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ナルバ山の遺跡編
episode114
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「そういえばさあ、いっぱいいたソレル王国兵をどうやっつけたの? 中隊規模だったんじゃない?」
ファニーの興味の矛先が、ライオン傭兵団に向く。
「ガエルとメルヴィンが、サクサクーって倒しちゃったよ。凄かったんだから」
「いっくら最高ランクのスキル〈才能〉揃いっていっても、200人近くを2人でとか、無理くない?」
疑いの眼差しを隠そうともしないファニーに、メルヴィンがにっこり笑う。
「そこはリッキーさんの、チートな召喚サポートがあったので、出来たんですよ」
メルヴィンが戦闘の時のことなどを説明すると、ファニーとハドリーは意外そうな表情を浮かべてキュッリッキを見た。
「へ~、アンタいつの間に、そんな風に召喚を使えるようになったのよー」
「サポートに徹するとか珍しいな」
「だって、アタシの担当は、支援強化だったんだも~ん」
大きな組織に招かれると、大抵召喚の圧倒的な力で、一気に敵を掃討させられていた。それを知っているファニーとハドリーは、キュッリッキの力を巧く使っていて、それをキュッリッキが喜んでいることに感心していた。
何でもかんでも、キュッリッキに殺させないやり方に、2人は好感を持った。
「アルケラの子たちの凄さをみんなに判ってもらえて、アタシ嬉しいの」
いろんな事が出来るってことを、まず知ってほしいと常々思っていたからだ。
キュッリッキは出っ張りの乏しい胸を突き出して、両手を腰に当てる。
「まあ、アタシがいれば、誰でも超人以上になれるってこと!」
シ・アティウスはうんざりしていた。
目の前の詰問官は、同じ質問をしつこく繰り返し、唾を飛ばしながら喚きたてる。気に入らない回答を得ると、途端に机を叩き椅子を蹴った。
そして急に猫なで声を発し、甘い一面を覗かせ、すぐ元に戻る。
感情の一切が削ぎ落とされたような無表情を動かすことなく、シ・アティウスは詰問官を見つめていた。
頭にあるのはただ、ナルバ山の遺跡のことだけだ。
遺跡の状態は極めて良く、不可解なエグザイル・システムのようなものも発見し、本腰を入れて調査をしていたまさにその時、ソレル王国の軍隊がやってきて拘束された。
雇ったフリーの傭兵は2人、しかし数が多すぎて勝ち目はなく、あのあとどうなったかについて、関心は一切ない。願わくば遺跡を死守してくれていれば嬉しいとは思っている。そしてそれはありえないだろうことも判っていた。
シ・アティウスにとってソレル王国が介入してくるのは想定内だった。無駄な時間を省くため、自らの身分を明らかし、ベルトルドのハンコ入り書類も提示したが、釈放される気配はない。
ハワドウレ皇国副宰相直轄の研究機関所属である。皇国の属国にしか過ぎないソレル王国が、副宰相の部下に手を出したのだ。要人ではないが、すでに外交問題レベルだ。それでもソレル王国は、不当にシ・アティウスを拘束し続けている。
ナルバ山の遺跡が大きく関係しているのは誰でも判るが、シ・アティウスもまだ気づいていないあの遺跡の謎を、この国は掴んでいる。容易に推察できた。そのことで、シ・アティウスがどこまで掴んでいるのかを調べるために、不当な拘束を続けているのだ。
自分が拘束されたことはすぐベルトルドに伝わっただろう。それならそのうち、なんらかのリアクションがあるのも予想できる。
記憶スキル〈才能〉を持つシ・アティウスは、戦闘などの野蛮的行為は範疇外なので、自ら行動を起こすことは考えていない。
今すぐにでも遺跡に駆けつけたいが、事態が急変することを待ち望み、詰問官の取り調べに耐えることにしていた。
ファニーの興味の矛先が、ライオン傭兵団に向く。
「ガエルとメルヴィンが、サクサクーって倒しちゃったよ。凄かったんだから」
「いっくら最高ランクのスキル〈才能〉揃いっていっても、200人近くを2人でとか、無理くない?」
疑いの眼差しを隠そうともしないファニーに、メルヴィンがにっこり笑う。
「そこはリッキーさんの、チートな召喚サポートがあったので、出来たんですよ」
メルヴィンが戦闘の時のことなどを説明すると、ファニーとハドリーは意外そうな表情を浮かべてキュッリッキを見た。
「へ~、アンタいつの間に、そんな風に召喚を使えるようになったのよー」
「サポートに徹するとか珍しいな」
「だって、アタシの担当は、支援強化だったんだも~ん」
大きな組織に招かれると、大抵召喚の圧倒的な力で、一気に敵を掃討させられていた。それを知っているファニーとハドリーは、キュッリッキの力を巧く使っていて、それをキュッリッキが喜んでいることに感心していた。
何でもかんでも、キュッリッキに殺させないやり方に、2人は好感を持った。
「アルケラの子たちの凄さをみんなに判ってもらえて、アタシ嬉しいの」
いろんな事が出来るってことを、まず知ってほしいと常々思っていたからだ。
キュッリッキは出っ張りの乏しい胸を突き出して、両手を腰に当てる。
「まあ、アタシがいれば、誰でも超人以上になれるってこと!」
シ・アティウスはうんざりしていた。
目の前の詰問官は、同じ質問をしつこく繰り返し、唾を飛ばしながら喚きたてる。気に入らない回答を得ると、途端に机を叩き椅子を蹴った。
そして急に猫なで声を発し、甘い一面を覗かせ、すぐ元に戻る。
感情の一切が削ぎ落とされたような無表情を動かすことなく、シ・アティウスは詰問官を見つめていた。
頭にあるのはただ、ナルバ山の遺跡のことだけだ。
遺跡の状態は極めて良く、不可解なエグザイル・システムのようなものも発見し、本腰を入れて調査をしていたまさにその時、ソレル王国の軍隊がやってきて拘束された。
雇ったフリーの傭兵は2人、しかし数が多すぎて勝ち目はなく、あのあとどうなったかについて、関心は一切ない。願わくば遺跡を死守してくれていれば嬉しいとは思っている。そしてそれはありえないだろうことも判っていた。
シ・アティウスにとってソレル王国が介入してくるのは想定内だった。無駄な時間を省くため、自らの身分を明らかし、ベルトルドのハンコ入り書類も提示したが、釈放される気配はない。
ハワドウレ皇国副宰相直轄の研究機関所属である。皇国の属国にしか過ぎないソレル王国が、副宰相の部下に手を出したのだ。要人ではないが、すでに外交問題レベルだ。それでもソレル王国は、不当にシ・アティウスを拘束し続けている。
ナルバ山の遺跡が大きく関係しているのは誰でも判るが、シ・アティウスもまだ気づいていないあの遺跡の謎を、この国は掴んでいる。容易に推察できた。そのことで、シ・アティウスがどこまで掴んでいるのかを調べるために、不当な拘束を続けているのだ。
自分が拘束されたことはすぐベルトルドに伝わっただろう。それならそのうち、なんらかのリアクションがあるのも予想できる。
記憶スキル〈才能〉を持つシ・アティウスは、戦闘などの野蛮的行為は範疇外なので、自ら行動を起こすことは考えていない。
今すぐにでも遺跡に駆けつけたいが、事態が急変することを待ち望み、詰問官の取り調べに耐えることにしていた。
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