片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ナルバ山の遺跡編

episode78

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 キュッリッキはまじまじとベルトルドの顔を凝視したあと、足元に顔を向けた。

「見えないように言ってあったんだけど…、バレちゃってたみたいだよ、フェンリル」

 すると、キュッリッキの足元に、突然白い仔犬が現れた。

「俺のスキル〈才能〉はサイ《超能力》だから、隠れていても視えてしまうのさ」

「そうなんだあ~」

「オレ視えなかった…」

 ルーファスはガックリと肩を落とす。

「ベルトルド様とはスキル〈才能〉のランクが違うのですから、気にすることはありませんよ、ルーファス」

 あんまり慰めになっていないことをアルカネットに言われ、ルーファスはますます凹んだ。

「この子の名前は、フェンリルっていうの」

 キュッリッキはじっとしているフェンリルを抱き上げて、膝に乗せた。フェンリルは動かず、じっと目だけをベルトルドに向けていた。アイスブルーの瞳には感情の色が伺えない。

「うんと、この子はアタシの相棒だから置いてくことはできないけど、連絡用に何か欲しいなら、別の子を召喚するよ?」

 その言葉に、ベルトルドは目を見開く。

「一度にいくつも召喚出来るものなのかい?」

「うん。普通にいくつでも出来るけど……」

 逆に怪訝そうに言われて、ベルトルドは驚きの表情を浮かべる。そしてアルカネットと顔を見合わせた。

「それは凄いな。皇国にも保護している召喚士はいっぱいいるが、そのどれもが、マトモな召喚をしたことがない」

「ええ、私も見たことがありません」

 それはキュッリッキには、驚くべきことだった。そもそも、マトモな召喚という表現からして謎である。

「宮中でふんぞり返っている召喚士どもとは、はるかにレベルが違うようだね」

 嬉しそうにニッコリされて、キュッリッキは複雑そうに苦笑した。

「あ」

「どうした?」

 キュッリッキはフェンリルを両手で抱き上げると、ベルトルドの眼前につきつけた。

「この子、今は仔犬モードになってもらってるんだけど、ホントはすご~っくおっきな狼なんだからね!」

 フェンリルは鼻を鳴らすと、退屈そうに小さな口をあけて欠伸をする。

「ほほう…」

 ベルトルドは神妙に目を寄せて、小さなフェンリルを見つめる。そのフェンリルは、小馬鹿にしたようにベルトルドをチラリとだけ見た。

「元の大きさに戻ってもらうとハーメンリンナが潰れちゃうから、取り敢えずベルトルドさんくらいの大きさになってもらうね」

 キュッリッキはフェンリルを床の上に置く。するとフェンリルの身体が銀色の光に包まれ、あっという間にベルトルドの背丈と同じ高さの狼に変じた。これにはベルトルド達もひたすら驚くばかりだった。

「フェンリルは神様なの。アタシのことが心配で、ずっと一緒に居てくれてるの。小さい時から、ずっと一緒なんだよ」

 鼻を寄せてきたフェンリルにしがみつくようにして、キュッリッキはフェンリルに頬ずりした。
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