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ナルバ山の遺跡編
episode80
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「手癖も女癖も悪いんですからあなたという人は!」
「リッキーが誤解をするような言い方をするな!」
「いや、事実な気が…」
「がるるるるる」
「ヒッ」
ベルトルドに睨まれて、ルーファスは首を引っ込めた。
(えーっと…アタシ、今日はここにお泊まりなのかな?)
ベルトルドの膝の上にしっかりと座らされたままのキュッリッキは、ベルトルドとアルカネットの喧嘩を間近で見ながら、どうすればいいのか肩をすくめた。
(でもお仕事もらったし、アジト戻ってみんなで相談だよね)
キュッリッキは延々口喧嘩をするベルトルドとアルカネットを見つめ、ひっそりと溜め息をついた。
「ベルトルド卿、アルカネットさん」
「なんだ」
「なんですか」
二人に険悪な目を向けられ、カーティスは怯みかけたが、生唾を飲んでグッと踏ん張る。
「キューリさんを放して下さい。我々はアジトに戻って、今回のご依頼を仲間たちと相談しますから」
「おう、貴様らはとっとと帰っていいぞ。だが、リッキーは俺の屋敷にお泊まりだ」
カーティスには冷たい一瞥、キュッリッキには甘甘な笑顔を向けて、ベルトルドは更にキュッリッキを抱きしめる手に力を込めた。
ああ、鬱陶しい。という気持ちを込めて、カーティスは露骨すぎる溜め息を、深々と吐き出した。
「ダメです。キューリさんは、正式に我々の仲間です。打ち合わせにも一緒にいないと、後々みんなで困ります」
キュッリッキは、ハッとなった。
(我々の……仲間…)
カーティスの言葉が、なぜか胸にくすぐったい。そして、じんわりと沁みるように、嬉しさが足元からこみ上げてきた。
(なんだか、不思議なの)
嬉しく思ってしまう気持ちが不思議だけど、そんな気持ちになることも、とても嬉しかった。
気持ちが顔に現れているキュッリッキを見て、ベルトルドはチラリとアルカネットに目配せする。アルカネットも伺うようにキュッリッキの顔を見て、小さく頷いた。
「仕方がないな」
至極つまらなさそうに言うと、キュッリッキをそっと膝の上から解放する。そして、キュッリッキの顔に優しく手を添えた。
「今日はリッキーと一緒に、お風呂に入って食事して、ベッドでぐっすり眠れると思ったんだが」
「断固阻止します」
「フッ、お前如きに邪魔される俺ではないぞ」
「なんなら、ここでぶっ殺してでも、阻止するという方法もあるのですよ?」
再び白熱しかかるベルトルドとアルカネットに、キュッリッキは、
「喧嘩しちゃ、ダメなの!」
そう眉を寄せて、ずいっと身を乗り出した。これには二人共、んぐっと黙り込む。
「お仕事が終わったら、遊びに来るね」
神妙な顔をしていたキュッリッキは破顔すると、白い歯を見せてニカッと笑った。
「リッキーが誤解をするような言い方をするな!」
「いや、事実な気が…」
「がるるるるる」
「ヒッ」
ベルトルドに睨まれて、ルーファスは首を引っ込めた。
(えーっと…アタシ、今日はここにお泊まりなのかな?)
ベルトルドの膝の上にしっかりと座らされたままのキュッリッキは、ベルトルドとアルカネットの喧嘩を間近で見ながら、どうすればいいのか肩をすくめた。
(でもお仕事もらったし、アジト戻ってみんなで相談だよね)
キュッリッキは延々口喧嘩をするベルトルドとアルカネットを見つめ、ひっそりと溜め息をついた。
「ベルトルド卿、アルカネットさん」
「なんだ」
「なんですか」
二人に険悪な目を向けられ、カーティスは怯みかけたが、生唾を飲んでグッと踏ん張る。
「キューリさんを放して下さい。我々はアジトに戻って、今回のご依頼を仲間たちと相談しますから」
「おう、貴様らはとっとと帰っていいぞ。だが、リッキーは俺の屋敷にお泊まりだ」
カーティスには冷たい一瞥、キュッリッキには甘甘な笑顔を向けて、ベルトルドは更にキュッリッキを抱きしめる手に力を込めた。
ああ、鬱陶しい。という気持ちを込めて、カーティスは露骨すぎる溜め息を、深々と吐き出した。
「ダメです。キューリさんは、正式に我々の仲間です。打ち合わせにも一緒にいないと、後々みんなで困ります」
キュッリッキは、ハッとなった。
(我々の……仲間…)
カーティスの言葉が、なぜか胸にくすぐったい。そして、じんわりと沁みるように、嬉しさが足元からこみ上げてきた。
(なんだか、不思議なの)
嬉しく思ってしまう気持ちが不思議だけど、そんな気持ちになることも、とても嬉しかった。
気持ちが顔に現れているキュッリッキを見て、ベルトルドはチラリとアルカネットに目配せする。アルカネットも伺うようにキュッリッキの顔を見て、小さく頷いた。
「仕方がないな」
至極つまらなさそうに言うと、キュッリッキをそっと膝の上から解放する。そして、キュッリッキの顔に優しく手を添えた。
「今日はリッキーと一緒に、お風呂に入って食事して、ベッドでぐっすり眠れると思ったんだが」
「断固阻止します」
「フッ、お前如きに邪魔される俺ではないぞ」
「なんなら、ここでぶっ殺してでも、阻止するという方法もあるのですよ?」
再び白熱しかかるベルトルドとアルカネットに、キュッリッキは、
「喧嘩しちゃ、ダメなの!」
そう眉を寄せて、ずいっと身を乗り出した。これには二人共、んぐっと黙り込む。
「お仕事が終わったら、遊びに来るね」
神妙な顔をしていたキュッリッキは破顔すると、白い歯を見せてニカッと笑った。
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