片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ナルバ山の遺跡編

episode98

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「たっ、高いですね」

 アワワッと小鳥の羽根にしがみついて、ブルニタルは身を沈めている。

「火脹れが出来ないよう、フードをしっかりかぶっておけ」

「はーい」

 ガエルの大きな掌で頭を押さえつけられ、キュッリッキは首を引っ込めていた。

 キュッリッキが召喚していた、黄緑色の羽根を持つ巨大化した小鳥の背に乗り、確保部隊はナルバ山を目指して、西に飛んでいた。

 小鳥はかなりのスピードで飛んでいるのか、前方から吹き付ける風が強く、また陽射しも強い。軽くてすぐ吹き飛ばされそうなキュッリッキを、ガエルは頭を押さえて飛ばないようにしていた。それに、メルヴィン、ガエル、ブルニタルはまだいいが、キュッリッキのような白い肌は、こんな強い直射日光に当たると火傷してしまう。なので、フードも飛ばないようにするためでもあった。

「アタシたち、エグザイル・システムのようなものを確保したあと、その場でずっと見張りでもしておけばいいの?」

「そうですね。占拠してその場を確保し、後に救出されてくる研究者たちの調査が円滑に続行出来るよう、救出部隊と我々で護衛も兼ねることになります。さすがにあの大きなシステムを持ち帰るのは難しいでしょう、エグザイル・システムと同じ大きさならば」

「んー、持ち帰れないことはないけど、動かさないほうがいいんだよね、ああいうのって」

 事も無げに言うキュッリッキに、ブルニタルはズズイっと詰め寄った。

「持ち帰れるんですか!?」

「う、うん」

「どうやって!」

「アルケラの子たちに手伝ってもらえば、造作もないよ」

 キュッリッキの膝の上で、フェンリルが小さく鼻を鳴らした。隠れている必要もないので姿を現している。

 二人の会話を聞きながら、

(それなら引越しは一人でも出来たんでは…)

 と、メルヴィンは思ったが黙っていた。

「召喚スキル〈才能〉とは便利な力ですね。万能じゃないですか」

 必死にメモをするブルニタルを困ったように見やり、キュッリッキは肩をすくめた。

 歩けば半日はかかる距離を、優雅な空の旅で、2時間ほどで目的地手前まで到達していた。

「あの山が、ナルバ山でしょうか」

 メルヴィンが前方を指すと、頂きに雲をまとわせた緑のない岩肌の、大きな山が見えてきた。

「あの山で間違いないです」

 ブルニタルが断言すると、キュッリッキは小鳥の背を軽く突っついた。

「そろそろ目的地だから、下から見えないようになってね」

 小鳥は小さく喉を鳴らし、了解の合図とした。

 ブルニタルはキュッリッキに、山の中腹辺りに鳥に降りてもらうよう指示をし、キュッリッキはそれを伝えた。しかし巨鳥が舞い降りるような場所が見当たらず、結局麓に着地することになった。

「戦闘が起きてもいいように、我々がいますから、大丈夫ですよ」

 メルヴィンにそう言われて、キュッリッキはひと安心した。

 潅木が乱雑に生える地面に音もなく着地すると、小鳥は背を斜めにして皆を滑り落とした。
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