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ナルバ山の遺跡編
episode69
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ハワドウレ皇国の皇都イララクスの中心街ハーメンリンナ。もとはこのハーメンリンナが皇都と呼ばれていた。
ハーメンリンナは大きな街を5つも合わせたほどの規模をほこり、全て城壁で覆い囲まれている。この場所が、ハワドウレ皇国発祥の地であり、超古代文明の遺産を使って作られた街と言われている。
城壁は高さ12mもあり、隣接する外街は、そのぶん時間帯によって影に包まれてしまう。外壁は花崗岩でびっしりと覆われ、唯一出入り口に作られた門の横には、検問をする衛兵たちの詰所が建てられていた。
カーティスら3人が詰所の方へ行くと、中から数名の衛兵が出てきた。
まるで、全力疾走でもしてきたかのような様子のキュッリッキを見て、先頭にいた若い衛兵は目を丸くした。
「副宰相閣下から、我々が来る旨のお話が着ていると思いますが」
そう言って、カーティスは身分証を提示する。
「ああ、ライオン傭兵団の方々ですね」
身分証を確認した若い衛兵は、笑顔で頷いた。
「はい」
カーティスに身分証を返し、若い衛兵は会釈する。
「では、身体を改めさせていただきます」
ハーメンリンナには、皇王をはじめとし、国の要人、貴族、上流階級の人々が住み、重要機関や軍本部なども建っていた。それゆえ中に入るには、専用の身分証が必要であり、入念なボディチェックを受けるのが絶対の決まりなのだ。
応対した若い衛兵がカーティスを、別の衛兵がルーファスを担当する。そして。
華奢な美少女が息も絶え絶えの様子は、さぞ哀れに見えるのだろう。二人の身体を改めている衛兵たちは、時折痛ましそうにキュッリッキを見ていた。
哀れみの視線を一身に浴びるキュッリッキは、心の中で憤慨しながら、蒸気のように愚痴を噴出していた。
(もっともっと、ゆーっくり歩いてくれてもいいのにっ! アタシの体力が落ちたわけじゃないもん! あんだけ早く歩いていたら、誰だってこうなるんだからっ!!)
30分も小走りしていたらこのくらいなる! と叫びたい思いで、必死にその場に踏ん張った。なにせ、二人とは歩幅が違うのだ。
カーティスのボディチェックを済ませた若い衛兵は、今にも倒れそうなキュッリッキを見て破顔した。ハーメンリンナの中に入る者は、たとえ女性であろうと、入念なボディチェックが必要である。しかしちょうど、女性の衛兵が交替で場をはずしていた。
キュッリッキは真っ白なノースリーブのワンピースをまとっているだけで、カバン類も持っていないし、外見では武器の携帯は見られなかった。それにカーティスとルーファスの連れなら、大丈夫だろう。万が一何かあったとしても、彼らを招くよう指示をした副宰相に、責任は行くのだから。
独自の判断で、キュッリッキのボディチェックはせず、若い衛兵は3人のために、徒歩者専用の門を開けた。
「結構です。どうぞ中へお入りください。ようこそハーメンリンナへ」
若い衛兵は3人の通行を許可した。
ハーメンリンナは大きな街を5つも合わせたほどの規模をほこり、全て城壁で覆い囲まれている。この場所が、ハワドウレ皇国発祥の地であり、超古代文明の遺産を使って作られた街と言われている。
城壁は高さ12mもあり、隣接する外街は、そのぶん時間帯によって影に包まれてしまう。外壁は花崗岩でびっしりと覆われ、唯一出入り口に作られた門の横には、検問をする衛兵たちの詰所が建てられていた。
カーティスら3人が詰所の方へ行くと、中から数名の衛兵が出てきた。
まるで、全力疾走でもしてきたかのような様子のキュッリッキを見て、先頭にいた若い衛兵は目を丸くした。
「副宰相閣下から、我々が来る旨のお話が着ていると思いますが」
そう言って、カーティスは身分証を提示する。
「ああ、ライオン傭兵団の方々ですね」
身分証を確認した若い衛兵は、笑顔で頷いた。
「はい」
カーティスに身分証を返し、若い衛兵は会釈する。
「では、身体を改めさせていただきます」
ハーメンリンナには、皇王をはじめとし、国の要人、貴族、上流階級の人々が住み、重要機関や軍本部なども建っていた。それゆえ中に入るには、専用の身分証が必要であり、入念なボディチェックを受けるのが絶対の決まりなのだ。
応対した若い衛兵がカーティスを、別の衛兵がルーファスを担当する。そして。
華奢な美少女が息も絶え絶えの様子は、さぞ哀れに見えるのだろう。二人の身体を改めている衛兵たちは、時折痛ましそうにキュッリッキを見ていた。
哀れみの視線を一身に浴びるキュッリッキは、心の中で憤慨しながら、蒸気のように愚痴を噴出していた。
(もっともっと、ゆーっくり歩いてくれてもいいのにっ! アタシの体力が落ちたわけじゃないもん! あんだけ早く歩いていたら、誰だってこうなるんだからっ!!)
30分も小走りしていたらこのくらいなる! と叫びたい思いで、必死にその場に踏ん張った。なにせ、二人とは歩幅が違うのだ。
カーティスのボディチェックを済ませた若い衛兵は、今にも倒れそうなキュッリッキを見て破顔した。ハーメンリンナの中に入る者は、たとえ女性であろうと、入念なボディチェックが必要である。しかしちょうど、女性の衛兵が交替で場をはずしていた。
キュッリッキは真っ白なノースリーブのワンピースをまとっているだけで、カバン類も持っていないし、外見では武器の携帯は見られなかった。それにカーティスとルーファスの連れなら、大丈夫だろう。万が一何かあったとしても、彼らを招くよう指示をした副宰相に、責任は行くのだから。
独自の判断で、キュッリッキのボディチェックはせず、若い衛兵は3人のために、徒歩者専用の門を開けた。
「結構です。どうぞ中へお入りください。ようこそハーメンリンナへ」
若い衛兵は3人の通行を許可した。
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