かれた石つぶが風に乗り兵士たちに当たる。そして衝撃に巻き込まれた幾人もの兵士たちが、豪快に吹き飛ばされた。
格闘系複合スキル〈才能〉 を持つヴァルトは、肉体を操作して拳のパワーを高めていた。更に落下していくスピードと強化魔法の恩恵を受けて、通常よりも強力な破壊力を生み出している。
「アイオン族だと!?」
拳圧でおこった風でよろめきながら、中隊の指揮官が叫んだ。いきなり降って湧いてきた見ず知らずの男にも驚いたが、その背には、巨大な白い翼が生えている。
気位の高いアイオン族が、惑星ヒイシで翼を広げる姿なぞ、滅多に見られるものじゃなかった。
「おめーら全員、俺様がぶっ飛ばす!」
片手を前方につき出すと、掌を上に向けてクイクイッと誘うように動かし挑発した。
あまりに不遜な態度である。気位が高いというより、ただ偉そう、といった態度だ。
「アレを撃ち殺せ!!」
声を裏返らせた指揮官の合図で、一斉にヴァルトに向けて砲弾が飛んだ。
都市の中央には小高い丘があり、優美な宮殿が建っている。ソレル王国を建国したメリロット王家のものだ。その王宮の丘から西の方角に、軍事に関する施設がある。やはりここも遺跡をまたぐようにして施設がバラバラと建っているので、どこかまとまり感を欠いた雰囲気が立ち込めていた。
左右を遺跡に囲まれた、広大な敷地に建つ軍の収監施設の周りは鉄柵で覆われ、囲いに沿って所狭しと銃兵たちが並んでいる。そして敷地内では、白い漆喰を塗り固めた石造りの2階建ての建物の周りに、剣を帯びた茶色い甲冑をまとった兵士たちが、びっしりと埋め尽くしていた。
そして施設周囲の木や建物の上には、狙撃専門の銃兵たちも配備されている。施設前の路上には、身動きもままならないほどの銃兵、魔法兵なども配備されていた。
敷地の中、外回りなど合わせ、約3個中隊ほどの大人数である。厳重に輪をかけた重厚な警戒態勢だ。
夕刻になり、蒸し暑さが多少緩和され、海風がそっと吹き抜けていく気持ちのいい時間帯に、突如耳をつんざく爆音が轟いた。
密集した兵士たちの間に、突如複数の火柱が無造作に立ち上がったのだ。魔法スキル〈才能〉を持つハーマンが放った、火炎系攻撃魔法【ギガス・フランマ】だ。
巨大な火柱は、兵士たちを無差別に飲み込み焼き尽くす。あまりに突然起こった出来事に、兵士たちは狼狽し、騒然となった。
火柱で騒然となっている場から、少し離れたソレル王国兵たちの上に、ふわりと真っ白な羽根がいくつも舞い降りてきた。
「オラオラいくぜテメーら!!!」
ざわつく兵士たちに劣らぬ大声で、ヴァルトが天から落下し、密集する兵士たちのど真ん中に拳を叩きつける。地面はベコッとめり込むと、亀裂を生じながら巨大なクレーターを作った。土埃が盛大に巻き起こり、砕かれた石つぶが風に乗り兵士たちに当たる。そして衝撃に巻き込まれた幾人もの兵士たちが、豪快に吹き飛ばされた。
格闘系複合スキル〈才能〉 を持つヴァルトは、肉体を操作して拳のパワーを高めていた。更に落下していくスピードと強化魔法の恩恵を受けて、通常よりも強力な破壊力を生み出している。
「アイオン族だと!?」
拳圧でおこった風でよろめきながら、中隊の指揮官が叫んだ。いきなり降って湧いてきた見ず知らずの男にも驚いたが、その背には、巨大な白い翼が生えている。
気位の高いアイオン族が、惑星ヒイシで翼を広げる姿なぞ、滅多に見られるものじゃなかった。
「おめーら全員、俺様がぶっ飛ばす!」
片手を前方につき出すと、掌を上に向けてクイクイッと誘うように動かし挑発した。
あまりに不遜な態度である。気位が高いというより、ただ偉そう、といった態度だ。
「アレを撃ち殺せ!!」
声を裏返らせた指揮官の合図で、一斉にヴァルトに向けて砲弾が飛んだ。
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