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ナルバ山の遺跡編
episode96
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ハワドウレ皇国があるワイ・メア大陸の、ちょうど反対側にあるモナルダ大陸。南の海岸地方の一部を、ハワドウレ皇国から統治を任された、メリロット子爵家によって興されたのがソレル王国だ。ソレル王国はとくに、超古代文明の遺跡が多く出土し、その遺跡から発見された名を取って、国の名としている。
ソレル王国が所有するエグザイル・システムは2つ。一つは首都アルイール、もう一つは、なぜか首都から遠く離れた辺境の小さな村カバダだった。
エグザイル・システムは物質転送装置で、世界中の至るところに存在している、超古代文明の遺産の一つと言われていた。人々はエグザイル・システムのあるところを中心に、村や町を興した。
カバダ村もきっとそうだったのだろうが、エグザイル・システムのある建物から外に出ると、砂に飲み込まれた廃墟があった。
「数十年くらいは経っていそうな光景ですね、ここ」
メルヴィンは眩しい太陽の光を遮るように、手をかざして目を細めた。外へ出た途端、眩しい光とむわっとした空気が押し寄せてきて、自然と不快げに顔が歪む。
石造りの神殿のような中にエグザイル・システムはあるが、こもる空気は黴臭く、新鮮な空気を求めて外に出ると、この湿度と熱気だ。
ソレル王国は湿潤な気候で、真夏を前にして気温が高いうえに、とにかく蒸し暑い。おまけに清々しいほどの晴天だった。まだ5月の終わり頃だが、すでに夏の気温である。
「……なんだこの蒸し暑さは…、サウナの中にいるようだ」
普段無口なガエルが、いつになく文句を呟き続けていた。愛嬌ある動物のクマと違い、引き締まった鋭い顔をしている。しかし、今はあまりの暑さに、顔が弛緩していた。
「やっぱ、クマさんだから暑いの?」
下から見上げるキュッリッキが、不思議そうに言う。
「俺の育った土地は比較的寒かったし、乾燥していたからな」
「そうなんだ~」
顔を覆う短い黒い毛が、いかにも暑そうに湿っていた。
2メートルを越す巨体は、同じように背が高いヴァルトと違い、重厚な筋肉に覆われていてどっしりとしている。しかしその筋肉も覆った黒い毛は、この湿度の中ではさぞ鬱陶しいだろう。
あまり口を開かないガエルが、いつになく文句モードに入っているので、キュッリッキにしてみたら、珍しく面白かった。ガエルが弱音を吐くところなんて、そう滅多に見られないだろう。
隣に立つキュッリッキが、目を輝かせて見上げてくるので、ガエルは不吉を感じて眉間を寄せる。
「暑くてしょうがないから、抱きついてくれるなよ」
「はーい」
腕に飛びつこうと狙っていたのに、牽制されてしまい、キュッリッキは肩をすくめた。アジトにいるときなら、飛びついてもぶら下げてくれていたのに、さすがにこの暑さの中では嫌なようだった。
3人から少し離れた建物の影のあるところで、地図を見ていたブルニタルが、では皆さん、と声をかけてきた。
「ここから半日ほどの距離にあるナルバ山に、例のエグザイル・システムのようなものがあるようです」
ブルニタルは真っ直ぐ西を指さした。
ソレル王国が所有するエグザイル・システムは2つ。一つは首都アルイール、もう一つは、なぜか首都から遠く離れた辺境の小さな村カバダだった。
エグザイル・システムは物質転送装置で、世界中の至るところに存在している、超古代文明の遺産の一つと言われていた。人々はエグザイル・システムのあるところを中心に、村や町を興した。
カバダ村もきっとそうだったのだろうが、エグザイル・システムのある建物から外に出ると、砂に飲み込まれた廃墟があった。
「数十年くらいは経っていそうな光景ですね、ここ」
メルヴィンは眩しい太陽の光を遮るように、手をかざして目を細めた。外へ出た途端、眩しい光とむわっとした空気が押し寄せてきて、自然と不快げに顔が歪む。
石造りの神殿のような中にエグザイル・システムはあるが、こもる空気は黴臭く、新鮮な空気を求めて外に出ると、この湿度と熱気だ。
ソレル王国は湿潤な気候で、真夏を前にして気温が高いうえに、とにかく蒸し暑い。おまけに清々しいほどの晴天だった。まだ5月の終わり頃だが、すでに夏の気温である。
「……なんだこの蒸し暑さは…、サウナの中にいるようだ」
普段無口なガエルが、いつになく文句を呟き続けていた。愛嬌ある動物のクマと違い、引き締まった鋭い顔をしている。しかし、今はあまりの暑さに、顔が弛緩していた。
「やっぱ、クマさんだから暑いの?」
下から見上げるキュッリッキが、不思議そうに言う。
「俺の育った土地は比較的寒かったし、乾燥していたからな」
「そうなんだ~」
顔を覆う短い黒い毛が、いかにも暑そうに湿っていた。
2メートルを越す巨体は、同じように背が高いヴァルトと違い、重厚な筋肉に覆われていてどっしりとしている。しかしその筋肉も覆った黒い毛は、この湿度の中ではさぞ鬱陶しいだろう。
あまり口を開かないガエルが、いつになく文句モードに入っているので、キュッリッキにしてみたら、珍しく面白かった。ガエルが弱音を吐くところなんて、そう滅多に見られないだろう。
隣に立つキュッリッキが、目を輝かせて見上げてくるので、ガエルは不吉を感じて眉間を寄せる。
「暑くてしょうがないから、抱きついてくれるなよ」
「はーい」
腕に飛びつこうと狙っていたのに、牽制されてしまい、キュッリッキは肩をすくめた。アジトにいるときなら、飛びついてもぶら下げてくれていたのに、さすがにこの暑さの中では嫌なようだった。
3人から少し離れた建物の影のあるところで、地図を見ていたブルニタルが、では皆さん、と声をかけてきた。
「ここから半日ほどの距離にあるナルバ山に、例のエグザイル・システムのようなものがあるようです」
ブルニタルは真っ直ぐ西を指さした。
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