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ナルバ山の遺跡編
episode81
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ベルトルドに付き添われて、キュッリッキ、カーティス、ルーファスは玄関ロビーに移動した。
「そだ、ベルトルドさん、この子渡しておくね」
キュッリッキは両手で大事に持っていた、青い小鳥をベルトルドの肩にとまらせた。
「その子とこっちの子が繋がってるから、遠くにいてもこの子たちを通じて、いつでもお話できるからね」
「おお、それは便利だな。ありがとう、リッキー」
「どういたしまして」
嬉しそうに微笑むベルトルドに、キュッリッキはニッコリと微笑み返した。
今回の仕事で、お互いの連絡用に何か欲しいとベルトルドに頼まれ、応接室から玄関ロビーに向かう途中に、召喚したものだった。
青い小鳥は毛玉のように、ふっくらと丸く膨らんでいる。見た目は冬の季節の中のルリビタキのようだ。ベルトルドの横顔を見つめるつぶらな瞳は、朱を帯びた赤い色をしていた。ベルトルドの肩の上で小さく跳ねながら、収まりのいい位置を探している。
キュッリッキが手にしている小鳥は、ルリビタキのような容姿だが、羽根の色が桃色がかった赤をしていた。
赤い小鳥はキュッリッキの手の中から飛び立つと、フェンリルの頭の上に降り立って、脚をかがめて目を閉じた。どうやらそこが、収まりがいいらしい。フェンリルは迷惑そうに鼻を鳴らした。
「サイ《超能力》が使えるんだし、ベルトルド様には必要ないんじゃ?」
ルーファスが思ったままを口にすると、噛み付きそうな恐怖を孕む目で、ギロリと睨まれた。
「いいじゃないか!」
「ヒイッ」
ルーファスはカーティスの後ろに隠れた。
「子供じゃないんですから、”いいじゃないか”はないでしょう。もうちょっと言い方があるでしょうに全く」
大事なものを取ってくると言って下がっていたアルカネットが、小言を口にしながら玄関ロビーに姿を現した。
「お待たせしてすみませんリッキーさん、これをお持ち帰り下さい」
アルカネットは水色の、やや小さめの紙袋を手渡した。中には明るい色の綺麗な袋とリボンでラッピングされた、焼き菓子やチョコレートが入ってた。
「うわ、ありがとう」
嬉しそうにキュッリッキが目を輝かせると、アルカネットはニッコリと笑った。
「そして、これもお渡ししておきますね」
掌に収まるくらいの薄い小さな白い板に、キュッリッキとベルトルドの名前、見知らぬ名と印が押捺されている。縁は金で装飾されてた。
「これはなあに?」
「ハーメンリンナの通行証だ。好きな時に、いつでもハーメンリンナに来れるぞ」
「わ~い」
「この穴に紐などを通して、首にかけられるようにしておくと、なくさずすみますよ」
「はい」
両手で通行証を持って、キュッリッキは顔を輝かせた。足元に座るフェンリルも、興味深そうに首を伸ばしていた。
「今度いらしたときは、街をご案内して差し上げますからね」
「やった~! 楽しみ!」
無邪気に喜ぶキュッリッキを見て、アルカネットは更に笑みを深めた。
「俺が案内する!」
「あなたは仕事があるでしょう。山のように、ドッサリと」
「ぐぬぬ…」
アルカネットに負けじと身を乗り出すが、書類の山を思い出して、ベルトルドはげんなりと肩を落とした。
「そだ、ベルトルドさん、この子渡しておくね」
キュッリッキは両手で大事に持っていた、青い小鳥をベルトルドの肩にとまらせた。
「その子とこっちの子が繋がってるから、遠くにいてもこの子たちを通じて、いつでもお話できるからね」
「おお、それは便利だな。ありがとう、リッキー」
「どういたしまして」
嬉しそうに微笑むベルトルドに、キュッリッキはニッコリと微笑み返した。
今回の仕事で、お互いの連絡用に何か欲しいとベルトルドに頼まれ、応接室から玄関ロビーに向かう途中に、召喚したものだった。
青い小鳥は毛玉のように、ふっくらと丸く膨らんでいる。見た目は冬の季節の中のルリビタキのようだ。ベルトルドの横顔を見つめるつぶらな瞳は、朱を帯びた赤い色をしていた。ベルトルドの肩の上で小さく跳ねながら、収まりのいい位置を探している。
キュッリッキが手にしている小鳥は、ルリビタキのような容姿だが、羽根の色が桃色がかった赤をしていた。
赤い小鳥はキュッリッキの手の中から飛び立つと、フェンリルの頭の上に降り立って、脚をかがめて目を閉じた。どうやらそこが、収まりがいいらしい。フェンリルは迷惑そうに鼻を鳴らした。
「サイ《超能力》が使えるんだし、ベルトルド様には必要ないんじゃ?」
ルーファスが思ったままを口にすると、噛み付きそうな恐怖を孕む目で、ギロリと睨まれた。
「いいじゃないか!」
「ヒイッ」
ルーファスはカーティスの後ろに隠れた。
「子供じゃないんですから、”いいじゃないか”はないでしょう。もうちょっと言い方があるでしょうに全く」
大事なものを取ってくると言って下がっていたアルカネットが、小言を口にしながら玄関ロビーに姿を現した。
「お待たせしてすみませんリッキーさん、これをお持ち帰り下さい」
アルカネットは水色の、やや小さめの紙袋を手渡した。中には明るい色の綺麗な袋とリボンでラッピングされた、焼き菓子やチョコレートが入ってた。
「うわ、ありがとう」
嬉しそうにキュッリッキが目を輝かせると、アルカネットはニッコリと笑った。
「そして、これもお渡ししておきますね」
掌に収まるくらいの薄い小さな白い板に、キュッリッキとベルトルドの名前、見知らぬ名と印が押捺されている。縁は金で装飾されてた。
「これはなあに?」
「ハーメンリンナの通行証だ。好きな時に、いつでもハーメンリンナに来れるぞ」
「わ~い」
「この穴に紐などを通して、首にかけられるようにしておくと、なくさずすみますよ」
「はい」
両手で通行証を持って、キュッリッキは顔を輝かせた。足元に座るフェンリルも、興味深そうに首を伸ばしていた。
「今度いらしたときは、街をご案内して差し上げますからね」
「やった~! 楽しみ!」
無邪気に喜ぶキュッリッキを見て、アルカネットは更に笑みを深めた。
「俺が案内する!」
「あなたは仕事があるでしょう。山のように、ドッサリと」
「ぐぬぬ…」
アルカネットに負けじと身を乗り出すが、書類の山を思い出して、ベルトルドはげんなりと肩を落とした。
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