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ナルバ山の遺跡編
episode113
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ソレル王国軍が再び現れないか警戒は続けていたが、とくにすることもないので、ガエルとブルニタルはそれぞれ離れたところで座っていた。残りの4人は小さな輪を囲んで、談笑を楽しんでいる。
ファニーにゲシゲシ足蹴にされていたキュッリッキは、その後目を覚ましたが、身体中がジクジク痛んで、不思議そうに眉をしかめっぱなしだ。また騒がれても面倒かと、その場にいた全員は、あえて口をつぐんでいた。
「神殿の中は一直線の通路と、例のエグザイル・システムのようなものしかありませんでした」
「そうなんだ~。んで、どんなものだったの?」
外に居たキュッリッキのために、メルヴィンが見てきたことを説明してくれている。
「半円形の台座の上に、ガラスのような透明な柩にも似た箱が、真っ直ぐ立てられているだけでした。エグザイル・システムのようなもの、という表現が当てはまるのかどうか、外見だけではそうは見えませんでしたけどね」
「箱なんだ。うーん、何だろうね」
自分の目で見てみたい気もするが、神殿に入るのだけは絶対に嫌だった。意識をこらせば、神殿からの怖い気配はジワジワ感じられる。入るのは危険だと、本能も警鐘を鳴らしているのだ。
「そうそう」
「うん?」
「さっきオレ、副宰相のナマ声聴いちゃったよ。リッキーのこと褒められなくて、残念そうだったぞ」
「えー、そーなの~? じゃあ、この任務終わったら、いっぱい褒めてもらいに行こうっと」
嬉しそうに言うキュッリッキに、ファニーが身を乗り出す。
「なによアンタ、ハーメンリンナに出入りできるわけ?」
「えっへへん! 通行証作ってもらったんだよー」
キュッリッキは得意気にファニーを見る。
「いいなーいいなー、ハーメンリンナに可愛い洋服屋さんがあるっていうじゃん。一回行ってみたいんだよね~。買うと高そうだけど」
「じゃあ、じゃあ、任務終わったら一緒に行こうよ」
「行く行く!」
「動く箱に乗って移動できるんだよ」
「なにソレ~」
盛り上がる女性陣2人をよそに、メルヴィンがそっとハドリーに耳打ちする。
「一部貴族・高官専用の、特別通行証なんです…」
「………ず、随分気に入られたみたいっすね」
「ええ、猛烈に好かれているようです」
「まあ、嫌われるよりは良い」
今のところは、キュッリッキも仲間の一員として溶け込んでいるようで、ハドリーは少し安心していた。
いつも新しい所で馴染めず、泣きながら、傷つきながら帰ってきていたキュッリッキ。自らの不幸な生い立ちが、仲間たちの中に馴染もうとする心を邪魔してきたからだ。
エルダー街に引っ越してから少しして、キュッリッキが会いに来てくれたとき、ライオン傭兵団にちょっとずつ馴染んできたと喜んでいた。みんな自分を仲間だと受け入れくれて、優しくしてくれるとはしゃいで言っていた。
翼のことを見られて、不安な相手もいるらしいが、後ろ盾の副宰相にも随分気に入られているようで、ハドリーは安堵した。
(今度はもう、泣いて戻ってくることはなさそうだな)
ハーツイーズのアパートの、キュッリッキが使っていた部屋は、もう正式に解約してもいいだろう。帰ったらギルドで手続きしてこようと、ハドリーは思っていた。
ファニーにゲシゲシ足蹴にされていたキュッリッキは、その後目を覚ましたが、身体中がジクジク痛んで、不思議そうに眉をしかめっぱなしだ。また騒がれても面倒かと、その場にいた全員は、あえて口をつぐんでいた。
「神殿の中は一直線の通路と、例のエグザイル・システムのようなものしかありませんでした」
「そうなんだ~。んで、どんなものだったの?」
外に居たキュッリッキのために、メルヴィンが見てきたことを説明してくれている。
「半円形の台座の上に、ガラスのような透明な柩にも似た箱が、真っ直ぐ立てられているだけでした。エグザイル・システムのようなもの、という表現が当てはまるのかどうか、外見だけではそうは見えませんでしたけどね」
「箱なんだ。うーん、何だろうね」
自分の目で見てみたい気もするが、神殿に入るのだけは絶対に嫌だった。意識をこらせば、神殿からの怖い気配はジワジワ感じられる。入るのは危険だと、本能も警鐘を鳴らしているのだ。
「そうそう」
「うん?」
「さっきオレ、副宰相のナマ声聴いちゃったよ。リッキーのこと褒められなくて、残念そうだったぞ」
「えー、そーなの~? じゃあ、この任務終わったら、いっぱい褒めてもらいに行こうっと」
嬉しそうに言うキュッリッキに、ファニーが身を乗り出す。
「なによアンタ、ハーメンリンナに出入りできるわけ?」
「えっへへん! 通行証作ってもらったんだよー」
キュッリッキは得意気にファニーを見る。
「いいなーいいなー、ハーメンリンナに可愛い洋服屋さんがあるっていうじゃん。一回行ってみたいんだよね~。買うと高そうだけど」
「じゃあ、じゃあ、任務終わったら一緒に行こうよ」
「行く行く!」
「動く箱に乗って移動できるんだよ」
「なにソレ~」
盛り上がる女性陣2人をよそに、メルヴィンがそっとハドリーに耳打ちする。
「一部貴族・高官専用の、特別通行証なんです…」
「………ず、随分気に入られたみたいっすね」
「ええ、猛烈に好かれているようです」
「まあ、嫌われるよりは良い」
今のところは、キュッリッキも仲間の一員として溶け込んでいるようで、ハドリーは少し安心していた。
いつも新しい所で馴染めず、泣きながら、傷つきながら帰ってきていたキュッリッキ。自らの不幸な生い立ちが、仲間たちの中に馴染もうとする心を邪魔してきたからだ。
エルダー街に引っ越してから少しして、キュッリッキが会いに来てくれたとき、ライオン傭兵団にちょっとずつ馴染んできたと喜んでいた。みんな自分を仲間だと受け入れくれて、優しくしてくれるとはしゃいで言っていた。
翼のことを見られて、不安な相手もいるらしいが、後ろ盾の副宰相にも随分気に入られているようで、ハドリーは安堵した。
(今度はもう、泣いて戻ってくることはなさそうだな)
ハーツイーズのアパートの、キュッリッキが使っていた部屋は、もう正式に解約してもいいだろう。帰ったらギルドで手続きしてこようと、ハドリーは思っていた。
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