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ナルバ山の遺跡編
episode107
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そんなに距離は進まず、直ぐに目的の場所に着いたようで、小さな窖だった。メルヴィンが足元にスッと灯りをかざすと、ひと組の男女が倒れている姿が浮き上がった。
「あれっ?」
メルヴィンの後ろから顔を出すと、キュッリッキは跳ね上がって驚き、勢い付けて男女に飛びついた。
「ちょっとハドリーとファニーじゃない!! どうしたのよねえ、起きてってばっ!!」
意識を失ってる2人の胸ぐらを掴んで、逞しくグイッと引き寄せると、容赦のない勢いでブンブン前後に揺さぶる。揺さぶられるたびに、2人の頭がゴチンゴチンと当たって、見ていて痛そうだ。
「リッキーさん、それはちょっと…」
メルヴィンがやんわりと止めるが、聞く耳持たずで2人をブンブン揺さぶり回したあと、ファニーのほうを乱暴に投げ出し、あいた片手でハドリーの髭面に往復ビンタを叩き込む。手加減なしの容赦なし。狭い窖にビシバシと音が反響する。
「い…いででっ……痛い痛いいい加減にしろコラッ!!」
さすがに気づいたハドリーが、キュッリッキの手を振りほどこうとして身をもがいた。だが、腕も身体も厳重に縛り上げられていて、身体をクネクネと動かすだけだった。
「気がついたんだね、ハドリー!」
にぱっと笑顔のキュッリッキを、ハドリーは目を細めて冷ややかに見やり、深々とため息をついた。
「あのな、もうちょっと優しく起こしてくれ…」
「えへへ…ゴメンなの」
ちっとも反省してないキュッリッキをもう一度睨んで、ハドリーは身体を横に向けて腰を上げる。
「この短剣で縄を切ってくれ。それとファニーを起こしてやらねーと」
「うん」
「オレがやりましょう。これを持っててください、リッキーさん」
黙って成り行きを見ていたメルヴィンは、灯りをキュッリッキに手渡して、ハドリーの腰にある短剣を引き抜いた。
「これだけ頑丈に縛っていたら、リッキーさんの力じゃ、かえって君を傷つけてしまいそうです」
「うむ、確かに…」
「えー…」
心外なんだよーと文句を垂れるキュッリッキを無視して、縄から解放されたハドリーは、往復ビンタされた頬を痛そうに撫でる。
メルヴィンはファニーの縄も切りはずしてやると、そっと抱き起こして、軽く揺すった。
「すまん、ちょっと起こすの待ってくれ」
ハドリーは素早くメルヴィンの手を抑えて止める。メルヴィンは不思議そうに首をかしげた。
「?」
ハドリーは軽く肩をすくめる。
「そいつが目を覚ますと猛烈に喧しいから、先に色々話しておきたいことがあるんだ」
「……判りました」
メルヴィンは頷くと、そのままファニーを抱き上げた。
「外に出ましょうか」
「あれっ?」
メルヴィンの後ろから顔を出すと、キュッリッキは跳ね上がって驚き、勢い付けて男女に飛びついた。
「ちょっとハドリーとファニーじゃない!! どうしたのよねえ、起きてってばっ!!」
意識を失ってる2人の胸ぐらを掴んで、逞しくグイッと引き寄せると、容赦のない勢いでブンブン前後に揺さぶる。揺さぶられるたびに、2人の頭がゴチンゴチンと当たって、見ていて痛そうだ。
「リッキーさん、それはちょっと…」
メルヴィンがやんわりと止めるが、聞く耳持たずで2人をブンブン揺さぶり回したあと、ファニーのほうを乱暴に投げ出し、あいた片手でハドリーの髭面に往復ビンタを叩き込む。手加減なしの容赦なし。狭い窖にビシバシと音が反響する。
「い…いででっ……痛い痛いいい加減にしろコラッ!!」
さすがに気づいたハドリーが、キュッリッキの手を振りほどこうとして身をもがいた。だが、腕も身体も厳重に縛り上げられていて、身体をクネクネと動かすだけだった。
「気がついたんだね、ハドリー!」
にぱっと笑顔のキュッリッキを、ハドリーは目を細めて冷ややかに見やり、深々とため息をついた。
「あのな、もうちょっと優しく起こしてくれ…」
「えへへ…ゴメンなの」
ちっとも反省してないキュッリッキをもう一度睨んで、ハドリーは身体を横に向けて腰を上げる。
「この短剣で縄を切ってくれ。それとファニーを起こしてやらねーと」
「うん」
「オレがやりましょう。これを持っててください、リッキーさん」
黙って成り行きを見ていたメルヴィンは、灯りをキュッリッキに手渡して、ハドリーの腰にある短剣を引き抜いた。
「これだけ頑丈に縛っていたら、リッキーさんの力じゃ、かえって君を傷つけてしまいそうです」
「うむ、確かに…」
「えー…」
心外なんだよーと文句を垂れるキュッリッキを無視して、縄から解放されたハドリーは、往復ビンタされた頬を痛そうに撫でる。
メルヴィンはファニーの縄も切りはずしてやると、そっと抱き起こして、軽く揺すった。
「すまん、ちょっと起こすの待ってくれ」
ハドリーは素早くメルヴィンの手を抑えて止める。メルヴィンは不思議そうに首をかしげた。
「?」
ハドリーは軽く肩をすくめる。
「そいつが目を覚ますと猛烈に喧しいから、先に色々話しておきたいことがあるんだ」
「……判りました」
メルヴィンは頷くと、そのままファニーを抱き上げた。
「外に出ましょうか」
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