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ナルバ山の遺跡編
episode104
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「カーティスさん、聞こえますか?」
ブルニタルは血の気のひいた顔で、キュッリッキの肩に留まる小鳥に話しかける。
見るに堪えないほどの無残な死体の山、湿度を含む空気にのった濃厚な血臭、フェンリルが攻撃して爆ぜる人間の残骸、それらを延々見せつけられながらも、次第にブルニタルも慣れが生じてしまっていた。
慣れてしまった方が、何倍も精神と身体が楽だった。もう吐き気も起きてこない。
〈こちらカーティスです〉
やや間を置いたあと、のんびりとしたカーティスの声が、小鳥の嘴を通じて伝わってきた。
「こちらはまもなく、ナルバ山麓の中隊の処理が終わりそうです」
〈えっ!?〉
小鳥の嘴から、カーティスとその周辺にいる仲間たちのどよめきも伝わってきた。
〈もう目的地に着いて、作戦を発動しちゃっているんですか?〉
「はい。とっくに」
〈やいブルネコ!! いくらクマがちょっとだけ強くったって、中隊相手にそんな張り切れるもんか!〉
カーティスを押しのけて、通信用の小鳥に食いかかるヴァルトの姿が、容易に想像できるくらいの、騒々しい声が伝わってきた。
「メルヴィンもいるんだよ」
〈そんなの判ってる! キューリは黙ってろっ!〉
キュッリッキは「べーっ」と舌を出し、ツンッとそっぽを向いた。
「キューリさんの召喚のおかげで、空を飛んで移動もスムーズにすみましたし、召喚のサポートを受けた2人は、鬼神の如き暴れぶりです。戦闘を開始してまだ、1時間も経っていませんよ」
報告を続けるブルニタルの声は、次第に弾んでいった。
〈なんだそのサポートってええ!! ずりーぞクマああああ!!〉
頭髪を掻き毟りながら絶叫する、ヴァルトの姿が目に浮かぶ雄叫びだった。
〈ボクもそっちがよかったな……〉
ボソリとしたタルコットの声が、小さく聞こえてきた。
〈おいカーティス! こっちは俺様が翔んで行って、一人で全部処理してやる!!〉
〈ダメですよ、救出部隊と足並み揃わないと意味がないんですから〉
〈どうせヨードーすんだったら足並み揃わなくてもいいじゃんか! クマ野郎に負けるのだけは許さねー!!〉
宥める仲間たちの声が、ガヤガヤ伝わってくる。
〈怪我したらどうするんですか。回復サポートのマーゴットさんも、一緒じゃないと危ないでしょう〉
〈そんなドヘタクソ女居ても居なくても関係ねーだろ!〉
〈ちょっとそれ、聞き捨てならないわ〉
〈最低ランクの魔法使いがイキがってんじゃねーよ! ヘタクソ!!〉
〈私は上手いから同行しているんです。頭の足らない人に、ヘンな言いがかりつけられたくないわ〉
いつの間にか嘴の向こう側で喧嘩が始まってしまい、キュッリッキとブルニタルは、呆れ顔で同時にため息をついた。
「ブルニタルさん、リッキーさん、終わりましたよー」
こちらのほうに歩いてきながら、メルヴィンが笑顔で手を振った。
「お疲れ様ですメルヴィン、ガエル」
「お疲れさま~」
メルヴィンから若干遅れて、満足顔のガエルが合流した。
「なんだか、ヴァルトさんとマーゴットさんの声が、聞こえて来てましたが」
キュッリッキが無言で、ブルニタルの指にとまる小鳥を指す。
ブルニタルは血の気のひいた顔で、キュッリッキの肩に留まる小鳥に話しかける。
見るに堪えないほどの無残な死体の山、湿度を含む空気にのった濃厚な血臭、フェンリルが攻撃して爆ぜる人間の残骸、それらを延々見せつけられながらも、次第にブルニタルも慣れが生じてしまっていた。
慣れてしまった方が、何倍も精神と身体が楽だった。もう吐き気も起きてこない。
〈こちらカーティスです〉
やや間を置いたあと、のんびりとしたカーティスの声が、小鳥の嘴を通じて伝わってきた。
「こちらはまもなく、ナルバ山麓の中隊の処理が終わりそうです」
〈えっ!?〉
小鳥の嘴から、カーティスとその周辺にいる仲間たちのどよめきも伝わってきた。
〈もう目的地に着いて、作戦を発動しちゃっているんですか?〉
「はい。とっくに」
〈やいブルネコ!! いくらクマがちょっとだけ強くったって、中隊相手にそんな張り切れるもんか!〉
カーティスを押しのけて、通信用の小鳥に食いかかるヴァルトの姿が、容易に想像できるくらいの、騒々しい声が伝わってきた。
「メルヴィンもいるんだよ」
〈そんなの判ってる! キューリは黙ってろっ!〉
キュッリッキは「べーっ」と舌を出し、ツンッとそっぽを向いた。
「キューリさんの召喚のおかげで、空を飛んで移動もスムーズにすみましたし、召喚のサポートを受けた2人は、鬼神の如き暴れぶりです。戦闘を開始してまだ、1時間も経っていませんよ」
報告を続けるブルニタルの声は、次第に弾んでいった。
〈なんだそのサポートってええ!! ずりーぞクマああああ!!〉
頭髪を掻き毟りながら絶叫する、ヴァルトの姿が目に浮かぶ雄叫びだった。
〈ボクもそっちがよかったな……〉
ボソリとしたタルコットの声が、小さく聞こえてきた。
〈おいカーティス! こっちは俺様が翔んで行って、一人で全部処理してやる!!〉
〈ダメですよ、救出部隊と足並み揃わないと意味がないんですから〉
〈どうせヨードーすんだったら足並み揃わなくてもいいじゃんか! クマ野郎に負けるのだけは許さねー!!〉
宥める仲間たちの声が、ガヤガヤ伝わってくる。
〈怪我したらどうするんですか。回復サポートのマーゴットさんも、一緒じゃないと危ないでしょう〉
〈そんなドヘタクソ女居ても居なくても関係ねーだろ!〉
〈ちょっとそれ、聞き捨てならないわ〉
〈最低ランクの魔法使いがイキがってんじゃねーよ! ヘタクソ!!〉
〈私は上手いから同行しているんです。頭の足らない人に、ヘンな言いがかりつけられたくないわ〉
いつの間にか嘴の向こう側で喧嘩が始まってしまい、キュッリッキとブルニタルは、呆れ顔で同時にため息をついた。
「ブルニタルさん、リッキーさん、終わりましたよー」
こちらのほうに歩いてきながら、メルヴィンが笑顔で手を振った。
「お疲れ様ですメルヴィン、ガエル」
「お疲れさま~」
メルヴィンから若干遅れて、満足顔のガエルが合流した。
「なんだか、ヴァルトさんとマーゴットさんの声が、聞こえて来てましたが」
キュッリッキが無言で、ブルニタルの指にとまる小鳥を指す。
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