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ナルバ山の遺跡編
episode97
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ライオン傭兵団は出発前に、幾人かの情報屋から、ソレル王国の現状についての情報を仕入れていた。さすがになにも判らず状態で乗り込むほど、素人ではない。
一つは軍の動きが慌ただしいこと。警務部の管轄へ強引に介入していて、命令系統がかなり乱雑気味だという。誤認逮捕や武力行使をして、市民感情を逆なでしているというのだ。
もう一つは、傭兵の動きに過敏になっているという。傭兵ギルドの身分証を携帯している傭兵たちを、無理矢理取り調べたり、嫌疑をかけたりもしているそうだ。
恐らく、ハワドウレ皇国のアルケラ研究機関ケレヴィルの研究者を、不当逮捕したことによる影響だとカーティスは睨んでいた。お偉方が密かに事を成すために、傭兵を駒のように使うのは常套手段である。
そのためライオン傭兵団は、2箇所のエグザイル・システムを利用して、ソレル王国への侵入を試みた。
首都アルイールよりまだ近い方にある、カバダ村のエグザイル・システムへ確保部隊が向かい、救出部隊と陽動部隊は、時間差をつけて首都アルイールのエグザイル・システムへ向かった。
幸いカバダ村のエグザイル・システムにはソレル王国軍は待機しておらず、警戒することもなくすんでいた。一方、救出部隊と陽動部隊が、ソレル王国軍に捕まったという連絡は、まだ入ってきていない。
「移動は徒歩になりますよね。もう出発したほうが良さそうです」
メルヴィンは荷物から日よけのための外套を出しながら、ブルニタルに顔を向ける。
「そうですね。こんな廃墟と化した村では、馬などの移動手段も取れないですし、もう出発しましょう」
「ねえ、空から行ったら早いよね?」
キュッリッキはブルニタルの肩を、ツンツンと突っついた。
「そりゃあ早いですよ。でも、魔法もサイ《超能力》も持っていませんから、空を行くのは無理ですね」
「空飛んでいけるよ」
「どうやって?」
「こうやって」
キュッリッキは肩にとまっていた黄緑色の小鳥を指に移らせると、そっと空に放った。
小鳥は数回羽ばたいたのち、銀色の光に包まれ、ドスンっという音を立てて地面に降りた。
「………!」
「デカイな」
ガエルは満足そうに頷いた。そして、日よけの外套を荷物から取り出した。
黄緑色の羽根に覆われた小鳥は、ガエル級が10人乗っても、余裕が有るほどの大きさになっていた。
ブルニタルもメルヴィンも、唖然と目を見開いて、デカくなった小鳥を凝視していた。
「この子に乗って行ったら、あっという間に着くよね」
キュッリッキは「えっへん」と胸を張った。
「キューリ、外套を着込んでおけ」
「うん」
ガエルに促され、キュッリッキも荷物から外套を引っ張り出す。
「召喚士は、なにかと便利なんですね」
メルヴィンは嬉しそうに笑った。
ブルニタルは目を白黒させながらも、その手はしっかりメモ帳に何事かを綴っていた。
一つは軍の動きが慌ただしいこと。警務部の管轄へ強引に介入していて、命令系統がかなり乱雑気味だという。誤認逮捕や武力行使をして、市民感情を逆なでしているというのだ。
もう一つは、傭兵の動きに過敏になっているという。傭兵ギルドの身分証を携帯している傭兵たちを、無理矢理取り調べたり、嫌疑をかけたりもしているそうだ。
恐らく、ハワドウレ皇国のアルケラ研究機関ケレヴィルの研究者を、不当逮捕したことによる影響だとカーティスは睨んでいた。お偉方が密かに事を成すために、傭兵を駒のように使うのは常套手段である。
そのためライオン傭兵団は、2箇所のエグザイル・システムを利用して、ソレル王国への侵入を試みた。
首都アルイールよりまだ近い方にある、カバダ村のエグザイル・システムへ確保部隊が向かい、救出部隊と陽動部隊は、時間差をつけて首都アルイールのエグザイル・システムへ向かった。
幸いカバダ村のエグザイル・システムにはソレル王国軍は待機しておらず、警戒することもなくすんでいた。一方、救出部隊と陽動部隊が、ソレル王国軍に捕まったという連絡は、まだ入ってきていない。
「移動は徒歩になりますよね。もう出発したほうが良さそうです」
メルヴィンは荷物から日よけのための外套を出しながら、ブルニタルに顔を向ける。
「そうですね。こんな廃墟と化した村では、馬などの移動手段も取れないですし、もう出発しましょう」
「ねえ、空から行ったら早いよね?」
キュッリッキはブルニタルの肩を、ツンツンと突っついた。
「そりゃあ早いですよ。でも、魔法もサイ《超能力》も持っていませんから、空を行くのは無理ですね」
「空飛んでいけるよ」
「どうやって?」
「こうやって」
キュッリッキは肩にとまっていた黄緑色の小鳥を指に移らせると、そっと空に放った。
小鳥は数回羽ばたいたのち、銀色の光に包まれ、ドスンっという音を立てて地面に降りた。
「………!」
「デカイな」
ガエルは満足そうに頷いた。そして、日よけの外套を荷物から取り出した。
黄緑色の羽根に覆われた小鳥は、ガエル級が10人乗っても、余裕が有るほどの大きさになっていた。
ブルニタルもメルヴィンも、唖然と目を見開いて、デカくなった小鳥を凝視していた。
「この子に乗って行ったら、あっという間に着くよね」
キュッリッキは「えっへん」と胸を張った。
「キューリ、外套を着込んでおけ」
「うん」
ガエルに促され、キュッリッキも荷物から外套を引っ張り出す。
「召喚士は、なにかと便利なんですね」
メルヴィンは嬉しそうに笑った。
ブルニタルは目を白黒させながらも、その手はしっかりメモ帳に何事かを綴っていた。
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