76 / 882
ナルバ山の遺跡編
episode73
しおりを挟む
まるで万歳でも叫びそうな勢いで、嬉しそうにルーファスが両手をあげる。
「ものすご~くゆっくりで、時間かかったね」
キュッリッキがクスクスと笑顔を向けると、ルーファスはウンウンと大仰に頷いた。
カーティスとルーファスがゴンドラから降りていると、門の前にいた若い男が、彼らに向けて優雅に一礼した。それを見て、カーティスとルーファスは慌てて姿勢を正す。
「お待ちしておりました」
「こんにちは、アルカネットさん」
「ご無沙汰してますっ」
カーティスとルーファスは、硬くお辞儀をして挨拶をした。
アルカネットと呼ばれた男は柔らかな笑顔で応えると、ゴンドラに近づき、ゴンドラの中できょとんとしているキュッリッキに手を差し伸べた。
アルカネットの顔と大きな掌を交互に見て、キュッリッキはその手を取る。アルカネットに助けられながら、一度ゴンドラのへりにあがって跳び降りた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
(うわあ…、また背の高い人だあ)
キュッリッキは首を反らして、アルカネットを見上げる。すると、愛おしむように優しい笑顔が返され、キュッリッキは顔をちょっと赤くして俯いた。
端整で優しく穏やかな風貌に、スラリとした長身をしている。前に会ったベルトルドは、険のある目をしていたが、アルカネットは目元にも柔らかな優しさをたたえていた。それに、全身から漂う雰囲気も、包み込むような温かな優しさを感じた。
優しさの塊のような人だなあ、と、キュッリッキは心の中で大きく頷いた。
「こちらのお嬢様が?」
「はい、召喚スキル〈才能〉を持っている、新入りのキュッリッキです」
カーティスから簡単に紹介されると、キュッリッキを見つめるその目は、まるで高価なものでも見るかように、感極まってアルカネットは頷いた。
その目を見た瞬間、キュッリッキは急にしょんぼりとした気分に包まれた。
アルカネットに限った事ではなかったが、キュッリッキが召喚スキル〈才能〉を持っていることが判ると、皆こんな目をする。値踏みしながら珍獣か天然記念物を見るような、そんな不躾で不愉快な目をするのだ。
召喚スキル〈才能〉がどれほど珍しいかなど、キュッリッキは知らない。だから、そんな風に見られるのは、嬉しいことではなかった。不愉快だと言ったほうがいいくらいに。
キュッリッキの気持ちなど知る由もない3人は、何やら雑談をしていた。それをちょっと恨めしそうに見上げると、優しいアルカネットの視線とぶつかって、キュッリッキは慌てて下を向いた。
「申し遅れました。私はベルトルド邸で執事をしている、アルカネットと申します」
アルカネットはその場に膝をつくと、キュッリッキの手を取って、恭しく頭を下げた。
「え、あ、はいっ、キュッリッキです!」
思わず声が裏返ってしまい、キュッリッキの顔が真っ赤に染まった。その向こうで、カーティスとルーファスが笑いを噛み殺している。
「愛らしいお嬢様ですね。そんなに緊張しなくても、大丈夫ですよ」
ニッコリと笑顔を向けて、アルカネットは立ち上がった。
「では皆さんこちらへ。ベルトルド様は会議が長引いていて、少々遅れます」
「判りました」
「ものすご~くゆっくりで、時間かかったね」
キュッリッキがクスクスと笑顔を向けると、ルーファスはウンウンと大仰に頷いた。
カーティスとルーファスがゴンドラから降りていると、門の前にいた若い男が、彼らに向けて優雅に一礼した。それを見て、カーティスとルーファスは慌てて姿勢を正す。
「お待ちしておりました」
「こんにちは、アルカネットさん」
「ご無沙汰してますっ」
カーティスとルーファスは、硬くお辞儀をして挨拶をした。
アルカネットと呼ばれた男は柔らかな笑顔で応えると、ゴンドラに近づき、ゴンドラの中できょとんとしているキュッリッキに手を差し伸べた。
アルカネットの顔と大きな掌を交互に見て、キュッリッキはその手を取る。アルカネットに助けられながら、一度ゴンドラのへりにあがって跳び降りた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
(うわあ…、また背の高い人だあ)
キュッリッキは首を反らして、アルカネットを見上げる。すると、愛おしむように優しい笑顔が返され、キュッリッキは顔をちょっと赤くして俯いた。
端整で優しく穏やかな風貌に、スラリとした長身をしている。前に会ったベルトルドは、険のある目をしていたが、アルカネットは目元にも柔らかな優しさをたたえていた。それに、全身から漂う雰囲気も、包み込むような温かな優しさを感じた。
優しさの塊のような人だなあ、と、キュッリッキは心の中で大きく頷いた。
「こちらのお嬢様が?」
「はい、召喚スキル〈才能〉を持っている、新入りのキュッリッキです」
カーティスから簡単に紹介されると、キュッリッキを見つめるその目は、まるで高価なものでも見るかように、感極まってアルカネットは頷いた。
その目を見た瞬間、キュッリッキは急にしょんぼりとした気分に包まれた。
アルカネットに限った事ではなかったが、キュッリッキが召喚スキル〈才能〉を持っていることが判ると、皆こんな目をする。値踏みしながら珍獣か天然記念物を見るような、そんな不躾で不愉快な目をするのだ。
召喚スキル〈才能〉がどれほど珍しいかなど、キュッリッキは知らない。だから、そんな風に見られるのは、嬉しいことではなかった。不愉快だと言ったほうがいいくらいに。
キュッリッキの気持ちなど知る由もない3人は、何やら雑談をしていた。それをちょっと恨めしそうに見上げると、優しいアルカネットの視線とぶつかって、キュッリッキは慌てて下を向いた。
「申し遅れました。私はベルトルド邸で執事をしている、アルカネットと申します」
アルカネットはその場に膝をつくと、キュッリッキの手を取って、恭しく頭を下げた。
「え、あ、はいっ、キュッリッキです!」
思わず声が裏返ってしまい、キュッリッキの顔が真っ赤に染まった。その向こうで、カーティスとルーファスが笑いを噛み殺している。
「愛らしいお嬢様ですね。そんなに緊張しなくても、大丈夫ですよ」
ニッコリと笑顔を向けて、アルカネットは立ち上がった。
「では皆さんこちらへ。ベルトルド様は会議が長引いていて、少々遅れます」
「判りました」
1
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…

Age43の異世界生活…おじさんなのでほのぼの暮します
夏田スイカ
ファンタジー
異世界に転生した一方で、何故かおじさんのままだった主人公・沢村英司が、薬師となって様々な人助けをする物語です。
この説明をご覧になった読者の方は、是非一読お願いします。
※更新スパンは週1~2話程度を予定しております。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる