片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
119 / 882
ナルバ山の遺跡編

episode116

しおりを挟む
〈キューリさん、キューリさん、聴こえますかー?〉

 ブルニタルの肩に止まっていた小鳥が、突然カーティスの声を発し、本に目を通していたブルニタルはギョッとして、まだら模様の尻尾を逆立てた。

「カーティスさん脅かさないでくださいよっ!」

〈ははは。こりゃ失礼。キューリさん出してもらえますか?〉

「はい」

 何事かとこちらを向くキュッリッキに、ブルニタルは小鳥を指して手招きした。

 キュッリッキはすぐに駆け寄ってくると、ブルニタルの傍らに座り込んだ。

「なあに?」

〈ああキューリさん、実はちょっとお願いがあるのですが〉

「うん?」

〈今こうして通信用に使っている、私とギャリーの2羽の小鳥を、でっかくして遠隔操作する、なんて離れ業出来たりしますか?〉

「できるよ」

 あっさりと即答されて、向こうのどよめく声が聴こえてきた。

〈おぉ…それは助かります。で、どうすればいいでしょう〉

「じゃあ……」

 顎に指を当てて天井を見上げ、キュッリッキは少しだけ考えるふうにした。

「小鳥は常にカーティスとギャリーに固定しておいてください。アタシは小鳥たちと視界をリンクするので、逃げる段階になったら小鳥を操作するね」

〈なるほど、判りました。ではお願いします〉

 通信が切れると、キュッリッキはブルニタルから小鳥を自分の肩に移した。

「ちょっと外で向こうの作戦のお手伝いするから、誰か護衛してくれる? 外の方がやりやすいの」

「俺とメルヴィンで見ていよう」

「了解です」

 ガエルとメルヴィンは立ち上がると、キュッリッキの後に続いた。



「だそうですので、逃げる準備は万全です」

〈おっし、なら作戦開始するか!〉

 ギャリーの声に気合が入る。「言ってみるもんだねえ~」とマリオンがのほほんと言う声も流れてきた。

「では……”遠慮なく暴れて助けてとんずら大作戦”、開始しましょうか」

〈…その身も蓋もない恥ずかしい名称はヴァルトだな〉

「当たり前じゃないですか。では、お願いしますよ」

〈おっけー!〉

 通信が終わると、カーティスは小鳥を肩に移し、マーゴットから杖を受け取った。飾り気は一切なかったが、呪文がびっしり彫り込まれた銀の杖である。

「ヴァルト、タルコット、ハーマンは大いに暴れてください。ルーファスは私とマーゴットの護衛です」

 了解、と各々から声があがる。

「強化魔法を掛け終えたら、開始しますよ」

 銀の杖がゆるやかに光りだす。呪文の詠唱は一切しない。強化魔法の呪文は全て杖に彫り込んであるため、詠唱を必要としないようになっていた。

「なあなあ、キューリが使ったみたいなチートサポートかけてくれ!」

「無理ですよ…」

 杖に意識を集中していたカーティスが、ガックリと肩を落とす。

 バチンと勢いよく掌に拳を叩きつけ、ヴァルトは眉をひそめた。

「クマ野郎に負けたくねえ!」

「ボクも負けるのは癪だな…」

 傍らで無表情に強化魔法を受けるタルコットに、挑発的な視線を向ける。

「タルコットにも負けないぜ俺様は!」

 肉弾戦になるヴァルトには、とくに念入りに強化魔法がかかる。ガエルと違って防御を気にしない性分のヴァルトは、被弾も酷かった。後々のことを考えると手が抜けない。

 タルコットは身につけている漆黒の甲冑に、幾重にも防御魔法が埋め込まれた特注品なのもあり、ある程度は自分でやってくれる。

 ふうっと息を吐き出し、カーティスは銀の杖を下げた。

「強化完了です」

「よし、いくぜ!!」
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,335pt お気に入り:25,118

異世界超能力だより!~魔法は使えませんが超能力なら使えます~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:232

追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:1,705pt お気に入り:9,116

処理中です...