102 / 882
ナルバ山の遺跡編
episode99
しおりを挟む 4人が着地すると、小鳥はもとの大きさに戻って、キュッリッキの肩にとまった。
「ご苦労様」
キュッリッキに労われて、小鳥は嬉しそうにピピッと鳴いた。
「さて…ここはどのへんでしょうか」
ブルニタルは早速地図を広げて、だいたいの位置の目星をつける。
「報告書にあったエグザイル・システムのようなものがある入口は、ここからだいぶ近いようです。恐らく見張りの兵がいる筈ですから、慎重に進みましょう」
3人とも頷いた。
麓にも山にも、身を隠す木々が生えていない。大きな岩もほとんど見当たらない。全てが剥き出しなので、敵味方丸見えだった。それに、まだ日中で明るく、見晴らしがいい。
「ねえ、周りの様子を確認するために、偵察出しておこっ」
そう提案すると、キュッリッキは何もない方角を凝視する。黄緑色の瞳に散らばる虹色の光彩が、より強い光を帯びていった。
キュッリッキが片手を前方に差し出す。そして、手招きするように掌を広げた。
「おいで」
そう一言だけ告げると、掌の上に、無数の小さな白い綿毛が召喚された。
「タンポポの綿毛……?」
ブルニタルはキュッリッキの肩ごしに、掌の上に揺蕩う白い綿毛を凝視した。
「この子たちに名前はないの。アルケラで名前があるのは、フェンリルみたいに神様たちだけ」
白い綿毛たちはふわりふわりと宙を舞ながら、フェンリルを囲むようにして輪を作った。フェンリルは身じろぎせず、目だけを動かし綿毛たちを見ている。
「タンポポの綿毛よりも、ずっとずっと優秀なんだよ」
キュッリッキはブリニタルにニヤリと笑ってみせると、しゃがみこんでフェンリルの周囲を舞う綿毛たちに告げた。
「この辺りに、アタシたちに敵対する武装した人間が居ないか、しっかり見てきてね」
綿毛たちは輪になったままふわ~っと宙に浮き上がると、パッと羽虫のように飛んで四散した。
「確かに、綿毛はあんな飛び方はせんな」
ガエルは面白そうに、口の端を上げて笑った。メルヴィンも感動したように頷く。
「3人とも、これを頭に乗っけてくれる?」
キュッリッキの掌には、3つの綿毛がフカフカ浮いていた。
首をかしげるガエルとメルヴィンと違い、ブルニタルは感極まった表情で綿毛をつまむと、頭の上にそっと乗せた。
「恐らく四散した綿毛たちの見た映像が、この綿毛を通じて、一種のテレパシーのようにして、私たちの脳裏に浮かぶんですよ。ですよね?」
「ぴんぽーん。正解」
すぐに理解してもらえて、キュッリッキは嬉しそに微笑んだ。
「なるほど~。それは便利ですね」
メルヴィンとガエルも、それぞれ頭に綿毛を乗せる。
「風で飛んでったりしないか? こいつは」
ガエルは黒い頭部に、小さな糸くずのように乗っている綿毛を指す。
「だいじょーぶ。タンポポの綿毛じゃないからね。見た目はちっさくっても、ちゃんと意思があるから」
キュッリッキは自信満々に、太鼓判を押した。
「ご苦労様」
キュッリッキに労われて、小鳥は嬉しそうにピピッと鳴いた。
「さて…ここはどのへんでしょうか」
ブルニタルは早速地図を広げて、だいたいの位置の目星をつける。
「報告書にあったエグザイル・システムのようなものがある入口は、ここからだいぶ近いようです。恐らく見張りの兵がいる筈ですから、慎重に進みましょう」
3人とも頷いた。
麓にも山にも、身を隠す木々が生えていない。大きな岩もほとんど見当たらない。全てが剥き出しなので、敵味方丸見えだった。それに、まだ日中で明るく、見晴らしがいい。
「ねえ、周りの様子を確認するために、偵察出しておこっ」
そう提案すると、キュッリッキは何もない方角を凝視する。黄緑色の瞳に散らばる虹色の光彩が、より強い光を帯びていった。
キュッリッキが片手を前方に差し出す。そして、手招きするように掌を広げた。
「おいで」
そう一言だけ告げると、掌の上に、無数の小さな白い綿毛が召喚された。
「タンポポの綿毛……?」
ブルニタルはキュッリッキの肩ごしに、掌の上に揺蕩う白い綿毛を凝視した。
「この子たちに名前はないの。アルケラで名前があるのは、フェンリルみたいに神様たちだけ」
白い綿毛たちはふわりふわりと宙を舞ながら、フェンリルを囲むようにして輪を作った。フェンリルは身じろぎせず、目だけを動かし綿毛たちを見ている。
「タンポポの綿毛よりも、ずっとずっと優秀なんだよ」
キュッリッキはブリニタルにニヤリと笑ってみせると、しゃがみこんでフェンリルの周囲を舞う綿毛たちに告げた。
「この辺りに、アタシたちに敵対する武装した人間が居ないか、しっかり見てきてね」
綿毛たちは輪になったままふわ~っと宙に浮き上がると、パッと羽虫のように飛んで四散した。
「確かに、綿毛はあんな飛び方はせんな」
ガエルは面白そうに、口の端を上げて笑った。メルヴィンも感動したように頷く。
「3人とも、これを頭に乗っけてくれる?」
キュッリッキの掌には、3つの綿毛がフカフカ浮いていた。
首をかしげるガエルとメルヴィンと違い、ブルニタルは感極まった表情で綿毛をつまむと、頭の上にそっと乗せた。
「恐らく四散した綿毛たちの見た映像が、この綿毛を通じて、一種のテレパシーのようにして、私たちの脳裏に浮かぶんですよ。ですよね?」
「ぴんぽーん。正解」
すぐに理解してもらえて、キュッリッキは嬉しそに微笑んだ。
「なるほど~。それは便利ですね」
メルヴィンとガエルも、それぞれ頭に綿毛を乗せる。
「風で飛んでったりしないか? こいつは」
ガエルは黒い頭部に、小さな糸くずのように乗っている綿毛を指す。
「だいじょーぶ。タンポポの綿毛じゃないからね。見た目はちっさくっても、ちゃんと意思があるから」
キュッリッキは自信満々に、太鼓判を押した。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】私の嘘に気付かず勝ち誇る、可哀想な令嬢
横居花琉
恋愛
ブリトニーはナディアに張り合ってきた。
このままでは婚約者を作ろうとしても面倒なことになると考えたナディアは一つだけ誤解させるようなことをブリトニーに伝えた。
その結果、ブリトニーは勝ち誇るようにナディアの気になっていた人との婚約が決まったことを伝えた。
その相手はナディアが好きでもない、どうでもいい相手だった。

辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる