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ナルバ山の遺跡編
episode111
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「副宰相のナマ声、オレ初めて聴いたぜ…」
緊張を解くように、ハドリーがふぅっと息を吐き出して言う。
「胃が痛くなるので、あまり聴いていたくないんですけどね」
苦笑しながらメルヴィンが応じた。ガエルも黙って頷く。眼鏡をクイッと手で押し上げて、ブルニタルは彼らを振り向いた。
「神殿から出ましょう。外の様子も気になりますし、ここに居てもしょうがないでしょうから」
「そうしましょう」
4人は頷いた。
「みんなまだかな~」
壁にもたれかかって、床で転がったり丸まったりしているフェンリルを構いながら、神殿の入口を見つめる。ファニーは目を覚まさず、話し相手がいなくなって、急激に退屈感に蝕まれつつあった。
暇つぶしに何か襲ってこないか意識をこらしたが、哨戒に出している綿毛たちは、何も見つけていない。
「つまんない」
神殿の入口から離れていると、先ほど感じたような、足がすくむほどの怖さはなかった。しかし相変わらず嫌な気配のようなものは、ヒシヒシと感じ続けていた。
戦場での危険感知とは若干違う。敵意といったようなものでもない。
ただ、怖いと感じるのだ。
キュッリッキはそうした勘を、これまで外したことがない。キュッリッキだけが感じる何かが、この神殿にはあるのだろうか。心の中で警鐘は鳴りっぱなしだったが、今はまだ小さい。神殿の中に入らなければ大丈夫だと、キュッリッキには確信があった。
「早くみんな戻ってきたら、気にしなくてもすむのに~」
ちょっとふくれっ面になってぼやくと、ファニーが身じろぎする気配があった。
「う……ン」
何度か小さく呻いたあと、ファニーは身体を僅かに揺らし、薄らと目を開いた。
「ファニー起きた!」
キュッリッキは壁から離れると、ファニーの顔の前に膝を揃えて座り直した。身を乗り出して顔を覗き込む。
「その元気な声は……リッキー?」
「うんっ!」
嬉しそうにキュッリッキは首を縦に振った。
ファニーはゆるゆると上体を起こすと、壁にもたれかかって頭を軽く振った。まるで悪夢をみて目が覚めたような、不快感を貼り付けたような表情で辺りを見回す。
「縄切ってくれたんだ、あんがと」
「どーいたしまして。アタシじゃないけど」
「ところで、ハドリーどこいったの?」
「神殿の中だよ」
そう言って神殿を指す。
「ふうん…?」
「アタシも仕事でここにきたんだけど、仲間を案内するのに神殿入っていったよ」
「あれ~? アンタってば毎日が休日状態だったのに、仕事見つかったんだ?」
大きな目をさらに大きくして驚くファニーを、キュッリッキは憮然と睨みつけた。
「もうとっくの2週間前に、決まっちゃってるもん!」
「えーーー!! だったらさっさと連絡くれたらいいじゃないのもー!」
「年中無休のファニーがちっとも家に寄り付かないから、ドコにいるか判んなくて連絡も取れないんだってば!」
怒鳴るように言って、キュッリッキはぷっくりと両頬を膨らませて抗議する。それを見てファニーは誤魔化すように、引き攣りながら手をヒラヒラさせて笑った。
緊張を解くように、ハドリーがふぅっと息を吐き出して言う。
「胃が痛くなるので、あまり聴いていたくないんですけどね」
苦笑しながらメルヴィンが応じた。ガエルも黙って頷く。眼鏡をクイッと手で押し上げて、ブルニタルは彼らを振り向いた。
「神殿から出ましょう。外の様子も気になりますし、ここに居てもしょうがないでしょうから」
「そうしましょう」
4人は頷いた。
「みんなまだかな~」
壁にもたれかかって、床で転がったり丸まったりしているフェンリルを構いながら、神殿の入口を見つめる。ファニーは目を覚まさず、話し相手がいなくなって、急激に退屈感に蝕まれつつあった。
暇つぶしに何か襲ってこないか意識をこらしたが、哨戒に出している綿毛たちは、何も見つけていない。
「つまんない」
神殿の入口から離れていると、先ほど感じたような、足がすくむほどの怖さはなかった。しかし相変わらず嫌な気配のようなものは、ヒシヒシと感じ続けていた。
戦場での危険感知とは若干違う。敵意といったようなものでもない。
ただ、怖いと感じるのだ。
キュッリッキはそうした勘を、これまで外したことがない。キュッリッキだけが感じる何かが、この神殿にはあるのだろうか。心の中で警鐘は鳴りっぱなしだったが、今はまだ小さい。神殿の中に入らなければ大丈夫だと、キュッリッキには確信があった。
「早くみんな戻ってきたら、気にしなくてもすむのに~」
ちょっとふくれっ面になってぼやくと、ファニーが身じろぎする気配があった。
「う……ン」
何度か小さく呻いたあと、ファニーは身体を僅かに揺らし、薄らと目を開いた。
「ファニー起きた!」
キュッリッキは壁から離れると、ファニーの顔の前に膝を揃えて座り直した。身を乗り出して顔を覗き込む。
「その元気な声は……リッキー?」
「うんっ!」
嬉しそうにキュッリッキは首を縦に振った。
ファニーはゆるゆると上体を起こすと、壁にもたれかかって頭を軽く振った。まるで悪夢をみて目が覚めたような、不快感を貼り付けたような表情で辺りを見回す。
「縄切ってくれたんだ、あんがと」
「どーいたしまして。アタシじゃないけど」
「ところで、ハドリーどこいったの?」
「神殿の中だよ」
そう言って神殿を指す。
「ふうん…?」
「アタシも仕事でここにきたんだけど、仲間を案内するのに神殿入っていったよ」
「あれ~? アンタってば毎日が休日状態だったのに、仕事見つかったんだ?」
大きな目をさらに大きくして驚くファニーを、キュッリッキは憮然と睨みつけた。
「もうとっくの2週間前に、決まっちゃってるもん!」
「えーーー!! だったらさっさと連絡くれたらいいじゃないのもー!」
「年中無休のファニーがちっとも家に寄り付かないから、ドコにいるか判んなくて連絡も取れないんだってば!」
怒鳴るように言って、キュッリッキはぷっくりと両頬を膨らませて抗議する。それを見てファニーは誤魔化すように、引き攣りながら手をヒラヒラさせて笑った。
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