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ナルバ山の遺跡編
episode84
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車内は少しも揺れないし、音も静かだ。乗客たちの談笑する声くらいしか、気にならないほどに。
「ねえルーさん、これなんなの?」
ルーファスにしがみついたまま、キュッリッキは僅かに身体を震わせた。
「ははっ、そんなに怖がらなくていいよ」
「これはリニアと呼ばれる車輛です。地上を滑るゴンドラと、似たようなシステムで動いているそうですよ」
「リ…ニア?」
「ここハーメンリンナはとても広いですから、あちこち移動するためにはとても時間がかかります。なので、徒歩移動できる地下通路と、リニアの走る地下、そして馬車なども乗り入れ出来る地下通路があります」
そうカーティスに説明されても、キュッリッキにはチンプンカンプンだ。
「世界中のドコを探しても、タブン、こんな凄いモノはハーメンリンナにしかないと思うよ~」
「そうですねえ。電力といったものは、我々の生活圏にはあまり馴染みのないものですが、ハーメンリンナには当たり前のようにあるんですよ。地下通路を照らす明かりも、空気の喚起も、こうしたリニアも。車内、明るいでしょう。これも電力によるものなんです」
「……ほにゃ」
皇都イララクスの公共施設や、街の一部などには、電力は供給されている。しかし、一般家庭などには、全く無縁のものだ。
「超古代文明の遺産や何やらを、機械工学スキル〈才能〉を持った人たちが、解明して復元したり応用したりして、利用されてるんだよ」
「ふ、ふむり」
二人に説明されても、キュッリッキの脳内では処理しきれない。表情にありのまま現れているものだから、ルーファスはおかしそうに微笑んだ。
「まあ、ハーメンリンナだけは、別世界、そう覚えておけばいいさ」
(確かに、別世界かも……)
今度は何が起こるか判らず、キュッリッキはルーファスにしっかりとしがみついて、不安げな視線を辺りに投げかける。
(今日は、いっぱい色んなことがあったかも)
今まで城壁しか見上げたことがないハーメンリンナに初めて入り、巨大な湖のような地面に、水の上じゃない上を走るゴンドラに乗り、見たこともないような珍しい建物を多く目にした。
高い城壁の中は暗いと思っていたのに、とても明るくて、でも眩しくはなく、温度も普通で快適だった。
訪れたベルトルドの屋敷はとても大きくて、まるで宮殿のような印象を持った。
ベルトルドもアルカネットも、年齢の割に若々しい外見で、それに何だか面白い人たちだ。
そして、今はリニアと呼ばれる不思議な箱に乗っている。
(色んなことありすぎて、疲れちゃったな…)
気持ちのいい眠気が、じんわりと身体の奥底から浮き上がってきて、キュッリッキはウトウトとし始めると、ズルリと座り込みそうになった。
「おっと」
気づいたルーファスが、慌てて抱きとめた。
「眠っちゃったな、キューリちゃん」
「私がおんぶしましょうか」
「いや、オレが抱っこしていくよ」
「そうですか」
「キューリちゃん、すっごく軽いな」
お姫様抱っこをすると、ルーファスはびっくりしたようにキュッリッキを見た。
「今日は色々あって、疲れたんでしょうね」
落ちた紙袋を拾い、心配そうに見上げているフェンリルを抱き上げる。そして、キュッリッキの腕の中に置いた。赤い小鳥はカーティスの肩の上に飛び移った。
「夕飯前ですし、帰ったら起こしてあげましょう」
「だね」
「ねえルーさん、これなんなの?」
ルーファスにしがみついたまま、キュッリッキは僅かに身体を震わせた。
「ははっ、そんなに怖がらなくていいよ」
「これはリニアと呼ばれる車輛です。地上を滑るゴンドラと、似たようなシステムで動いているそうですよ」
「リ…ニア?」
「ここハーメンリンナはとても広いですから、あちこち移動するためにはとても時間がかかります。なので、徒歩移動できる地下通路と、リニアの走る地下、そして馬車なども乗り入れ出来る地下通路があります」
そうカーティスに説明されても、キュッリッキにはチンプンカンプンだ。
「世界中のドコを探しても、タブン、こんな凄いモノはハーメンリンナにしかないと思うよ~」
「そうですねえ。電力といったものは、我々の生活圏にはあまり馴染みのないものですが、ハーメンリンナには当たり前のようにあるんですよ。地下通路を照らす明かりも、空気の喚起も、こうしたリニアも。車内、明るいでしょう。これも電力によるものなんです」
「……ほにゃ」
皇都イララクスの公共施設や、街の一部などには、電力は供給されている。しかし、一般家庭などには、全く無縁のものだ。
「超古代文明の遺産や何やらを、機械工学スキル〈才能〉を持った人たちが、解明して復元したり応用したりして、利用されてるんだよ」
「ふ、ふむり」
二人に説明されても、キュッリッキの脳内では処理しきれない。表情にありのまま現れているものだから、ルーファスはおかしそうに微笑んだ。
「まあ、ハーメンリンナだけは、別世界、そう覚えておけばいいさ」
(確かに、別世界かも……)
今度は何が起こるか判らず、キュッリッキはルーファスにしっかりとしがみついて、不安げな視線を辺りに投げかける。
(今日は、いっぱい色んなことがあったかも)
今まで城壁しか見上げたことがないハーメンリンナに初めて入り、巨大な湖のような地面に、水の上じゃない上を走るゴンドラに乗り、見たこともないような珍しい建物を多く目にした。
高い城壁の中は暗いと思っていたのに、とても明るくて、でも眩しくはなく、温度も普通で快適だった。
訪れたベルトルドの屋敷はとても大きくて、まるで宮殿のような印象を持った。
ベルトルドもアルカネットも、年齢の割に若々しい外見で、それに何だか面白い人たちだ。
そして、今はリニアと呼ばれる不思議な箱に乗っている。
(色んなことありすぎて、疲れちゃったな…)
気持ちのいい眠気が、じんわりと身体の奥底から浮き上がってきて、キュッリッキはウトウトとし始めると、ズルリと座り込みそうになった。
「おっと」
気づいたルーファスが、慌てて抱きとめた。
「眠っちゃったな、キューリちゃん」
「私がおんぶしましょうか」
「いや、オレが抱っこしていくよ」
「そうですか」
「キューリちゃん、すっごく軽いな」
お姫様抱っこをすると、ルーファスはびっくりしたようにキュッリッキを見た。
「今日は色々あって、疲れたんでしょうね」
落ちた紙袋を拾い、心配そうに見上げているフェンリルを抱き上げる。そして、キュッリッキの腕の中に置いた。赤い小鳥はカーティスの肩の上に飛び移った。
「夕飯前ですし、帰ったら起こしてあげましょう」
「だね」
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