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ナルバ山の遺跡編
episode91
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食後は、キュッリッキ、メルヴィン、ヴァルトの3人が皿洗いに参加して、大量の洗い物も素早くすんだ。
「ありがとう3人とも。助かったわ」
にこやかなキリ夫人に、3人はおやすみなさいと挨拶をして、台所を後にした。
「さーて、俺様はトレーニングだぜ!」
ヴァルトはフンッ!っとその場で力み、談話室のほうへ元気よく向かった。
「オレはカーティスさんの部屋へ」
「アタシお風呂。着替え取ってこなくっちゃ」
2人は階段のそばで別れ、キュッリッキは自室へ戻るため階段を上がった。
「よ、よお、キューリ」
2階の階段の踊り場にザカリーがいて、キュッリッキはビクリと固まった。
「ちょっと食後の運動に、散歩にでもいかねーか?」
ヘラリとした笑顔を貼り付けて、ザカリーは親指でクイッと促す。
キュッリッキは全身に不愉快感を滲み出し、目を背けると、何も言わずその場を通り過ぎた。
「お、おいっ」
再度呼び止めるが、キュッリッキは足早に自室に入ってしまった。
「お怒り、まだ解けねえか…」
はぁ…、とその場に情けない溜息を吐き出し、ガシガシッと頭を掻いた。
後ろ手にドアを閉め、キュッリッキはムッとした顔のまま、自分の足の先を睨みつけた。
ザカリーから声をかけられる度、翼のこと、アイオン族であることをバラされるんじゃないかと、不安で押しつぶされそうになる。
「ザカリー、記憶喪失になっちゃえばいいのに…」
物騒なことを呟いて、キュッリッキはベッドに俯せに倒れる。ベッドがギシッと音をたてた。
片翼であること、アイオン族であることは、ライオンの皆には絶対に知られたくない。ヴァルトは同族で、すでに知っていた。知られていたのは気分がイイものではなかったが、幸いヴァルトは本国の連中とは違って、キュッリッキに同情している。
ザカリーは信用できない。アイオン族ではなくヴィプネン族だから、片翼であることがどんなことか、絶対理解できない。だから、きっと平然と言いふらす事ができるに決まっている。
「今回のお仕事、ザカリーと一緒の班には、絶対なりたくないの」
ベッドの上に跳び乗ってきたフェンリルに、キュッリッキは沈んだ声で呟く。
心に大きな傷となっている片翼を見たザカリーが、近くにいるだけで、心が落ち着かなくなり不安に苛まれる。たとえ仕事であっても、一緒にいるのは嫌だった。
フェンリルがキュッリッキの頬を、慰めるようにペロリと舐めた。
「ありがとうフェンリル」
フェンリルはもう一度ペロリと舐めると、キュッリッキの顎の下に頭を入れて、丸くなって目を閉じた。
柔らかな毛先に刺激されてこそばゆかったが、灯りのついていない暗い部屋の中で、キュッリッキはじっと俯せのままでいた。
「ありがとう3人とも。助かったわ」
にこやかなキリ夫人に、3人はおやすみなさいと挨拶をして、台所を後にした。
「さーて、俺様はトレーニングだぜ!」
ヴァルトはフンッ!っとその場で力み、談話室のほうへ元気よく向かった。
「オレはカーティスさんの部屋へ」
「アタシお風呂。着替え取ってこなくっちゃ」
2人は階段のそばで別れ、キュッリッキは自室へ戻るため階段を上がった。
「よ、よお、キューリ」
2階の階段の踊り場にザカリーがいて、キュッリッキはビクリと固まった。
「ちょっと食後の運動に、散歩にでもいかねーか?」
ヘラリとした笑顔を貼り付けて、ザカリーは親指でクイッと促す。
キュッリッキは全身に不愉快感を滲み出し、目を背けると、何も言わずその場を通り過ぎた。
「お、おいっ」
再度呼び止めるが、キュッリッキは足早に自室に入ってしまった。
「お怒り、まだ解けねえか…」
はぁ…、とその場に情けない溜息を吐き出し、ガシガシッと頭を掻いた。
後ろ手にドアを閉め、キュッリッキはムッとした顔のまま、自分の足の先を睨みつけた。
ザカリーから声をかけられる度、翼のこと、アイオン族であることをバラされるんじゃないかと、不安で押しつぶされそうになる。
「ザカリー、記憶喪失になっちゃえばいいのに…」
物騒なことを呟いて、キュッリッキはベッドに俯せに倒れる。ベッドがギシッと音をたてた。
片翼であること、アイオン族であることは、ライオンの皆には絶対に知られたくない。ヴァルトは同族で、すでに知っていた。知られていたのは気分がイイものではなかったが、幸いヴァルトは本国の連中とは違って、キュッリッキに同情している。
ザカリーは信用できない。アイオン族ではなくヴィプネン族だから、片翼であることがどんなことか、絶対理解できない。だから、きっと平然と言いふらす事ができるに決まっている。
「今回のお仕事、ザカリーと一緒の班には、絶対なりたくないの」
ベッドの上に跳び乗ってきたフェンリルに、キュッリッキは沈んだ声で呟く。
心に大きな傷となっている片翼を見たザカリーが、近くにいるだけで、心が落ち着かなくなり不安に苛まれる。たとえ仕事であっても、一緒にいるのは嫌だった。
フェンリルがキュッリッキの頬を、慰めるようにペロリと舐めた。
「ありがとうフェンリル」
フェンリルはもう一度ペロリと舐めると、キュッリッキの顎の下に頭を入れて、丸くなって目を閉じた。
柔らかな毛先に刺激されてこそばゆかったが、灯りのついていない暗い部屋の中で、キュッリッキはじっと俯せのままでいた。
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